こんにちは。どんな兵器を配備しても、長くたつと性能を改良しないといけません。ですがその費用が配備に要した費用の50%から100%の水準に迫るとしたら、どうすべきでしょうか。きょうは、韓国空軍の主力戦闘機であるF15Kと、重要な「目」の役割を果たしてきたE737「ピースアイ」早期警戒管制機(AEW&C)の性能改良問題について申し上げたいと思います。

■韓国空軍のF15K戦闘機、1機当たり1260億ウォンで61機配備

 「スラム・イーグル」(Slam Eagle)という別名を持つF15Kは2005年から配備が始まり、既に16年が経過して性能改良が必要な状態です。F15Kは2度にわたって計61機が配備されましたが、そのうち2機が墜落し、現在は59機を運用中です。61機配備するのに計7兆4000億ウォン(現在のレートで約7150億円。以下同じ)ほどの予算が投じられました。1機当たり1260億ウォン(約122億円)ほどになるわけです。

 防衛事業庁(防事庁)など韓国軍当局は昨年、F15K戦闘機の1次性能改良を公式化しました。1次性能改良はF15K戦闘機に抗ジャミング・アンテナ、彼我識別装置(IFF)、統合戦術データリンク(Link-16)などを搭載し、敵の電波かく乱やセキュリティーの機能を強化するという内容です。2025年までの事業費として計3000億ウォン(約290億円)が配分されました。

 2023年からはF15KにAESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダーなどを搭載し、4.5世代戦闘機へとアップグレードする2次性能改良が進められます。2030年代前半まで、およそ10年かけて進められるF15K性能改良は、中・ロ・日など周辺大国がAESAレーダーを搭載した4.5世代戦闘機および第5世代ステルス機の数を増やしつつある傾向に対応するものです。この事業は今年末までに、米国政府およびボーイング社(メーカー)との交渉を通して費用などを確定しなければなりません。

■F15K改良費用は推算4兆6000億ウォン、1機当たり688億ウォンということに

 ところで最近、この事業の費用が韓国軍内外で論争になっています。当初は2兆ウォン(約1930億円)台を予想していたのに、3兆-5兆ウォン(約2900億-4830億円)台に達するという説が出て「あまりにカネがかかりすぎるのではないか」という声が上がっているのです。ところで、事情に詳しい各消息筋によると、現在までに推算されている改良費用は4兆6000億ウォン(約4450億円)だといいます。メーカーなどとの非公式交渉を通して出てきたものといわれています。4兆6000億ウォンとなると、1機当たり688億ウォン(約67億円)ということになりますね。配備費用(1260億ウォン)の半分の水準になるわけです。

 これに関連して、最近の日本の事例も注目されています。およそ200機ほどの旧型F15Jを保有している日本もF15の性能改良を進めていますが、費用の激増問題で事実上全面再検討に入った-と外信が伝えています。日本経済新聞は4月8日、防衛省が2020年度予算に含めていたF15改修関連費390億円を執行しなかったのに続いて、国会を通過した21年度予算には当初から関連事業費を計上しなかった、と報じました。

 設計など初期費用が当初の予想より3倍近い水準へと膨れ上がり、米国側と結んでいた契約をひとまずキャンセルしたからだそうです。これに関連して岸信夫防衛相は、関連部局に再交渉を指示したといいます。

■4機のE737-AEW&C機の性能改良、配備費用と同等の1兆5000億ウォンと予想

 予想より高いF15K改良費用について、防事庁は「費用がわれわれの目標水準から大きく外れる場合、事業そのものを全面再検討または延期することもあり得る」という立場といわれています。需要側となる韓国空軍は極めて困惑しつつも、改良費用を減らすためできる限り努力するという立場だといいます。

 一部からは、最近米国で実戦配備が始まった最新型F15EXを韓国に販売するため、ボーイング社がF15Kの性能改良費用を削減する代わりに一定数のF15EX販売を提案した、という説も出ています。これについて韓国空軍とボーイング社はいずれも「全くそんな話はなかった。事実無根」という立場を表明しています。韓国軍上層部の消息筋は「現在韓国空軍にF15EX配備計画はない状態」と伝えました。

 2011年以降4機が配備された米ボーイング社のE737-AEW&Cの性能改良(2023-30年)も、費用の問題のせいで「時限爆弾」のような存在と見なされています。韓国空軍は1兆5000億ウォン(約1450億円)ほどで4機を配備しましたが、その改良費用も1兆5000億ウォンほどになるといいます。改良費用が配備費用と同じになるわけです。

■ボ社「改良費用、水増しして伝えられている…最終交渉価格は大幅に低くなるだろう」

 改良事業は、E737にIFFおよびデータリンク(Link-16)性能改良などを施すことが中心的な内容だといいます。防事庁は、F15K性能改良事業と同じく、このようなE737-AEW&C性能改良費用は絶対に受け入れられないという立場だと伝えられています。

 韓国空軍は現在、AEW&Cをさらに2機追加配備する早期警戒機2次事業も進めていますが、既にE737-AEW&Cが4機配備されているので、E737追加配備の可能性は高いと予想されてきました。韓国軍上層部の別の消息筋は「E737-AEW&C性能改良の費用がどれだけ削減されるかによって、早期警戒機2次事業の先行きが変わってくることもあり得るだろう」と語りました。

 なお、F15KおよびE737のメーカーであるボーイング社側は、非公式な形で「現在伝えられている改良費用は水増しして誤って伝えられている面が多く、最終交渉価格は、今伝えられているものよりはるかに低いだろう」という立場を示しているといわれています。

■防事庁・韓国空軍、改良費用削減に総力を挙げるべき

 通常の場合、兵器の性能改良事業は競争相手がいないので「メーカーの言い値」「メーカー側が『スーパー甲チル(優越的地位を利用した無理強い)』をやりやすい事業」という声が少なくありません。これまで韓国軍に多くの兵器を売ってきた米ボーイング社は、韓国政府や軍、国民の期待と信頼に背かないようにすべきでしょう。防事庁や空軍など韓国政府当局も、力量を総動員して交渉力を高め、いわゆる「ぼったくり」に遭うことのないようにすべきです。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

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