1890年代、日本の米穀商が仁川に「米豆取引所」というコメの先物取引所を開設した。10%の保証金だけで大口取引が可能で「大もうけ」を狙う投機勢力が仁川に殺到した。1日の取引量は100万石(1石は180リットル)を超え、日本の先物市場を上回った。しかし、朝鮮人投資家は大半が投資に失敗した。日本の先物価格を基準にしたが、日本の相場を電報で先に知った日本人が市場を独占したからだ。「田畑は東洋拓殖会社に奪われ、朝鮮人のカネは『米豆』のせいですっからかんになった」と言われた。

 100年後の1996年に開設された株式先物市場が投機の系譜を受け継いだ。「狎鴎亭のドジョウ」「木浦のセバルナクチ(足が細いタコ)」という別名を持つ投資の鬼才が財を成したことが話題になった。2011年には1日の先物売買代金が45兆ウォン(約4兆3500億円)に増え、世界トップとなった。投資に失敗する事例が相次ぎ、社会問題化したことから、政府は取引保証金の基準を引き上げるなど市場参入障壁を高める措置を取った。

 損失リスクを恐れない韓国の個人投資家の高収益追求傾向は変わらない。4月に入り、韓国株式市場では韓国総合株価指数(KOSPI)の下落分の2倍の収益が上がるように設計された「KOSPI200指数先物インバース2X」が個人による買い越しトップとなっている。今年1-3月に個人投資家は米国株で代表的な投機銘柄とされるゲームストップ、イーハンホールディングスの株式をそれぞれ52億ウォン、14億ウォン相当取引した。

 最近株式市場の上昇が落ち着くと、個人投資家の主な活動舞台は仮想通貨市場に移った。韓国最大の仮想通貨取引所の1日当たり取引規模(122億ドル)は米国最大の取引所の3倍、日本の24倍に達する。取引される仮想通貨の数(178種)も米国の3倍、日本の35倍だ。4大仮想通貨取引所に上場された571種(重複含む)の仮想通貨のうち124種は韓国人がつくった「キムチコイン」だ。仮想通貨投資家は511万人に達しており、20-30代が45%を占める。

 狂気的な仮想通貨投資は投資形態にもしみ込んだ「パルリパルリ(早く早く)」文化と頼る先がない20-30代の悲しい自画像が入り混じった社会的病理だ。「もっとバカがいる」と期待し、爆弾を回すような投資は失敗しがちだ。ウォーレン・バフェット氏は投資の原則を「第一に資金を失うな、第二に第一の原則を忘れるな」と助言した。彼の師であるベンジャミン・グレアム氏は「投資とは徹底した分析で元本を保ちながら満足できる収益を上げるものであり、その条件を満たさないあらゆる行為は投機」だと規定した。仮想通貨投資の狂気は誰の見ても悪性の投機だ。世界の金融史に「K投機」という新語が登場することが怖い。

金洪秀(キム・ホンス)論説委員

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