2019年5月にイスラエルを訪問したとき、実戦の状況を経験した。パレスチナ人武装勢力が二日間にわたり、イスラエル南部に向けてロケット弾およそ700発を発射した。イスラエルは迎撃ミサイル「アイアンドーム(Iron Dome)」で、人口密集地に落ちる確率が高かったロケット弾173発を迎撃し、空中で爆破した。

 アイアンドームは、パレスチナ人武装組織「ハマス」のロケット攻撃などからイスラエル国民を保護するため、2000年代に入って米イ共同で開発された。米国は当初、迎撃距離があまりに短いことから「必ず失敗するだろう」と共同開発に否定的で、イスラエル内部ですら「ロケット弾を迎撃するより攻撃原点を除去する打撃の方が効果的」と否定的な意見が多かった。しかし2004年、ミサイル防衛システム擁護論者のダニエル・ゴールド准将がイスラエル軍研究開発部門の責任者に就任した後、政界などへの説得に乗り出したことで雰囲気が変わり、開発に着手した。

 5月11日、パレスチナのロケットをアイアンドームで迎撃する様子をイスラエル国防省がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で公開し、話題になった。およそ20秒の短い動画の中でアイアンドームは、約20発のパレスチナのロケットを、花火の爆竹を炸裂させるように次々と迎撃した。イスラエル国防省は「90%の命中率を記録した」と発表した。アイアンドームは多数の実戦経験を通して同時迎撃能力が大幅に向上し、最大射程も70キロから100キロ以上にまで伸びた。当初はロケット弾・砲弾だけを防ぐことができたが、今では弾道ミサイル迎撃も可能なまでに進化した。

 2010年11月に延坪島を放射砲(多連装ロケット)で砲撃した北朝鮮は、パレスチナ人より大きくて強力なロケットを、はるかに多く保有している。北朝鮮は有事の際、最大340門に達する170ミリ自走砲および240ミリ放射砲で、1時間に最大1万6000発の砲弾・ロケット弾を韓国首都圏に降らせることができる-と韓国軍ではみている。韓国軍も延坪島砲撃挑発の直後、アイアンドームの導入を検討したことがあるが、韓半島の状況には適合しないとして「韓国型アイアンドーム」開発を決定した。

 北朝鮮は昨年以降、600ミリの超大型放射砲を相次いで試射するなど放射砲戦力を強化し続けている。だが韓国型アイアンドームの開発は、むしろ遅れ続けていて、早くても2029年ごろにようやく配備できるという。そのときまでは「まさか」と言いながら生きていかねばならない。かくも怠慢でいるとは、韓国はイスラエルよりどれほど安全な国なのか。韓国軍首脳部は北朝鮮の脅威に対し、いかなる切迫感と危機意識を持っているのか。「まさか」は必ず代償を要求する。それは時間の問題にすぎない。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

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