「ハングルとコンピューター」のブランドで知られる韓国のソフトウエア企業ハンコムグループが参画したとして注目を浴び、一時1000倍以上に高騰した後で暴落した仮想通貨「アロワナトークン」を発行したシンガポール企業アロワナテクの資本金がわずか1万シンガポールドル(約82万円)であることが分かった。

 ハンコムグループの持ち株会社ハンコムウィズは先月、アロワナトークンの上場直前に「ハンコムシンガポールを通じ、アロワナテクに投資した」と発表し、投資家の関心を集めた。しかし、エンタープライズ・シンガポール(シンガポール企業庁)によると、ハンコムの持ち株は500シンガポールドル相当で、残りはアロワナテクのユン・ソンホ代表が保有している。

 アロワナトークンは取引初日の4月20日、上場価格(50ウォン=4.8円)から1000倍以上上昇し、一時は5万ウォンを超え、時価総額は15兆ウォンに膨らんだ。しかし、アロワナトークンを使用する金取引プラットフォームを構築する計画について具体案が示されなかったことから価格が暴落し、20日午後には3700ウォンで取引されている。それでも上場価格の74倍の水準だ。

 発行体のアロワナテクはペーパーカンパニーだという。匿名で取材に応じた複数のハンコム関係者とシンガポール企業庁の資料によれば、アロワナテクのシンガポールでの所在地には現在登録されている会社だけで431社もある。典型的なペーパーカンパニーだ。過去にその住所を使用していた会社まで含めると2000社に達する。仮想通貨発行にペーパーカンパニーを使うケースは多いが、そうした事実は一般の投資家にはよく知られていない。

 価格が暴落し、アロワナトークンのウェブサイトにある公式グループチャットには「ハンコムなので信じる」「ハンコムの金取引所とはいつリンクされるのか」などといった書き込みが続いているが、それに対する明確な回答はない。

 ハンコム関係者A氏は「一般投資家はハンコムがトークンの価値をある程度補填してくれると信じて投資したのだろうが、アロワナテクは書類上シンガポールに住所を置き、う回ICO(仮想通貨上場)を行った典型的なペーパーカンパニーにすぎない。上場企業であるハンコムが事実上不公正取引を行ったとみて、金融当局に問題提起した」と話した。

 仮想通貨を発行し、仮想通貨取引所に上場させるICOは発行体が不当な利益を得ることが可能で、韓国では2017年から禁止されている。しかし、アロワナトークンのようにシンガポールなど外国経由でICOを実施するケースには何の制裁を受けることもなく、韓国国内の仮想通貨取引所に上場され、投資家の資金をかき集めている。

 国務調整室と金融委員会、金融委員会などは2019年初め、「ICO事態調査報告書」を取りまとめ、海外を経由するICOは不透明な情報公開、プロジェクト進行過程の不透明さ、ICOによる調達資金の使途不明朗、不透明な開発陣などの問題が多く、危険だと診断した。しかし、政府はそれから2年以上手をこまぬいている。そうして上場される仮想通貨の大半はウォン建てで取引されるいわゆる「キムチコイン」だ。韓国の個人投資家がう回ICOで集中的な被害を受けているとみられる。金融当局の調査によると、う回ICOで発行された仮想通貨は発行時点に比べ、平均で68%下落した。

 アロワナトークンは当局の報告書が指摘するように、調達資金の使途や開発者が不透明だ。アロワナテクの株主はハンコムシンガポールのユン・ソンホ代表ら2人だけだ。ハンコム関係者は「ユン氏はハンコムグループ関係者だ。結局ハンコムグループが株式の大半を保有していることになる」と話した。仮想通貨のプロジェクト内容を記載したホワイトペーパーによると、アロワナトークンの30%はアロワナテクが保有している。現在の相場で計算しても時価5000億ウォンを超える。ハンコムは1万シンガポールドル(840万ウォン)を投資し、6万倍近い含み益を得た格好だ。

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