韓国のコンビニエンスストア大手、GS25とセブンイレブンが最近、キムチが使われたインスタント食品に中国語表記である「泡菜(パオツァイ、漬け込んだ野菜)」を併記したことがたたかれた。キムチや韓服など韓国文化に対する中国の同化工作が進む状況で、泡菜と表記したことが市民の憤りを買った。コンビニ2社は問題の表記について、中国人観光客のためだったと説明したが、論争は収まらず、結局2社は問題の商品の販売を中止した。

 泡菜は中国・四川地域でおかずとして好まれる塩漬け野菜だ。トウガラシ粉などの薬味を入れるキムチに比べれば、西洋のピクルスや韓国のチャンジ(大根・キュウリ・白菜などの塩漬け)と似ている。中国各地に泡菜が普及し、中国人は野菜を漬け込んだおかずの総称として「泡菜」を使うようになった。キムチのその対象だ。大半の中国人はキムチを「韓国泡菜(ハングオパオツァイ・韓国式の塩漬け野菜)」と呼ぶ。

 韓国の農林畜産食品部は2013年、韓国食の世界化を推進する一環で、キムチの中国式表記として、「辛奇(シンチー)」という造語をつくり、普及させようとしたが、定着しなかった。言語の社会性や歴史性を見過ごしたからだ。中国人に対する広報活動も不足していた。

 中国政府は食品安全国家標準でキムチを「泡菜」と表記するよう定めた。中国でキムチ関連の商品を生産、流通する企業は全て「泡菜」という表記を用いなければならない。ハングルの「キムチ」や「KIMCHI」という文字は、正式な商品名には使用できず、包装のデザインに入れることができる程度だ。

 世界2位の経済大国に成長した中国では最近、国粋主義勢力を中心に歴史・文化工程事業が活発に進められている。韓国固有の食文化であるキムチもその対象だ。中国共産党の機関紙、人民日報の姉妹紙、環球時報は昨年11月、泡菜が国際標準化機構(ISO)の認証を受けたことを巡り、「キムチ宗主国の恥辱」と題する記事で、韓国がキムチ宗主国の地位を中国に奪われたという趣旨で報じた。ISOが泡菜について、「今回の食品規格はキムチには適用されない」と摘示した部分を除いて報じたフェイクニュースだった。

 このように、中国の文化工程が加速しているにもかかわらず、韓国政府は手をこまぬいている。国際社会では他国の行為に沈黙することを事実上受け入れたものと見なす。このまま黙っていれば、韓国の文化が「中国化」しかねない。政府が積極的に対応すべき理由はそこにある。

 韓中両国は2022年の国交正常化30周年を控え、今年を「韓中文化交流の年」とした。文化交流は相手の文化に対する尊重が基本だ。中国政府が「食品安全国家標準」に「キムチ」という表記を追加すれば、韓国に対する中国側の誠意を示す事例になるはずだ。韓国政府もこの問題を見過ごすことなく、対中外交で懸案として扱う必要がある。

 泡菜という表現のせいで特定の商品の販売が中断された今回の騒動は、韓国社会に広がった反中感情を間接的に示している。こうした状況が長期化すれば、両国民の心理的距離は遠ざかるばかりだ。外交関係にも暗雲が立ち込めるのは明らかだ。韓中両国は2008年、二国間関係を「戦略的協力パートナーシップ関係」に格上げした。相手国の食文化すら認めない関係では、そんな表現は空虚なだけだ。

ユン・ヒフン記者

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