裁判
「検察・メディア癒着」はなかった…ソウル中央地裁、元チャンネルA記者に無罪判決
記者が検察幹部との人脈に言及して受刑者に圧力を加え、与党関係者の不正を探ろうとしたという「チャンネルA事件」に関連、「強要未遂」で起訴された総合編成チャンネル「チャンネルA」のイ・ドンジェ元記者に対して16日、ソウル中央地裁が無罪を言い渡した。
この事件は昨年3月、「検察の高位幹部(韓東勲〈ハン・ドンフン〉検事長)とつながりがあるイ・ドンジェ元記者が『盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団』の柳時敏(ユ・シミン)理事長らの不正疑惑を争点化しようとして、バイオテクノロジー企業『シルラジェン(SILLAJEN)』の大株主だったイ・チョル前VIK代表を脅迫した」というMBCの「検察・メディア癒着」報道に端を発するものだ。
昨年4月に市民団体「民主言論市民連合(民言連)」の告発で捜査に着手したソウル中央地検は、同年8月にイ・ドンジェ元記者を強要未遂で起訴したが、それから11カ月後の16日に無罪判決が出たものだ。ソウル中央地裁刑事第1単独(裁判長:ホン・チャンウ部長判事)は同日、「検察の証拠だけでは、強要罪の構成要件が合理的な疑いなく証明されたとは見なせず、容疑を認められない」と判断した。
法曹関係者の間では、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長(日本の検事総長に相当)の側近で、『チョ国(チョ・グク元法務部長官)捜査』を指揮していた韓東勲検事長を狙って、与党と親与党メディアが追い立てた『検察・メディア癒着』という枠組みが今回の判決で崩れ、かえって『権力・メディア癒着』の方に焦点が移ることになった」と評されている。
■自国で報道されたニュースを信頼できますか? 韓国は最下位、日本は?
ホン裁判長は「言論の自由は韓国社会の最後の砦(とりで)だけに、取材行為を刑事処罰することに対しては慎重にならなければならない」と言いながらも、「スクープを出そうという欲に駆られ、収監中の被害者に圧力を加え、家族に対する処罰の可能性に言及したことは明白な取材倫理違反だ」とした。
この日の無罪判決をめぐって、法曹関係者の間では「無理な起訴による、予想通りの結論だ」という声が聞かれた。検察はイ・ドンジェ元記者に「強要未遂」を適用したが、「強要罪」は暴行・脅迫により義務でないことを人にさせる場合に成立する。また、要求を拒否した場合に不利益を被る具体的な「害悪の告知」がなければならず、これにより、恐怖を感じる必要がある。ある法曹関係者は「何の司法的権限もないイ・ドンジェ元記者が『検察があなたを厳しく捜査すると言っていた』と述べたことに対して、イ・チョル前代表が恐怖を感じたのは、そもそも非常識なことだった」と話す。
地裁もこの点を指摘した。地裁は「イ・ドンジェ元記者は(イ・チョル前代表に向かって)『シルラジェンに対する強度の高い捜査』などに言及したが、これだけで(強要罪成立に必要な)『害悪の告知』と見なすのは難しい」と判断した。地裁はまた、「害悪を告知する主体(イ・ドンジェ元記者)と実現する主体(検察)が異なる場合、イ・ドンジェ元記者が検察の行為を事実上支配したり、検察に影響を与えられたりする地位にあるものと(イ・チョル前代表に)信じさせる行動をしなければならないが、そのような行動は見当たらない」と述べた。
地裁は、イ・ドンジェ元記者がイ・チョル前代表に送った手紙5通についても同様の判断を下した。イ・チョル前代表は、イ・ドンジェ元記者が送ってきた手紙の中で、がん闘病中の自身の妻について言及した4通目の手紙に最も恐怖を感じた、と主張してきた。地裁はその手紙についても、イ・ドンジェ元記者が「検察とつながるのは難しい」などの表現を使っていることから、「強要」と見なすことはできないと判断した。
イ・ドンジェ元記者は昨年3月、イ・チョル前代表の「代理人」を自任する「情報提供者X」ことチ・ヒョンジン氏に連絡し、「検察幹部の声」だとして音声ファイルを聞かせた。検察はこれを「検察・メディア癒着」と「強要」の傍証だと主張したが、これについても地裁は「チ・ヒョンジン氏の要求に応じたものであり、具体的にイ・チョル前代表に対する害悪を告知したものと見なすことができない」と判断した。イ・ドンジェ元記者は昨年7月の逮捕前に本紙とのインタビューで、「チ・ヒョンジン氏は執拗(しつよう)に検察幹部が保証してほしいと要求した。該当の音声ファイルは検察幹部ではなく、知人と録音して作ったものだ」と語っていた。