昨年の憲法改正で事実上の終身政権の土台を固めたロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、今年9月の総選挙を前に、大々的な底引き網スタイルの野党弾圧に乗り出している。特に、自分の最大の政敵である野党系指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏など主な反体制活動家に対する粛清を締めくくると同時に、政府を批判するメディアに「スパイ」のレッテルを貼って次々と退場させ、論争が拡大している。英国BBC放送は最近、「プーチンは終身政権のため、たった一つの変数も残さないように全力を尽くしている」と評した。

 ロシアの通信・メディア監督機関である「ロスコムナドゾル」は7月26日(現地時間)、プーチン大統領に批判的な活動を行ってきた「反腐敗財団」など、ナワリヌイ氏の組織と関連があるウェブサイトへのアクセスを遮断したと発表した。ナワリヌイ陣営によると、この日アクセスが遮断されたウェブサイトだけでも49に上る。ロスコムナドゾルは「検察の要請に基づき、この日からナワリヌイ関連のコンテンツに対するアクセスを止めた」と説明した。

 これに先立ち今年6月、モスクワの裁判所は、ナワリヌイ氏の反腐敗財団とその後身である市民権利保護財団に対し政治不安・扇動などの容疑をかけて過激派団体に指定。団体の活動を中止させ、次の選挙に関係者が立候補することを禁止した。英国日刊紙「ガーディアン」は「終身政権に向けた改憲後に行われる最初の主要選挙を前に、プーチンが政敵を根絶やしにしている」と評した。

 この日の処置で、プーチン政権のおよそ20年にわたる主な政敵粛清作業は最終段階に差し掛かったという評価がなされている。プーチン大統領は、野党「自由ロシア党」を率いていたセルゲイ・ユシェンコフを2003年に暗殺したのをはじめ、石油財閥のボリス・ベレゾフスキー(2013)、元副首相で野党系指導者のボリス・ネムツォフ(2015)などを次々と暗殺し、政敵を取り除いた。唯一残ったナワリヌイ氏も昨年8月、「ノビチョク」という化学物質で毒殺しようとしたが未遂に終わったため、監獄に送って関連組織の手足を縛るというやり方で政治的な死刑宣告を下した。

 政敵が取り除かれた後には反政府メディアと在野の市民活動家だけが残されることになったが、プーチン大統領は最近、これらメディア・市民活動家にも粛清の刃を向けている。ロシア法務省は7月23日、自国の反政府系オンライン調査報道機関「ジ・インサイダー」を「外国の代理人(foreign agent)」リストに追加した。2013年にロシアの反体制ジャーナリストらが作った「ジ・インサイダー」は、昨年8月のナワリヌイ氏毒殺未遂事件当時、ロシア連邦保安局(FSB)の暗殺要員から犯行の証言を直接確保して暴露し、プーチン政権がこの事件の黒幕だということを世界に知らせたメディアだ。

 「ロシアの政治に影響を及ぼそうとする海外のブラックマネーを受け取っている」という名目だが、具体的な容疑は示されなかった。それでも、同リストに載ると全てのコンテンツに「外国の代理人」表示が付き、四半期ごとに金銭取引を一つ一つ当局に明かさなければならない。昨年から今年までの間に、このリストにはロシアのジャーナリスト18人と「メデューサ」「Vタイムズ」など四つの反政府メディアの名前が載った。「Vタイムズ」は、指定後わずか3週間で廃刊した。

 この措置について「モスクワ・タイムズ」紙は「広告収入の減少や各種の制限措置によりロシア国内での活動は事実上禁止されたも同然」と伝えた。「ガーディアン」紙は「独立メディアに対する死刑宣告」と報じた。小規模な反政府団体・ジャーナリストなどに対する弾圧も強化し、亡命の道を選ぶ人が続々と増えている-と「モスクワ・タイムズ」紙は伝えた。

 昨年7月、プーチン大統領は自分の任期を84歳になる2036年まで延長できる改憲に成功し、終身政権への制度的な道を用意した。2000年に大統領ポストに就いたプーチンは、3期連続の大統領就任を制限する憲法に阻まれて08年から12年までは側近のドミトリー・メドベージェフを「操り人形」の大統領に仕立て、自分は実権型の首相を務めた。12年に再び大統領に選出されたプーチンが36年まで統治を続ければ、旧ソ連を31年間統治したヨシフ・スターリンを上回り、ロシアに君臨した20世紀最長の統治者になる。

 独走体制を既に確固たるものにしたにもかかわらず、野党弾圧の手綱を緩めないのは、わずかな権力の亀裂からも反政府の動きが広がりかねないという懸念があるからだ。政権与党「統一ロシア」の支持率は、ロシアの世論調査機関「レバダ・センター」の調査によると、コロナ失政の責任論のため今年3月の時点で27%を記録。8年ぶりに最低の記録となった。与党に対しコロナの責任を問う声が強まる中、今年初めにはナワリヌイ氏の釈放を要求するデモが湧き起こり、積極的な大規模反政府運動も発生した。

 プーチン大統領は、今年下半期に行われる各地の小規模な地方選挙で勝利するためにも、あらゆる組織力を動員している。ロシアの調査報道紙「ノーバヤ・ガゼータ」などによると、各地域の有力な野党候補の出馬を妨げるため、各種の妨害工作が繰り広げられている。「ユーロ・ニュース」は「終身政権を夢見るプーチンの熱心さの中で、地方・メディア・在野反政府活動家が全方位的弾圧を受けている」と評した。

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