▲ビンセント・ブルックス元在韓米軍司令官/写真=NEWSIS

 ビンセント・ブルックス元在韓米軍司令官は29日(現地時間)、韓国の大統領選挙に関連して「既に人気迎合的な候補らが、反米主義と反同盟政治を続けようとする兆しが明らかになっている」と語った。

 ブルックス元司令官はこの日、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」にイム・ホヨン元韓米連合司令部副司令官と共同名義で掲載した「北朝鮮との一括妥結」という寄稿記事で、「トランプ前大統領、文在寅(ムン・ジェイン)大統領時代に韓米同盟が悪化したが、これは人気迎合的民族主義を満足させようとする『国防の政治化』が主たる原因だった」として、このように指摘した。文在寅政権の継承を打ち出す一部与党候補が反米主義・反同盟の流れを引き続き堅持するとみられる、というのだ。

 ブルックス元司令官は2016年4月から文在寅政権初期の2018年11月まで在韓米軍を率いた。米バイデン政権の駐韓米国大使候補の1人として取り沙汰されたこともある。ブルックス元司令官は「韓米同盟は韓国の大統領選挙期間とその後も、その連続性を必ず維持しなければならない」としつつも、「統合航空ミサイル防衛システムや指揮統制システムの現代化といった『ホット・イシュー』がポピュリズム的民族主義政治に弱いということもあり得る」と懸念を示した。

 現役時代に訓練の重要性を強調してきたブルックス元司令官は、「韓国は在韓米軍が主な訓練施設にアプローチできないようにしている政治的障害物を除去すべき」とし、「機動や弾薬使用が可能な少数の訓練施設は準備態勢の維持において核心的」「それになのに訓練場へのアプローチが制限されてきた」と批判した。

 これは、慶尚北道浦項の水城射撃場において、近隣住民の反対で今年2月に在韓米軍のアパッチ・ヘリの射撃訓練が中断された状況などを念頭に置いているものとみられる。韓国陸軍のアパッチ・ヘリの訓練も、2018年の南北首脳会談以降、半分に減った。主な韓米合同演習の実機動訓練も首脳会談後に中断した。

 ブルックス元司令官は「このせいで米軍は、アパッチ攻撃ヘリ部隊など韓国国内の特定兵力を、訓練のため日本やアラスカに再配置することを検討している」と語った。直接の言及はしなかったが、慶尚北道星州のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)基地問題も念頭に置いたものという解釈も出た。

 ブルックス元司令官は、韓国国内における在韓米軍の訓練が難しくなった理由を「韓国国内の政治的圧迫」と分析した。ブルックス元司令官は「文在寅政権はトランプ前政権の期間に(訓練中断と関連がある)ポピュリズム的政策を採択したが、最近はあまり政治的でないやり方でこうした事案にアプローチしている」とし、「こうした基調は韓国が大統領選挙に差し掛かっても維持されるべき」と語った。

 ブルックス元司令官は、韓米同盟の障害物として中国を挙げた。2016年のTHAAD配備決定後、中国が韓国へ経済報復を加えたことに言及し、「米国と韓国が近づくほど、中国は韓国をいじめるだろう」「韓米の指導者は中国の経済的強圧に対する具体的な対応案を用意すべき」と語った。

 韓米は伝統的な軍事同盟を越え、中国・ロシアに対抗して経済・政治分野にも及ぶ共同防衛体制を確立すべきと指摘するブルックス元司令官は、中国など外部勢力が韓国の大統領選挙に介入する可能性も示唆した。ブルックス元司令官は「韓国は選挙運動の局面に入りつつあり、巧妙かつ陰険な影響力の標的になる可能性が高い」とも語った。

 またブルックス元司令官は、北朝鮮との「終戦宣言」は非核化に向けた信頼を構築できるとの見方を示しつつも、「終戦協定を平和協定と混同してはならない」と指摘した。一部からは、ブルックス元司令官が終戦宣言に前向きな立場を見せたという解釈が出た。しかし「韓米は平和協定を越え、北朝鮮を同盟主導の秩序へ完全に統合するだろう」という寄稿記事の内容は、現在の北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制が軍事的に完全に無力された後でなければ不可能、という分析が支配的だ。

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