南北経済文化協力財団(経文協)が韓国国内のテレビ局などから北朝鮮の朝鮮中央テレビの映像などの著作権料を徴収し、北朝鮮へ送金していることと関連して、裁判所が最近、統一部(省に相当)に「送金ルートと北朝鮮側の受領人を明らかにせよ」と求めたものの拒否されていたことが2日までに分かった。

 経文協は2005年から08年にかけて、北朝鮮側へ著作権料7億9000万ウォン(現在のレートで約7520万円。以下同じ)を送金した。これについてソウル東部地裁は今年4月、7億9000万ウォンがどのようなルートを通って、北朝鮮の誰に届けられたのかについて統一部に事実照会を要請した。しかし統一部は先月、「情報公開法上の『公開された場合には国家の重大な利益を著しく害する恐れがあると認められる情報』であって非公開対象」だとする回答を送ってきたという。

 裁判所が統一部に経文協の対北送金ルートを問い合わせた理由は、6・25国軍捕虜が提起した訴訟があるからだ。昨年7月にソウル中央地裁は、6・25戦争中に北朝鮮の捕虜となり、強制労役に従事していた国軍捕虜2人が起こした損害賠償請求訴訟で「北朝鮮政府と金正恩(キム・ジョンウン)は総額4200万ウォン(約400万円)を支払え」と判決した。その後、国軍捕虜側は、経文協が現在保管している北朝鮮の著作権料23億ウォン(約2億1900万円)の中から4200万ウォンの賠償を求める別の訴訟をソウル東部地裁に起こした。

 経文協は2005年から、韓国の放送局が使用する朝鮮中央テレビの映像や、同じく韓国の出版社が出す北朝鮮の作家の作品などについて著作権を代理徴収し、08年まで北朝鮮へ送金していた。09年以降は北朝鮮制裁により送金が途絶えた状態で、経文協は毎年積み上がる北朝鮮著作権料およそ23億ウォンを裁判所に供託する形で保管してきた。

 ソウル東部地裁における裁判の争点は、北朝鮮の著作権料の所有権が誰にあるのかという点だ。経文協側は「著作権料は北朝鮮政府の財産ではなく、北朝鮮の放送局・小説家など著作権者の財産なので支払うことはできない」として支払いを拒否してきたからだ。この点をはっきりさせるため、国軍捕虜側は今年4月、統一部に事実照会をしてほしいと要請し、裁判部もこれを受け入れたが、統一部は「国益」を掲げて拒絶したのだ。また統一部は、別の非公開理由として「法人(経文協)の経営上の秘密に関する情報」だという点も挙げたという。

 経文協の代表は、イム・ジョンソク大統領外交・安保特別補佐官が務めている。韓国法曹界からは「統一部が経文協と北朝鮮の顔色をうかがい、裁判所の事実照会要請も拒否した」という指摘が出ている。

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