▲北朝鮮の指令を受けて米国製ステルス戦闘機の配備反対活動を行った疑いが持たれている忠清北道清州地方の活動家4人が2日午後、拘束前被疑者尋問(令状実質審査)のため法廷に向かっている様子。/写真=聯合ニュース

 清州地域の労働団体出身の4人を国家保安法違反容疑で捜査している国家情報院(韓国の情報機関、国情院)および韓国検察・警察が、家宅捜索で押収したUSBメモリーから北朝鮮工作員とやりとりしたものとみられる「指令文」や「報告文」などおよそ60件の関連証拠を確保したことが5日に伝えられた。

 問題のUSBメモリーからは「(活動費の)2万ドル(現在のレートで約220万円)を無事に受領した」と北朝鮮側に報告する内容の文書ファイル、「忠誠を誓う」という趣旨の血書写真ファイルも発見されたという。国情院は、一味のうち3人が2017年から19年にかけて中国の大連や瀋陽、カンボジアのプノンペンで北朝鮮工作員と接触する映像・写真資料を、今月2日の拘束令状実質審査の際に提示したといわれている。当局は、容疑者らが北朝鮮の指令に従って「自主統一忠北同志会」という地下組織を立ち上げようとしたと判断したと伝えられている。

 本紙の取材を総合すると、当局が確保したUSBメモリー内には「米軍F35A戦闘機導入に反対する市民運動を展開せよ」という趣旨の指令文と共に、その後に一味が繰り広げた「F35導入反対」一人デモ、街頭署名運動などの活動内容が整理された報告文もあったという。またそれとは別に、金日成(キム・イルソン)回顧録『世紀とともに』など、さまざまな利敵表現物も押収したと伝えられている。

 容疑者らのうち3人は、17年から19年にかけて中国やカンボジアで北朝鮮工作員と少なくとも3回接触した疑いが持たれている。A容疑者(拘束)は17年に中国の大連で北朝鮮工作員「チョ○○」と会い、「南側で同調勢力を組織せよ」という指令を伝達されたと分かった。A容疑者が韓国に戻った後、一味は北朝鮮の指令に従って「自主統一忠北同志会」を組織しようとした-と国情院は判断した。国情院は当時、大連でA容疑者がチョ○○とタクシーに乗る写真を撮影したという。

 またB容疑者(拘束)は18年にカンボジアのプノンペンに向かい、北朝鮮工作員「チョ○○」および「リ○○」と2日にわたって中華料理店や野外カフェなどで会ったことが分かったという。国情院は、B容疑者と北朝鮮工作員が一緒にバイクタクシーに乗って移動する映像も確保したと伝えられている。その後、19年にB容疑者とC容疑者(拘束)は、中国の瀋陽にある大手スーパーのロッカーに北朝鮮側が置いておいた活動費2万ドルを受け取ったことが分かった。

 一味は今月2日の令状実質審査で容疑を全面否認した。A容疑者は17年の「大連接触」について「当時中国に留学中だった子どもの教育問題を巡り、現地で会った人の一人だろう」とし、B容疑者は18年の「プノンペン接触」について「旅行に行っただけ」と答えたと伝えられている。また、19年に北朝鮮から受け取ったことが分かった2万ドルについても、B容疑者およびC容疑者は「そんなカネを受け取ったことはない」と主張したという。しかし当局が確保した一味のUSBメモリーからは「2万ドルを無事受領した」という趣旨の内容を収めた報告文が発見されたと伝えられている。

 容疑者らの弁護人は「国情院の捜査には納得できない点が多い」とし、「北朝鮮から受け取ったという活動費2万ドルをどのように韓国国内へ持ち込んだのか、USBメモリーから発見されたという『指令文』と『報告文』がどのようなルートでやりとりされたのかについての疎明はない」と主張した。また「第三国の公開された場所で北朝鮮工作員と会ったというのは非常識的で、それらの人物が果たして北朝鮮工作員なのかどうか問いただしてみるべき問題」とも語った。

 ところが裁判所は、容疑者らに対する逮捕令状を2度にわたって棄却し、その過程で刑法上の間諜(かんちょう)罪と類似した国家保安法4条「目的遂行」の容疑が除かれ、和合・通信、潜入脱出などの容疑のみを適用したと伝えられている。韓国法曹界の一部からは、逆に「『トカゲの尻尾切り』捜査ではないか」という指摘が出ている。

 韓国の保守系最大野党「国民の力」は5日、この4人が先の大統領選挙で文在寅陣営の特補団として活動し、昨年には与党「共に民主党」の大物議員を訪ねて接触したことに関連して「大統領は立場を明らかにすべき」とし「司法当局はステルス機配備反対スパイ事件について徹底した真相究明に乗り出してほしい」と要求した。

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