彼が球を投げて打つたびに野球の歴史に新たな1ページが加わる。日本の「野球天才」で「二刀流」の大谷翔平(27)=ロサンゼルス・エンゼルス=が19日、米ミシガン州デトロイトのコメリカ・パークで、デトロイト・タイガースとの米大リーグ(MLB)アウエーゲームに先発登板し、8イニング1失点で今季8勝(1敗)を挙げた。90球(ストライク69球)を投げて6安打(1本塁打)を浴びたが、無四球で8三振を奪った。この日の最高球速は時速159キロメートル。それと同時に打者としても打席に入り、8回に時速177キロメートルで飛ぶアーチを描いた。今季第40号ホームランだ。

■「唯一無二のアスリート」

 アメリカン・リーグのルールに基づいて指名打者制度が適用されたこの日の試合で、大谷は打順で1番に入り、両チームの投手で唯一、打席に立った。大谷は第1打席から第3打席までは三振、フライ、ゴロで退いたが、8回の第4打席で相手投手ホセ・シスネロの時速約143キロメートルのスライダーを引っ張り、ライトフェンスを越える飛距離131メートルの本塁打にした。アメリカン・リーグに指名打者制ができた1973年以降、1試合で8イニング以上を投げてホームランまで打ったのは大谷が4人目だ。

 大谷は完投まであと1イニングというところでマウンドを抑え投手のライセル・イグレシアスに譲った。大谷は試合を終えて、「完投していない以上、満足というものは決してない」としながらも、「6回から少しずつ疲れを感じていた」と語った。大谷について「最上級(superlative)」と評したエンゼルスのジョー・マドン監督は「大谷は唯一無二のアスリートであり、見守っているだけでも特別だ」と語った。

 AP通信によると、この日の観客たちはホームランを打ってベースを回る大谷に「MVP(最優秀選手)」と叫んだ。大リーグ公式サイト「MLBドットコム」は「ホーム球団であるタイガースのファンでさえ、相手チームの大谷を応援せずにはいられなかった。相手チームの選手たちも大谷に対して畏敬(いけい)の念を抱いた」と伝えた。タイガースのA・J・ヒンチ監督は「大谷は信じられないほど才能が特別で、残念ながら我々はいけにえであり、目撃者になった」と語った。

 大谷は今季40号を放ち、本塁打部門2位のウラジミール・ゲレーロ・ジュニア(35本塁打)=トロント・ブルージェイズ=との差を5本に広げた。大谷は松井秀喜(2004年・31本塁打)を超え、アジア出身の大リーグ打者の最多本塁打記録も更新している。大谷は投手としても6月からマウンドに上がり、11試合に登板して負けなしの7勝を挙げている。8月に登板した3試合ではすべて勝利投手になった。6月30日のニューヨーク・ヤンキース戦では3分の2イニングで7失点し崩れたが、それ以降は6試合連続でクオリティー・スタート(6イニング以上3自責点以下)を続けている。

■19世紀の記録まで召喚

 大谷は今年、「100年に一度」出るかどうかの記録をたった一人の力で塗り替えている。大谷は既に投手の1シーズン最多本塁打記録を塗り替えた。伝説的な大リーガー、ベーブ・ルースが1933年に作った記録(34本)を2位に押し下げた。大谷が今後さらに2勝すれば、大リーグ史上2人目の「2けた勝利・2けた本塁打」を達成する。ルースが1918年に1シーズン13勝・11本塁打を記録して以来、103年ぶりのことだ。

 日本のメディアによると、大谷は19日に1シーズンの投球イニングが100イニングになり、投球イニング・奪三振・安打がすべて3けたを記録する「トリプル100」も達成したという。大谷は現在、100イニング・120奪三振・110安打を記録中だが、この珍しい記録は1890年以来、131年ぶりだ。1883年から1890年までで6人が達成したが、20世紀以降は一人も記録していない。

 また、公認球の反発力が上がって打者に有利になったライブボール時代が1920年に始まり、1800年代の野球はボールカウントやファウルなどの基本的なルールも今とは異なっていたことを考えると、大谷の記録はいっそう輝きを増す。大谷は2016年から日本プロ野球(NPB)日本ハムファイターズに所属していた時も140イニング・174奪三振・104安打でトリプル100を達成している。

 本塁打王とMVP席巻を狙う大谷は、大リーグのシーズン最高投手が受賞するサイ・ヤング賞の候補としても名前が取りざたされている。投手としての成績だけを見るとアメリカン・リーグ10位圏外だが、100年ぶりの「投手兼打者」という象徴性があるからだ。マドン監督は「サイ・ヤング賞とMVPの投票者は大谷に注目しなければならないだろう」と語った。

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