▲東京オリンピックで取材と撮影に応じたラグビー韓国代表コーチのチャールズ・ロウ氏。/東京=ヤン・ジヘ記者

 ラグビー7人制男子で韓国は東京オリンピックに出場した12カ国中最下位に終わった。それでも選手たちには帰国後、テレビ出演やインタビューなどの要請が相次いだ。1位だけが拍手と称賛を受けてきた韓国のスポーツ文化が変わりつつあることを示したのが今回のラグビー代表チームだ。98年にわたる無関心に耐え、オリンピックの舞台に初めて立ったことだけで喝采を浴びたのだ。

 単にオリンピックに出場しただけではない。「ラグビーのヒディンク」と呼ばれる韓国代表のチャールズ・ロウ・コーチ兼競技力向上委員長の手腕がそこにあった。彼が立てた戦術で韓国は2019年11月のアジア最終予選で香港を破り、初めてオリンピック出場権を獲得。それが今夏の東京につながった。選手たちは「ロウ・コーチがいなければ何もできない」としてロウ氏を絶対的に信頼した。輝かしい最下位たちのエピソードが気になって先日ラグビーのヒディンクを取材した。ロウ氏は「今回のオリンピックでうまくやれたことは10%、できなかったことは90%」と苦言を呈した。「愛しているから批判する」とも語った。ロウ氏は今から2024年のパリ・オリンピックを目指すが、その一方で「全てのシステムを修正しなければならない。韓国のアマチュアスポーツには大ざっぱなやり方があまりにも多い」と指摘した。

■「日本には実力ではなくメンタルで負けた」

 ラグビー韓国代表は東京オリンピックで3日間試合を行い、ニュージーランドなど5カ国と対戦した。ロウ氏が最も残念に思っているのは最後の日本戦だ。この試合で韓国は19-31で敗れた。ロウ氏は「ゴールライン直前で最後のパスができず、トライにつながらないとかボールを落とすとかいったミスが多かった。それはメンタルの問題だ。強いプレッシャーを受けているときは次のプレーをどうするか一瞬で判断しなければならないが、選手たちは固まってしまった。韓国選手たちのメンタルは強いとは言えない。体はあんなに大きいのに、国際大会に出れば萎縮してしまう。その理由を『キムチがない』とか『水が合わない』などとあれこれ不平を言い、負けたことの言い訳ばかり探している。体力も不十分だ。代表チームの登録枠は13人だが、フルタイムで合格点が与えられるのは4人しかいない。無意味な汗を流す練習方法に慣れた選手があまりにも多い」と評した。2002年のワールドカップ以前の韓国サッカー代表に対するような話ばかりだった。

 ロウ氏は「選手選抜の段階から問題が多かった」と指摘する。「韓国選手たちは平均年齢が30歳だが、他国は普通24歳だ。韓国では選手層が薄いというよりも、選抜がしっかりと行われていない」と評した上で「今回私は選手選抜に関与できなかった」と明らかにした。明確な基準もなく何人かの選手が延世大学と高麗大学に進学し、彼らが3チームしかない実業団の主軸になる構造についてもロウ氏は批判した。「昨年夏に珍島で開催された高校生の大会を見たが、原石のような選手たちがあちこちにいて驚いた。それを見て韓国ラグビーの可能性を信じるようになった。しかし実力や可能性よりも『縁故』が優先される今の慣例が今後も続くようでは、彼らが将来活躍する場はない」とも指摘した。

■「韓国のラグビーにこれ以上の奇跡はない」

 ロウ氏はラグビー強国の南アフリカ共和国出身だ。母国でプロ・ラグビー・チームのコーチを務め、2009年に日本にスカウトされた。データ分析によって戦略を練るロウ氏は日本でキヤノンと流通経済大学で監督などを務め「一気にトップレベルのチームに育て上げた」として高く評価された。韓国ラグビーとの出会いは2013年、日本にいる韓国の指導者たちと交流を始めたことだ。それをきっかけに延世大学や尚武など、韓国のラグビーチームが日本で合宿を行った際に無料で指導した。

 ロウ氏が行ったこの「無料の短期間家庭教師」による指導は2019年11月に行われた東京オリンピック予選で大きな力になった。韓国代表の徐天吾(ソ・チョンオ)監督から要請を受け、予選直前には日本と韓国鎮川の選手村を何度も行き来する二重生活を1カ月にわたり続けた。ロウ氏は中国や香港などライバルの試合をビデオで分析し、予選を勝ち抜くための戦術を練った。ロウ氏は「あの時点で大韓ラグビー協会は韓国がオリンピックに出場できるとは全く期待もしていなかったが、私は行けると確信した。先発選手とその交代のタイミング、戦術を一気にまとめて選手たちに伝えると、全員が『こんなに緻密な準備はしたことがない』と驚いていた。結果は予想通りになった」と語る。

 問題はその後だ。オリンピックに出られるとは思ってもいなかったので、実際に出場が決まってからの特別な計画は全くなかった。ロウ氏は「ゴルフに例えれば、アマチュア選手権で何とか優勝できた選手たちが、突然マスターズ大会に出場したようなものだ。韓国のラグビー関係者たちはこの大きな違いを理解できなかったようだ」と振り返った。その上コロナ渦まで重なった。韓国を離れようとした時にOK金融グループの崔潤(チェ・ユン)会長に会って考えを変えた。ラグビーを愛することと、日本語に通じるという共通点で意気投合した。崔会長が今年からラグビー協会会長に選出されたことで、ロウ氏も協会と初めて正式契約を結んだ。

 「韓国ラグビーにこれ以上の奇跡はない。オリンピックの出場権獲得に全てを使ったからだ。これからは本当に取り組まねばならない。選手の育成と選抜、練習方法など全てを見直すため今後2年かけて全力を尽くす。可能性を確認したので、韓国という3回目の挑戦を選んだ。来年はラグビー・ワールドカップの予選とアジア大会があり、その翌年にはパリ・オリンピックの予選もあるので今が本当に重要な時期だ。切迫したチャンスだ。私は外国人なので、できることは何としてもやりたい」と意欲を示した。

ヤン・ジヘ記者

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