米議会上院が北朝鮮を「ならず者国家」と呼び「米国と同盟国にとって脅威となる最先端兵器を開発している」と指摘した。国際原子力機関(IAEA)が今月20日「北朝鮮はプルトニウムの分離やウラン濃縮などの核開発に全力疾走している」と明らかにしたが、これに続いて米国も北朝鮮の核の高度化に対して警告を始めたのだ。

 米議会上院国防委員会は22日(現地時間)、2022会計年度の国防権限法案(NDAA)を本会議に提出する際、これに付随する報告書の中で「北朝鮮は小型化された核弾頭、戦術核兵器、独立して複数の標的を狙える核兵器を装着し、再突入が可能なミサイル発射体の開発など、すでに公表した計画を引き続き進めている」と指摘した。さらに「さまざまな射程距離を持つ固体燃料弾道ミサイル、原子力潜水艦システム、極超音速滑空飛行体(HGV)の開発も堂々と進めている」などとも批判した。

 米議会上院軍事委員会で話題になったHGVは戦争の領域を変える「ゲーム・チェンジャー」の兵器とされている。HGVは弾道ミサイルに搭載され、およそ150キロ上昇してエンジンと分離し、滑空飛行をしてから目標の上空でマッハ5以上の極超音速で落下する。飛行ルートが予測不可能なことから、現存のミサイル防衛(MD)体制では迎撃が難しい。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は1月に開催された第8次労働党大会でHGVを含む極超音速兵器の開発を公表した。

 米議会上院のNDAA草案でも下院と同じく、在韓米軍を一定数以下に削減できないよう提案する規定が削除された。2021年度のNDAAには「韓国に配備された現状兵力の総人員数を2万8500人以下に削減するために予算を使ってはならない」とする条項があった。かつてトランプ前政権が米議会や同盟国である韓国と相談せず、一方的に在韓米軍を削減できないようにするための「安全装置」だった。そのため今回この条項が抜けたことについて一部では「在韓米軍はいつでも削減できるのでは」との懸念が出ているが、米行政府は「縮小される可能性はない」と説明している。ただしバイデン大統領が先日指示した「海外駐留の米軍再配置についての検討」などとの関係から、在韓米軍が「対中けん制」「南シナ海での緊張への対応」などを理由にその性格や役割が変わるとの見方もある。

 一方で在韓米軍はこの日、金正恩氏を含む北朝鮮首脳部に対する「斬首作戦」の訓練を13日に平沢基地で実施したことを公表した。13日は北朝鮮が今月11-12日に新型巡航ミサイルを発射した直後に当たる。さらに異例にも訓練中の写真も複数公開された。米軍の特殊作戦司令部から斬首作戦に投入される統合末端攻撃統制官(JTAC)などの核心戦力はチークナイフと呼ばれる斬首作戦訓練において、夜間の浸透任務などの訓練を行ったという。北朝鮮はさまざまな新しい兵器を開発し、挑発のレベルを高めているが、今回の訓練公開はそのような北朝鮮に対する警告と解釈されている。

 米軍は主要な施設への浸透や、爆撃を誘導あるいは敵の後方から航空任務などを遂行する訓練を行った。米本土の特殊作戦司令部や日本のインド・太平洋司令部ではC130J輸送機、MH60などの装備も展開した。

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