韓国GMは2018年、R&D(研究開発)法人「GMテクニカルセンターコリア」を設立した。1万人超の社員のうち研究・開発を担当する人材3000人を新設の法人に移籍させた。群山工場を閉鎖するなど生産部門のリストラを断行し、グローバル戦略・新車開発を主導する核心組織を分離したわけだ。

 最近、もう一つの外国系完成車メーカー、ルノーサムスンでも生産・非生産部門に組織を二元化する兆しが見られる。本社が韓国工場の生産台数をこれ以上割り当てず、ルノーサムスンには将来的にエコカー販売を担当させるという構想が出てきたのだ。このため業界では、韓国での自動車生産費用が上昇し続けていることから、外国系の完成車メーカーが韓国を生産基地ではなく研究開発・販売の拠点にするのではないかとの見方が出ている。

 2012年以降赤字が続き、経営難にあえいでいた韓国GMは18年7月、R&D法人を新たに設立すると宣言した。労組はすかさず総ストライキに言及し、強く反発した。R&D法人が別途運営されれば生産職である労組の力が弱まり、本社が韓国への生産割り当てを容易に減らせるようになるため、最終的に生産法人を撤収する可能性があると主張した。

 労組の反発が続き、法院(裁判所)まで介入する事態となり、法人設立は5か月遅れたが、韓国GMの第2の株主である産業銀行がGMと合意し、R&D法人が設立された。当時、産業銀行のイ・ドンゴル会長は「新たなR&D法人を、今後GMが発表する戦略車種の準中型SUV(スポーツタイプ多目的車)とCUV(クロスオーバーユーティリティビークル)の重点R&D拠点とする。またR&Dの物量も10年間維持するため、生産法人と部品メーカーにとっても助けになるだろう」と述べた。

 R&D法人が設立されて以降、韓国GMの自動車生産台数(国内・輸出含む)は17年の52万台から18年には44万台、19年は41万台、20年には35万台へと減少し続けた。今年1-8月の生産台数は18万台で、年間生産台数は30万台を下回ると予想される。世界の自動車需要は爆発的に伸びているが、韓国には本社から生産割り当てが追加されない上、販売不振が重なっており、韓国の生産台数は減少しているのだ。

 生産規模の縮小に伴いリストラを断行することになったルノーサムスンの状況も、韓国GMと似ている。特にルノーサムスンは韓国GMとは異なりR&Dが弱いため、単なる販売組織に格下げされるとの懸念も出ている。

 ルノーサムスンの17-20年の年間生産台数は26万台、22万台、16万台、11万台と減少し続けた。今年は10万台前後にとどまる見通しだ。本社であるルノーグループはルノーサムスンについて、収益性の改善が必要な代表的な事業場と見なし、韓国が生産基地にふさわしくないとの認識を示したわけだ。

 その代わりにルノーグループは先月、中国最大の民営自動車企業・吉利汽車と共にエコカーの開発計画を発表し、吉利がボルボカーズと共に立ち上げたブランド「リンク&コー」が開発したエコカーについては、ルノーサムスンを通じて韓国市場で販売する計画を発表した。

 世界的な自動車ブランドであるGMとルノーグループは、韓国の高い生産品質と生産性を認め、韓国に生産基地を構築した。しかし、通常賃金と最低賃金の引き上げによって人件費が高騰した上、労使の対立が続いて供給が不安定になったことで、今後は韓国で研究開発や販売など非生産組織を運営する方向で戦略を転換しようとしている。

 ある自動車専門家は「韓国は世界的な水準の研究開発力を保有し、販売市場もかなり大規模だが、生産費が高騰し、完成車の生産にふさわしくない環境に変わってきている」として「このような傾向が続けば、世界の自動車メーカー各社が韓国で創出する雇用の総数は間違いなく減少するだろう」と指摘した。

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