▲チョ・ジェボム元コーチ=写真左=、チェ・ミンジョン=同右=

 ショートトラック韓国代表の沈錫希(シム・ソクヒ)が2018年平昌冬季五輪の試合中、同じ韓国代表だったチェ・ミンジョンに故意に衝突したという疑惑が最近取りざたされているが、これより前に沈錫希に金メダルを取らせようと、韓国代表選手内で八百長の試みが少なくとも2回あったと暴露されていたことが分かった。選手たちに八百長を提案した当事者自身による暴露だ。

 この暴露をしたのは、沈錫希に対して性的暴行を振るったとして逮捕・起訴され、現在は二審の裁判を受けているチョ・ジェボム元韓国代表コーチだ。暴露した時期は沈錫希が性的暴行被害を告白する「MeToo」を行う4カ月前の2018年9月。チョ・ジェボム元コーチは当時、韓国代表選手4人を殴った容疑のみで逮捕されていた状態で、記者あてに3回、拘置中に手紙を送り、八百長を試みたことを暴露した。その時点では、暴行事件の加害者とされた人物の一方的な主張だとの判断により、記事化されなかった。

 最近の「沈錫希による故意衝突疑惑」をきっかけに、本紙は今月8日から14日まで、暴露に登場する人物たちを再び取材した。チェ・ミンジョン側は「答えるのは難しい」と言い、沈錫希は答えなかった。

 チョ・ジェボム元コーチによると、初めて八百長を試みたのは2016年12月に江原道で開催された2016-17シーズン国際スケート連盟(ISU)ショートトラック・ワールドカップ(W杯)だったという。チョ・ジェボム元コーチはこの時、チェ・ミンジョンの所へ行き、1500メートルの試合で韓国体育大学在学中の沈錫希に金メダルを譲るよう要求したが、チェ・ミンジョンは「譲るくらいなら、いっそのこと別の種目に出場する」と言って、沈錫希が出場しない500メートルに出場した、というのが元コーチの主張だ。チェ・ミンジョンは延世大学に在学中だった。

 事実、チェ・ミンジョンは同大会で1500メートルに出場しておらず、沈錫希はチェ・ミンジョンがいない1500メートルで金メダルを取った。

▲沈錫希

 次の試みは2017年の札幌冬季アジア大会だった。チョ・ジェボム元コーチは手紙の中で、「(大韓スケート競技連盟副会長で韓国体育大学教授の)A氏が『韓国体育大学の沈錫希が金メダルを取らなければならない』と言って(私に)圧力を加え、以前1500メートルで金メダルを取ったことのあるチェ・ミンジョンが沈錫希に金メダルを譲るよう誘導しろと言ったので、そうした。(私は)チェ・ミンジョンに頼んだ。結局、チェ・ミンジョンは1000メートルで金メダルを譲った」と書いた。別の手紙では、「チェ・ミンジョン選手の宿泊先に行って頼み込んで、チェ・ミンジョン選手は承諾した」と説明している。

 当時の試合の動画を見ると、チェ・ミンジョンはスタートと共に先頭に出て、力走していたが、あと3周という時点で沈錫希がインコースに入ろうとしても、進路をふさがなかった。この時2人の順位が逆転して、首位を譲ったチェ・ミンジョンがその後、自分の後ろを滑走する3・4位の選手が追い越そうとした時は進路をふさいだ。そして結局、沈錫希が金メダルを取った。

 この試合直後、動画が掲載された「ユーチューブ」のコメント欄にも、チェ・ミンジョンについて「終盤にスピードを調節したようだ」「フィニッシュラインでスケートのブレード(刃)をなぜ出さなかったか」などの意見が寄せられていた。

 チェ・ミンジョンは2018年9月、「八百長を提案されたことがあるか」という質問に、「敏感なことなので、会社と相談した上でお話ししなければならなさそうだ」と答えた。チェ・ミンジョンのマネジメント会社の関係者は今月14日、「今も当時のチェ・ミンジョン答えはそのままだ。これ以上は言及したくない」とコメントした。沈錫希とそのマネジメント会社は取材に応じなかった。

 チョ・ジェボム元コーチは、このような八百長の試みがあった理由について、A氏の「韓国体育大学での実績」のためだと言っている。チョ元コーチは「韓国体育大学教授だったA氏は、延世大学に行ったチェ・ミンジョンの成績が韓国体育大学出身者よりも良いという理由で私に圧力をかけた。この時、私に対する暴行と共に、八百長の指示があった」と明らかにした。A氏は「当時そのような立ち場にいなかったし、全く知らないことだ」と話している。

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