最近熱を帯びている宇宙産業競争に参入しようと思ったら、衛星を宇宙に打ち上げる発射体の技術で競争力を確保しなければならない。市場調査を手掛けるVisiosgain社によると、宇宙発射体市場だけでも、2019年の95億ドル(現在のレートで約1兆800億円。以下同じ)から年平均15%の成長で2030年には476億ドル(約5兆4300億円)規模に至ると推定されている。韓国型発射体「ヌリ号」は、模擬衛星の軌道最終進入には失敗したものの、飛行能力は立証した。韓国が世界の発射体サービス市場で先進国と競争する日は遠くない、という期待が出てきた。だが専門家らは、ヌリ号の技術が完成されたとしても、安全性や経済性など、まだ越えるべき山は多い-と語る。

■性能と価格競争力、どちらも確保すべき

 現在、宇宙発射体市場は米国のスペースXとULA、欧州のアリアンスペースが握っている。各社は数多くの打ち上げを繰り返し、信頼性と性能を確保した。アリアン5ロケットは1996年の最初の打ち上げ後、現在までに100回以上も宇宙に飛んだ。これだけではない。スペースXは再利用ロケット技術で1回の打ち上げ費用を3分の1程度に減らし、宇宙産業の商用化時代を切り開いた。米国航空宇宙局(NASA)が関連技術を民間へ大幅に開放し、多くの企業の参加を引き出したことが実を結んだのだ。

 だがロケット再利用の分野で、韓国はまだ研究室レベルを抜け出せずにいる。国家宇宙政策研究センターのイム・ジョンビン研究政策第1チーム長は今月14日、韓国科学技術団体総連合会主催のフォーラムで「現在、世界の宇宙発射体開発のキーワードは『再利用』だが、韓国がきちんと対応できていないのは事実」と語った。張泳根(チャン・ヨングン)韓国航空大学教授は「宇宙サービス市場で衛星を打ち上げてお金を稼いでこそ、真の産業化に至ることができる」とし「少なくとも年に2回の打ち上げを通して改良し続けなければならない」と語った。

■大型衛星を打ち上げようと思ったら固体燃料ロケットを開発すべき

 ロケットに大型衛星を搭載しようと思ったら、推力を補強できる固体燃料エンジンを開発しなければならない。最近、韓米ミサイル指針の改正により固体燃料を宇宙発射体に使う道が開かれた。実際、国防科学研究所は今年7月、宇宙発射体用の固体燃料エンジンの燃焼試験に成功し、固体燃料ロケット開発の第一歩を踏み出した。

 固体燃料エンジンは液体燃料エンジンと違って、燃料と酸化剤を打ち上げ時間に合わせて注入する必要がなく、常に充てんした状態で保管できる。それだけ打ち上げ準備が簡単だ。こうした利点から、主に軍用ミサイルの推進エンジンとして使われており、これまで韓米ミサイル指針では開発を制限していた。構造も液体燃料エンジンより簡単で製造しやすく、開発費用が安い。

 固体燃料エンジンはロケットの最上段に搭載して発射体の軌道を変えたり、液体燃料ロケット1段目の横に取り付ける補助ロケットとして活用したりする。実際、欧州のアリアンや日本のH2ロケットも、固体燃料発射体を補助ロケットとして使っている。

 固体燃料エンジンの宇宙発射体も、民間が挑戦できる領域だ。韓国政府は2024年まで、民間企業の固体燃料発射体開発を支援する予定だ。科学技術情報通信部(省に相当)のクォン・ヒョンジュン巨大公共研究政策官は「固体燃料エンジンの宇宙発射体は構造が単純ですぐに作ることができ、企業が容易に参入できるので積極的に支援する」と語った。日本も、液体燃料ロケットと共に「イプシロン」という固体燃料ロケットを運用している。

■民間の参加を拡大し、政府も長い目で見つつ支援すべき

 スペースXやブルー・オリジンの事例で見るように、民間の参加をさらに拡大すべきだという意見もある。今回のヌリ号の開発にはハンファ・エアスペースや現代重工業などおよそ300の民間企業が参加した。だが韓国の宇宙開発における民間の参加は、政府のプロジェクトを受注して実行するという水準にとどまる。各企業に破格のインセンティブ(奨励金)を提供し、企業が自ら競争しつつ技術を蓄積できる基盤を整えてやらなければならない-という指摘が出ている。「宇宙開発が国家主導の研究開発に依存しているせいで、クリエーティブな挑戦が足りない」というわけだ。ある専門家は「米国のNASAが数十年かけて積み上げた技術を開放してスペースXのようなクリエーティブな企業を生んだように、韓国政府も関連技術を大挙開放して民間の参加を拡大すべき」と語った。

 韓国政府も、未来の産業を育てるという長い目で宇宙開発を推進しなければならない。最も成功した事例が、アラブ首長国連邦(UAE)だ。韓国から衛星技術を伝授されたUAEは、今年2月に火星探査機「アマル」を軌道へ送り込むことに成功した。2024年には月、28年には小惑星へ探査機を送るという計画を発表した。韓国天文研究院のファン・ジョンア博士は、科学技術団体総連合会の討論会で「今こそ、きちんとした設計図を備えてビジョンと目標を提示できるミッションを準備すべきとき」と語った。

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