▲北朝鮮政権樹立73周年の記念日だった今年9月9日、記念行事に登場した金正恩(キム・ジョンウン)総書記。閲兵式に臨み、右手の親指を突き立てたが、以前に比べかなり姿が変わっていたため、影武者説が飛び交った。写真=聯合ニュース

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記に時ならぬ影武者説が降ってわいた。今年9月の北朝鮮政権樹立記念日の行事に姿を現したが、以前に比べてかなりやせていたからだ。外信の中には、横顔やヘアスタイルが変わったとして、影武者疑惑を取りざたした。東京新聞はかつての韓国国防部北朝鮮分析官の主張を引用、金正恩総書記を警護する部隊所属の1人が影武者として登場した可能性を挙げた。中でも関心を集めたのは、ある米国のタブロイド・メディア「グローブ」の報道だった。米国防総省関係者の話として、「過去の金正恩総書記の写真と、9月に登場した金正恩総書記の顔を顔認識技術により比較してみたところ、他人だった」と報道したのだ。

 専門家らは「現在の顔認識技術なら、2つの映像に出てきた人物が同一人物であるかどうかを突き止めるのは難しくない」と話す。顔認識技術会社「オン・フェイス」などによると、人の両目と鼻の間隔によって本物か偽物か分かるという。両目と鼻に点を打ってつなぐと「三角形」になるが、三角形の間隔や形、大きさが人によって微妙に異なるとのことだ。赤外線カメラでこの三角形の内側に300余りの仮想の点を打てば、顔の輪郭や屈曲などが現れて比較できる。オン・フェイスのチン・ヨンラク研究員は「人がいくら太ったりやせたりしても、この間隔は変わらない。北朝鮮の金正恩総書記が太ったりやせたりしても、簡単に判別できるのはこのためだ。コンピュータが判別する時間は1秒しかかからない」と話す。事実、国家情報院もこのような技術を習得し、北朝鮮の各要人を把握する際に使用しているという。こうした技術で判別すれば、「今年9月に姿を現した金正恩総書記は過去の金正恩総書記と同じだ」というのが顔認識専門家らの結論だ。

 もちろん、コンピュータが判別するのに困難がある可能性もある。それはマスクをしている場合だ。チン・ヨンラク研究員は「マスクをすると鼻が隠れるため、判別する能力が約50%下がる」と言った。青少年や幼児のように成長期にいる人は顔の骨格が変わるため、約6カ月-1年周期で目と鼻の間に違いが出てくる可能性があり、判別が難しくなることもある。このほか、化粧は濃くても判別できるが、鼻やほお骨のまわりに特別な物質を付けるなどの扮装をすると把握が難しくなるとのことだ。

 顔認識技術が最も発達しているのは中国だ。中国は国家レベルでこの分野に15年以上、投資してきた。14億人を超える国民を統制するには顔認識技術が効果的だと判断したのだ。単にある人物が誰であるかを判別するだけにとどまらず、どの人種に属しているのかを把握できるほど技術力が上がっている。米紙ワシントン・ポストによると、中国の通信機器大手「ファーウェイ(華為技術)」は、中国国内の少数民族であるウイグル族を顔認識技術で把握し、これを警察に通知する人工知能(AI)ソフトウェアをテストしたという。複数の人々の集まりの中にウイグル族がいると、顔認識技術で把握して警察に知らせるというものだ。こうしたことはファーウェイの内部文書で明らかになった。

 現在、韓国国内では約20社が顔認識関連事業をしている。このうち一部は顔だけ見ればどの国の国民なのか、さらには韓国のどの地方の出身なのかなどを判別できる技術を保有している。オン・フェイス関係者は「100万人以上の顔データを蓄積しているため、人の顔を入力すれば、その人の国籍を大まかに判別できる。特に韓国人の場合は、顔を認識すれば、その人が百済・高句麗・新羅・伽耶のうちどの血統なのかもすぐに把握できる」と話す。ただし、群衆の中から特定の人物を正確に判別する技術はまだ完全ではない。例えば、100人余りの中から特定の1人を判別しようと試みた場合、100件のうち3件の割合で間違えるとのことだ。

郭彰烈(クァク・チャンリョル)記者

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