▲「トランスジェンダー女性」入学賛否問う壁新聞-あるトランスジェンダー女性の淑明女子大学合格が分かった2020年、キャンパスに入学の賛否を問う壁新聞が掲示された。このトランスジェンダー女性は結局、入学を断念した。写真=聯合ニュース

【韓国ジェンダーリポート2022】〈第9回〉

 女子大学を卒業したユさん(29)はフェミニズムを支持しているが、自分を「フェミニスト」と呼ぶことについてはちゅうちょしている。大学時代、校内のフェミニズム・サークルが主催したセミナーに行った時、「化粧落として来て」「なんでスカートをはいて自分自身を性的対象にするの?」ととがめられてからは遠ざけてきた。そして、「脱コルセット」運動がフェミニズムに及ぼす否定的な影響を研究した論文で修士号を取った。ユさんは「女性が自分の望む姿で歩ける自由を手にするのがフェミニズムだ。自分たちの思想を一方的に強要するフェミニズムは共感を得られない」と語った。

 嫌悪・差別・排除と闘うべきフェミニズムが、逆に女性やその他の社会的弱者を排除する様相を呈するようになり、批判もされている。女性団体が性暴力被害者に2次被害を与え、女性優越主義を掲げて男性嫌悪表現をするコミュニティー・サイト「WOMAD(ウォーマッド)」が登場し、フェミニズムに対する否定的認識が高まった。女性に有利なものだけを取捨選択するフェミニズムをあざ笑う「ビュッフェミニズム」(ビュッフェ+フェミニズムの造語)という言葉も登場した。

 キャンパスでフェミニズム論争が目につくようになったのは、トランスジェンダー女性の女子大学入学が学生たちの反対により実現しなかった事件がきっかけだった。2020年、男性から女性に法的に性別変更したトランスジェンダー女性が淑明女子大学に合格したことが分かって在学生を中心に入学反対署名運動が起き、合格者は結局入学を断念した。署名運動には淑明女子大学の在学生と卒業生、ほかの女子大学の学生ら2万人近くが参加した。これを主導した人々は「生まれた時から女性でなければ女性とは認めらない。性器の手術をしたからと言って女性になることはできない」と主張した。また、「トランスジェンダー女性の入学を許せば、女性だけで成り立っている安全な空間を男性が侵すことになる」というのがこれらの人々の論理だった。この事件は、ジェンダーによる差別や嫌悪に反対するフェミニストたちが逆に性的少数者を差別・嫌悪したという理由で非難を浴びた。

 女性ではない性別を排除し、トランスジェンダーや男性の同性愛を受け入れないフェミニズムは「分離主義フェミニズム」と呼ばれる。海外では主流でないが、2010年代後半から韓国の20-30代を中心に若いフェミニストたちの間で支持されている。本紙調査でも、「フェミニズムに肯定的な関心を持っている」とした回答者のうち、「フェミニズムは第3の性を含む性平等だ」と答えた割合は10人に1人(9.1%)にも達しなかった。これらの人々は「韓国社会におけるジェンダーの矛盾は男性優越主義に端を発するものなので、男性と連帯してはならず、女性が社会で優位を占めるべきだ」と主張する。2018年、盗撮に対するぬるま湯的な捜査を糾弾するソウル・恵化駅でのデモで、主催側が安全のためにデモ参加対象者を「生物学的女性」と規定し、男性はもちろんトレンスジェンダーを排除したのが分離主義の代表的な事例だ。

 20-30代が主軸の分離主義フェミニストたちは、脱コルセットと「非恋愛・非性関係・非結婚・非出産」を意味する「4B運動」も共に主導している。家父長制内での妊娠と出産による負担は女性に偏っており、異性との恋愛でも女性が受け入れなければならないリスクが大きいということだ。脱コルセットと4B運動こそ最も強力な女性運動のやり方だという認識が広がり、これに従わなければフェミニストではないという主張が強まっている。

〈特別取材チーム〉金潤徳(キム・ユンドク)週末ニュース部長、キム・ヨンジュ社会政策部次長、卞熙媛(ピョン・ヒウォン)産業部次長、キム・ギョンピル政治部記者、ユ・ジョンホン社会部記者、ユ・ジェイン社会部記者、ユン・サンジン社会部記者

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