▲豪チャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授が書いた書籍の韓国語版。/写真=朝鮮日報DB

 「われわれが調査している中国共産党(CCP)のスパイ活動関連の件数は、2018年に比べ7倍に増えた。最近3年間でMI5の中国関連の事件処理能力は2倍に増加し、今後数年間でさらに2倍に拡大するだろう」

 これは7月6日、MI5本部があるロンドン市内のテムズ・ハウスでケン・マッカラムMI5長官が取材陣の前で語った言葉だ。MI5(Security Service、保安局)は英国の国内防諜(ぼうちょう)・情報機関。マッカラム長官はこの日、米国FBI(連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官と、史上初となる英米情報機関トップ会談を行い、共同記者会見を開いた。

■「最近4年で英国内の中国スパイ事件は7倍に急増」

 FBIのレイ長官はこの席で「FBIはおよそ12時間置きに、中国に対する新たな防諜事件捜査に着手している」と語った。二人はCCPの動きについて「構図を変えてしまうもの(game-changing)」「絶大で、息をのむような(immense and breath-taking)」と表現した。CCPの活動は想像以上に緻密かつ脅威と言っているのだ。

 中国共産党の国内政治介入が各国で破裂音を響かせている。今年1月、英国MI5は議会の議員全員に、クリスティン・リー(Lee)という中国人女性弁護士の実名と写真入りの「保安局介入警報(Security Service Interference Alert)」を発令した。「中国海外親善協会(COFA)所属のこの人物は、中国共産党中央統一戦線工作部(UFWD)と連携して秘密活動を行ってきている」というのだ。

 BBC放送は「クリスティン・リーはバリー・ガーディナー労働党下院議員におよそ50万ポンド(現在のレートで約8100万円。以下同じ)を献金した。彼女は英国政界における中国批判を弱め、議会内の親中派拡大を図っている」と報じた。

 米国では2018年10月4日、マイク・ペンス副大統領(当時)がワシントン所在のシンクタンク「ハドソン研究所」のイベントで、中国について次のように語った。

「米国の政治システムを瓦解させて米国国内の政策や政治に介入するため、中国は力を用いている。(中略)中国が標的とする米国の郡の80%は、2016年の大統領選挙でトランプ大統領に入れたところだ。中国は連邦政府と州政府間の亀裂を活用しようと、米国の州や地方政府、当局者を狙っている」

 中国の活動は、現地メディアが長期にわたって追跡しなければならないほど隠密裏だ。米国のネットメディアAxiosは2020年12月8日、「1年間の取材の末、クリスティン・ファン(Fang)という20代後半から30代前半の中国政府機関所属の女性が、2011年から5年間にわたりサンフランシスコなどでエリック・スウォルウェル連邦下院議員(民主党)を含む主な政治家を相手に諜報活動を繰り広げていた事実を確認した」と報じた。

■米国連邦議員、市長、市議会議員に接近

 大学生を装ったクリスティン・ファンは、連邦議員や市長、市議会議員などに接近し、選挙資金の募金を助けたり肉体関係を持ったりして情報を盗み出していたことが判明した。「中国政府は今春実施されたニューヨーク市議会選挙にも直接介入した」として、クリストファー・レイFBI長官は次のように語った。

「中国は今年のニューヨーク市議会選挙において、1989年6月の天安門デモ参加者で中国を批判している候補が当選することを望まなかった。中国はこの候補に関する不利な情報を探り出すため、私立探偵を雇った。何の情報も得られないことから、性労働者を利用して社会的論争を引き起こそうとし、交通事故の提案も行った」

 全米435の連邦下院議員選挙区では、多くの場合、薄氷を踏むような勝負が繰り広げられる。資金を集中支援したり、中国系米国人を動員して数千人、もしくは1万人から2万人の票さえ動かせば、中国に友好的な議員をもっと多く当選させることができる。

 オーストラリア政界を狙って、中国は露骨に浸透を図っている。個人や機関を動員して、総選挙などへの影響力行使を試みたのだ。2016年のマルコム・ターンブル首相の自由党政権で、労働党上院議員をはじめとする政界に中国人富豪が200万豪ドル(約1億8700万円)をばらまいたことが情報機関によって捕捉された。

 サム・ダスティアリ上院議員(労働党)は2014年から、中国共産党と関連のある財閥実業家から訴訟費用支援や中国旅行、高級ワインといった饗応を受けていた。2017年にはスポンサーの実業家に「豪政府があなたの携帯電話を盗聴しているので注意すべき」と情報を漏らしていたことが報じられ、国民的な怒りを買い、翌18年1月に政界から追い出された。彼は南シナ海の領有権争いのような事案で親中を選択し、「シャンハイ・サム(Shanghai Sam)」と呼ばれた。

■「後援金、広告、雇用で豪を攻略」

 オーストラリア政府はその後、外国人による政治後援金の寄付を制限し、外国政府に雇われた代理人が内政に干渉した場合には刑事処罰する法律を作った。

 豪チャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授は「中国共産党はオーストラリアを、米国に『ノー』と言う国にしようとしている。オーストラリアの相当数の国会議員、特に労働党議員が主に中国の情報当局の工作員によって影響を受けてきた証拠が明らかになった。中国と関連がある実業家の後援を受けた政治家らは、資金の元を隠している」と語った。

宋義達(ソン・ウィダル)エディター

ホーム TOP