米国のアイゼンハワー大統領が、ホワイトハウスを訪れた韓国の李承晩(イ・スンマン)大統領に「韓日の国交樹立が必要だ」と言った。李大統領は「私が生きている限り、日本とは付き合いたくない」と返答した。外交的暴言だった。アイゼンハワーは怒って席から立ち上がった。その背中に向けて李大統領は声を張り上げた。「あんなけしからん人間がいるか!」。こんな韓国大統領は永遠に現れないだろう。

 韓国を知る日本人は、金大中(キム・デジュン)大統領が好きだという人が多い。日本の大衆文化開放や漁業協定など、日本にとって得になる政策が多かった。過去史はほとんど問題にしなかった。逆に、左派・右派を問わず日本人が嫌いな大統領は李承晩だ。反日独立運動家だったからというだけではない。李承晩は日本に利益を与える米国のあらゆる政策を拒否した。日本の立場からすれば、李承晩は自国の領土(竹島/独島)を奪った唯一の韓国人だ。こんな日本人に「李承晩大統領は韓国で親日派と言われている」と教えたら、なんと言うだろうか。

 韓国のアイデンティティーを否定する人々にとって、李承晩は必ず打倒すべき象徴だ。共産主義に反対して大韓民国を建国し、6・25戦争で北朝鮮を退けた。米国と同盟を結んだ。「ソ連の衛星国化」を防いだ指導者だ。韓国の高度成長は、李承晩が作った安全保障と経済の土台の上で実現した。民主化すら、李承晩が導入した自由民主主義のおかげで可能だった。北朝鮮に追従する人々がなぜ、かくも李承晩大統領を憎悪するのか、ここから察することができる。

 今から10年前に民族問題研究所が作って公開した『百年戦争』は、独立運動家キム・ノディを李承晩の情婦であるかのように描写した。既にうそだと判明している。不倫が原因で二人が米国の警察に逮捕され、写真を撮られたかのように画面上で見せかけた事実が判明したにもかかわらず、法的な審判は受けなかった。親日派と歪曲(わいきょく)するだけでは足らず、李大統領の道徳性を傷つけようと、捏造(ねつぞう)まで行ったのだ。それでいて、親日派の断罪を行ったことがない上に親日関係者を多数起用した金日成(キム・イルソン)については、英雄のように持ち上げる人が少なくない。

 このほど、キム・ノディは李承晩大統領の養女だとの記録が新たに出てきたという。父娘だったというわけだ。韓国政府は昨年、独立運動へのキム・ノディの貢献を認めて建国勲章を追叙した。それでも、『百年戦争』の動画はユーチューブ上でそのまま流通している。実際、こうした歪曲を行う勢力のように道徳的問題の多い集団はまれだ。ありとあらゆる種類のセクハラが起きている場所はどこか。そのたびに事実を隠し、逆に被害者を非難する。そんな勢力が、うそで建国大統領の道徳性を攻撃した。数十年にわたって執拗(しつよう)に続いてきた「李承晩殺し」こそ、道徳的破綻に至っている。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員

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