韓国下着大手、サンバンウルグループと癒着疑惑が指摘される民間団体「アジア太平洋平和交流協会」が米国で対北朝鮮制裁違反で処罰されたバージル・グリフィス氏が開発に加わった「イーサリアム」を基盤とする仮想通貨10億個を発行していたことが13日までに判明した。

 アジア太平洋平和交流協会は、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が京畿道知事に在任中、2回にわたり対北朝鮮交流行事を京畿道と共催し、サンバンウルの北朝鮮での鉱物開発事業も支援した。グリフィス氏は北朝鮮に仮想通貨を利用して国際制裁を避ける方法を伝えたとして、米当局に逮捕され、懲役5年3月の判決を受け服役中だ。

 共に民主党の金宜謙(キム・ウィギョム)議員は6日、国政監査に出席し、米検察当局が裁判所に提出したグリフィス氏の犯罪事実に文在寅(ムン・ジェイン)政権下の「ソウル市長」と「城南市長」に関する言及があると主張した。韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官がそれを捜査するため、6月に米国に出張したという疑惑を指摘したものだった。

■「北朝鮮の代替通貨として使用」

 本紙の取材を総合すると、アジア太平洋平和交流協会は2018年8月、イーサリアムを基盤とする仮想通貨開発に着手した。同協会はインターネット上に公表した白書で、仮想通貨について、「(北朝鮮の)既存通貨崩壊時に代用通貨として使用する可能性が高い」「北朝鮮ウォンの安定に寄与するだろう」と指摘。仮想通貨「ビットコイン」を法定貨幣として採択したエルサルバドルの例にも言及した。

 アジア太平洋平和交流協会の仮想通貨は昨年11月に「APP(Asia Pacific Peace)」という名称でタイの仮想通貨取引所に上場された。しかし、最近1ヵ月間は取引がほとんどない状況だ。韓国の仮想通貨取引所にはまだ上場されていない。

 アジア太平洋平和交流協会は仮想通貨発行に向け、20年に100人余りから10億ウォン(約1億300万円)の投資も受けた。現職KBS幹部も1000万ウォン相当を投資し、仮想通貨20万個を受け取った疑惑が指摘されている。KBS幹部は19年7月、同協会と京畿道がフィリピン・マニラで開催した対北朝鮮交流イベントに参加し、北朝鮮のリ・ジョンヒョク朝鮮アジア太平洋平和委員会副委員長と単独インタビューを行った経緯がある。同協会は当時、「南と北は既に手を携え、ブロックチェーン技術基盤で文化、観光、スマートシティー、エネルギー、資源、国土開発、物流、流通などの事業を始める」とする映像を上映した。このイベントでは、自分たちの仮想通貨事業を北朝鮮側に紹介したという。

■18年に「ソウル市長」「城南市長」言及

 金宜謙議員による主張以降、グリフィス事件とアジア太平洋平和交流協会の「北朝鮮仮想通貨事業」の関連性が注目されている。米国の裁判所に提出されたグリフィス氏関連文書によると、同氏は18年2月から北朝鮮仮想通貨事業を推進し、韓国の仮想通貨スタートアップ企業代表A氏と電子メールのやりとりを始めた。18年6月、A氏はグリフィス氏に「ソウル市長と城南市長がある仮想通貨イベントに参加する」「ソウル市がイーサリアム財団を支援する可能性がある」「(ソウル市との)協議で北朝鮮に(仮想通貨)研究施設を設立する問題に言及があった」などとする電子メールを送った。

 当時ソウル市長は朴元淳(パク・ウォンスン)元市長であり、城南市長は李在明代表が18年3月に京畿道知事出馬を宣言して辞職したため空席だった。金議員は電子メールで触れられた2人の市長は、朴元淳元市長と李在明代表を指すと指摘した。

 グリフィス氏は19年4月、平壌で開かれた「ブロックチェーンと仮想通貨コンファレンス」に出席した。北朝鮮の官僚ら100人余りが参加する中、仮想通貨を利用した国際制裁回避、マネーロンダリングの方策などについて講演した。

 グリフィス氏は19年4月に北朝鮮を離れた直後、両親に「ブロックチェーンを基盤として、北朝鮮と韓国の経済関係を連結する存在になりそうだ」というメッセージを送った。 19年5月には同僚に「平壌とソウルの間で『合同ブロックチェーンコンファレンス』が行われるという話がある。北朝鮮が非常に関心を示しているようだ」というメッセージも送った。2カ月後の19年7月、アジア太平洋平和交流協会はフィリピン・マニラで対北朝鮮交流イベントを開いた。同協会は白書でこのイベントを「北朝鮮を含む12カ国が参加したブロックチェーン連邦国際大会発表」と表現した。

 米司法当局は、北朝鮮が仮想通貨を国際制裁の回避、マネーロンダリングなどに利用し、そこで調達した資金を兵器開発などに投入している手がかりをつかんで追跡している。

表泰俊(ピョ・テジュン)記者、イ・セヨン記者

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