▲金薫『ハルビン』

 金薫(キム・フン)著の小説『ハルビン』が9週連続で総合1位(教保文庫)を守り続けている。発行部数は8刷22万部。金薫は「安重根(アン・ジュングン)の尋問調書や公判記録には、悲劇的で美しい世界があった」とし「時代全体と対決する、その高圧電流を移してきたかった」と語った。書店大手「教保文庫」によると、同作は他のベストセラーに比べ40-60代男性層にかなりの人気がある。読者の間で『ハルビン』は「安重根義士のことをあらためて考える時間になり、その一方で恥ずかしかった」という評を集めている。

 映画『国際市場で逢いましょう』で1426万人の観客を集めたユン・ジェギュン監督は、今年12月にミュージカル映画『英雄』で戻ってくる。ハルビンでの伊藤博文暗殺の直前から殉国まで、安重根(1879-1910)の最後の1年を描いた。この映画が原作にしているミュージカル『英雄』も、12月にLGアート・センター・ソウルで開幕する。今年下半期の韓国文化界のキーワードとして「安重根」が予約されているわけだ。「韓国社会は経済的不況と社会的危機に見舞われており、大衆は安重根に共感と慰めを得ている」との解釈が登場している。

■映画『英雄』は母を描いた物語

 ユン・ジェギュン監督にとって、『英雄』は8年ぶりとなる復帰作。彼は10月7日、釜山国際映画祭で報道陣の取材に応じ「映画『英雄』を12月21日に封切りする」と発表した。劇中のウラジオストクの姿はラトビアで撮影し、ハルビンは陜川と平昌のセットで再現した後、視覚特殊効果(VFX)を活用した。

 「投資家らはチョン・ソンファが安重根を演じることに反対したが、『この作品を一番よく理解している俳優で、歌の実力は代替不可能』と説得した。『国際市場で逢いましょう』が父親の物語だとしたら、『英雄』は母親を描いた物語。安重根と趙瑪利亜(チョ・マリア)女史=女優ナ・ムニ=、母子の関係が核心だ。息子に対する愛が切ない。厳しい時代を生きている全ての人が英雄だと私は思う」

 この日、取材の場には俳優チョン・ソンファ、キム・ゴウン、イ・ヒョヌ、パク・チンジュなどと共に投資配給会社CJENMが同席した。歌はほとんどライブで録音し、「あの日を記憶して」「誰が罪人か」など原作ミュージカルの挿入歌のほかにも、朝鮮王朝最後の宮女にして独立軍情報員のソルヒ(女優キム・ゴウン)の歌う1曲が追加された。ユン・ジェギュン監督は「キム・ゴウンの歌の実力は歌手ソ・チャンヒに匹敵する」と語った。チョン・ソンファは「未来を変えてくれる英雄を待ちながら、肝心の、今の私たちをあらしめている英雄のことは忘れて生きている」とし「見れば胸が熱くなる映画」と語った。

■ミュージカルもバレエも「安重根ブーム」

 ミュージカル『英雄』は、麻谷に移転したLGアート・センター・ソウルで12月21日に開幕する。映画『英雄』とミュージカル『英雄』が同じ日に観客と対面し、同伴ヒットするという事件が起きるかもしれない。LGアート・センター・ソウルの関係者は、ミュージカル第1弾に『英雄』を選んだ理由について「安重根義挙100周年に当たる2009年にLGアート・センターで初演し、良い評価を得た創作ミュージカル」だとしつつ「老若男女さまざまな観客が見ることのできる作品でもある」と説明した。

 今年6月の大韓民国バレエ・フェスティバルの開幕作品は、Mバレエ団の『安重根、天国での踊り』(振り付け:ムン・ビョンナム)だった。「大韓独立の声が天国まで聞こえてきたら、私は喜んで踊りながら万歳を叫ぶだろう」という安重根の遺言から出発した物語バレエだ。イ・ドンフンが安重根、キム・ジヨンが金亜麗(キム・アリョ、安重根の妻)、キム・スンジョンが趙瑪利亜として踊った。

■今、なぜ安重根なのか?

 安重根は李舜臣(イ・スンシン)と共に、韓国国民全てが敬慕する英雄だ。金薫は「安重根義士がハルビンで叫んだ二つのこと、弱肉強食に承服できないということと東洋平和は、(最近の台湾と中国の対立を見れば)依然として有効な叫び」だと語った。映画評論家のユン・ソンウンは「日帝強占期や6・25を経験していない世代にとっては、新型コロナ問題や経済的不況、物価上昇が最大の危機」だとし「安重根義士は歴史の中で剥製になった英雄ではなく、こうした困難の際に呼び出されて韓国人にプライドと慰め、刺激を与える存在」との解釈を示した。

 10月26日は、安重根がハルビンで伊藤博文を暗殺した日。安重根義士崇慕会(金滉植〈キム・ファンシク〉理事長)は、安重根義士記念館で「ハルビン義挙113周年記念式」を開催する。遺体はまだまだ戻ってきていないが、国中が安重根の名を呼んでいる。映画やミュージカルで安重根が歌う「丈夫歌」には、こんな一節がある。「丈夫が世に生まれ/大きな志を抱いたのだから/死んでもその志を忘れるまい/天に向けて誓ってみる」

朴敦圭(パク・トンギュ)記者

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