▲アン・ブスアジア太平洋平和交流協会長

 共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が京畿道知事を務めていた2019年、アジア太平洋平和交流協会のアン・ブス会長が京畿道から対北朝鮮支援事業のための補助金15億ウォン(約1億5600億円)を受け取った後、うち7億6200万ウォンを横領していたことが7日までに分かった。アン会長は横領した資金を株式投資、風俗店での遊興費、個人の借金返済、生活費などに充てていたという。

 本紙の取材を総合すると、京畿道は2019年3月、北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会から児童向け給食用の小麦粉と微小粒子状物質低減用の苗木の支援を求められた。京畿道は1カ月後、平和交流協会を対北朝鮮支援事業者に選定し、小麦粉と苗木の購入費用として、15億ウォンを補助金を口座に入金した。

 地方自治体の補助金は口座振替やクレジットカード、デビットカードによる支出だけが認められている。使用額と用途を厳格に管理するためだ。しかし、アン会長は補助金を現金で引き出して使い、京畿道はそれを知りながら事実上黙認していた。

 当時京畿道で対北朝鮮事業を担当していた職員などは検察に対し、「対北朝鮮制裁の影響で、平和交流協会が対北朝鮮事業費を現金で引き出して使ったと理解していた」と証言したという。

 検察は資金が対北朝鮮制裁を回避する形で北朝鮮側に渡った可能性について調べている。李在明代表は当時、積極的に訪朝を目指しており、平和交流協会は京畿道の対北朝鮮事業パートナーとしての役割を果たした。

 アン会長は11月29日、北朝鮮の朝鮮アジア太平洋委に2回にわたり計47万ドル(約6400万円)を渡した容疑のほか、京畿道の対北朝鮮事業補助金のうち約7億6200万ウォン、サンバンウルなど企業から受け取った寄付金約4億8500万ウォンをそれぞれ横領したとして起訴された。

 国会に提出されたアン会長の起訴状によると、アン会長は18年12月26日、中国・瀋陽経由で平壌を訪れ、北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党統一戦線部長兼朝鮮アジア太平洋委員長に対北朝鮮事業あっせんの見返りなどの名目で7万ドルを渡した。さらにアン会長は19年1月24日、瀋陽にある北朝鮮レストランで14万5040ドルをショッピングバッグに、180万元(約3,500万円)をキャリアにそれぞれ入れ、平和交流協会幹部を通じ、朝鮮アジア太平洋委員会のソン・ミンチョル副室長に渡した。アン会長はキム・ソンテ元サンバンウル会長から小切手3億ウォンを受け取り、地下銀行を使い、北朝鮮側に渡す資金を用意したという。

 これに先立ち、アン会長は18年12月、キム・ソンテ元会長らと共に中国・丹東市で北朝鮮アジア太平洋委員会のキム・ソンヘ室長に会った。その席でキム・ソンヘ室長は「京畿道は北朝鮮の遅れた協同農場を『スマートファーム』に改良すると言ったが、まだ支援がない」として、サンバンウルに京畿道の代わりに費用50億ウォンの拠出を求めたという。検察はサンバンウルが北朝鮮にコネクションを持つアン会長を通じて対北朝鮮事業を進めたとみている。検察は起訴状でアン会長を「対北朝鮮事業ブローカー」と表現した。サンバンウルは19年5月、当時の李華泳(イ・ファヨン)京畿道平和副知事(起訴済み)、アン会長らの支援を受け、北朝鮮から鉱物開発など6分野の優先事業権が認められ、その代価を後日支払うことにしていたという。

 一方、キム・ソンテ元会長は5月末、検察がサンバンウル本社を捜索する直前に海外に出国し、7カ月間逃亡生活を続けている。

 本紙の取材を総合すると、サンバンウルの財経統括本部長として資金全般を管理していた「金庫番」A氏が韓国の法務部と検察の求めで最近タイ当局に逮捕されたという。A氏はキム元会長の義弟で、個人資金も管理していたという。

 検察はA氏を「重要な捜査対象」とみている。キム・ソンテ元会長の逃亡資金もA氏が準備した可能性があり、A氏はキム元会長の行方も知っている可能性がある。ただ、A氏は現地の裁判所に送還拒否訴訟を起こし、帰国を拒否しているため、実際に帰国して検察の取り調べを受けるまでにはかなりの時間がかかる可能性もある。

 法曹界からはキム・ソンテ元会長が最近、帰国に向けて韓国国内の法律事務所数カ所と接触しているとの話が聞かれる。しかし、法律事務所の大半が難色を示し、金元会長はまだ弁護人を見つけられずにいるという。サンバンウルの内部事情を知る関係者は「キム・ソンテ元会長が海外に逃亡し、持ち出した資金をほとんど使い果たしたと聞いた」とし、「元会長は事件の弁護を受任する法律事務所が見つかり次第帰国し、検察の捜査を受けるとみられる」と話した。

表泰俊(ピョ・テジュン)記者、イ・セヨン記者

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