▲ソウル市の高麗大学安岩キャンパスの新工学館4階に設置された「女性安心トイレ」

 今年1月、高麗大学に全国で初めてアプリで認証することで開けられる「女性安心トイレ」が登場し、話題となっている一方、論議も交わされている。

 このトイレのドアには取っ手や自動ドアの「開く」ボタンのようなものが一切ない。代わって利用者がスマートフォンに専用アプリをインストールした後、アプリとブルートゥース機能を「オン」にし、トイレのドアの横にあるセンサーに携帯電話をかざすことでドアが開くといった方式だ。アプリのインストール過程で、通信会社を通じた「本人確認」を経て、女性であることが認証されるようになっている。

 高麗大学工学部の建物の偶数階にある12カ所の女性トイレに、韓国土地住宅公社(LH)が2020年に開発した、公共トイレでの性犯罪予防などを目的としたシステムを適用したのだ。高麗大学が、モデルとなる事業場所を提供する代わりに、LHが約5000万ウォン(約520万円)を投資してセンサー端末機とドアを設置したという。事前に女性であることが認証されなければ、ドアを開けることもできない。

 しかし、学生たちの間では「女性を保護するのもいいが、やや行き過ぎ」といった不満の声も聞かれている。工学部修士課程のキムさん(30)は「トイレが急な場合でも、ブルートゥースを付けてドアが開くまでの時間を計算し、あらかじめ携帯電話を取り出さなければならないので不便」と話す。工学部で授業を受ける外国人の一部学生は、アプリを設置する過程で本人確認ができず、一般トイレのある他の階に行かなければならないケースもあったという。また、こうしたトイレがデジタル認証に不慣れな壮年層を排除してしまう恐れもあるとの指摘もある。6階担当清掃員のユさん(67)は「導入に対する学校側の公示もなく、QRトイレが設置された初日は、朝8時10分から30分まで清掃しなければならない時間だが、ドアを開けることもできず冷や汗が出た」という。

 アプリでオープンするトイレをはじめ、ここ数年は「性中立トイレ」「家族トイレ」など、さまざまな形態の実験的なトイレが相次いで登場している。殺人、暴行、不法撮影など、女性トイレで発生する犯罪が増え、少数者の人権をさらに保障しなければならないと主張する声が上がったのがきっかけだ。同時に論争も増えた。

 昨年3月、聖公会大学はソウルの九老キャンパスの新千年館に性別の区分をなくした「みんなのトイレ」を設置した。このトイレは、複数の仕切りを設けた一般的な構造ではなく、飛行機や列車内のトイレのように独立した空間で構成されており、障害者や非障害者、性的少数者、子ども連れの保護者などが利用できる。韓国道路公社も2021年10月を基準に全国のサービスエリア207カ所のうち166カ所に「家族愛トイレ」を設置した。女の子を育てる父親、体の不自由な老母と同行した息子などが便利に利用できるようにしようといった試みだ。しかし、性中立トイレは「異性と近い所でトイレを使用するのはさらに不安」といった指摘や、家族トイレは「従来の障害者専用トイレを家族用に改造することで、むしろ障害者が長時間待たなければならないなど不便を強いられている」と指摘する声が上がっている。

キム・ジウォン記者

ホーム TOP