100年前、ある詐欺師がフランスでエッフェル塔を売り払った。この詐欺師は、第1次大戦の余波でパリ市が財政難に陥り、エッフェル塔の修理費を出すのも大変な有様-というニュースを見てアイデアを思い付いた。政府高官を装い、金物商6人を最高級ホテルに呼んだ。「エッフェル塔をくず鉄として売ることにした」と語り、競売を秘密裏に進めるからと口止めをした。落札欲に目がくらんだ1人を集中的に攻略し、前金や賄賂を巻き上げて外国へ逃亡した。

 同じころ、大西洋を渡った米国では、チャールズ・ポンジという人物がこれまで世の中になかった詐欺の手口を開発した。彼は国際郵便に返信用として同封する切手に投資すれば国家間の切手の時価差額を利用して3カ月で100%の収益が出ると称し、投資家を募った。後発投資家のカネで先行投資家に収益金を支払う詐欺だった。「ポンジ・スキーム」は詐欺手法の古典になった。

 「詐欺師の殿堂」があったら、韓国の詐欺師も多数名を連ねることだろう。大同江の水を売ったという神話の中の人物、鳳伊・金先達(キム・ソンダル)から、医療機器リース事業に投資すれば高収益を保証するとだまして4兆ウォン(現在のレートで約4050億円。以下同じ)台の被害を生んだ曹喜八(チョ・ヒパル)、コイン詐欺でワールドクラス級の手配者になった「テラ」創業者の権渡衡(クォン・ドヒョン)など、挙げればきりがない。最近問題になった、住宅賃貸時に預託する高額の保証金(伝貰〈チョンセ〉)を返還しない「伝貰詐欺」の主犯、仁川の建築王も衝撃的だ。実に2800棟で詐欺を働いた。「韓国式ギャップ投資詐欺」という新ジャンルを開いた。

 世界の各国では、犯罪件数トップは「窃盗」だが、唯一韓国では「詐欺」が1位を占めている。しかも、毎年急増する勢いだ。詐欺犯罪の件数は、2011年の22万件から2020年には35万件と、10年間で60%も増えた。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では韓国が詐欺犯罪率1位で、14歳以上の国民100人に1人の割合で毎年誰かが詐欺に遭っているという統計もある。詐欺罪での告訴があまりに容易な状態が誇張されているとの説明もあるが、他人をだまし、うそをつくことを大したことだとは思わない文化に原因を求める人も多い。

 世界各国の価値観調査で、「ほとんどの人は信用できる」に同意する韓国人の割合は27%に過ぎなかった。スウェーデン(62%)の半分にもならず、日本(39%)とも大きな差があった。「犯罪の代価として10億ウォン(約1億円)もらえるなら、1年間刑務所に送られてもいいか」という質問に対し、韓国の高校性の55%が「それでも構わない」と回答した。政治家は堂々と国民をだまし、スポーツ選手は八百長までやる。入試ではスペック(学歴や取得資格など)のごまかしが横行する。17世紀の朝鮮王朝を体験したオランダ人ハメルは「朝鮮人は他人をだましても恥ずかしくなく、むしろうまいことをやったと考える」と記した。今は違うだろうか。

金洪秀(キム・ホンス)論説委員

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