▲ソウル市陽川区木洞にある大学進学塾には「キラー問題(超難問)、変形問題専門」という宣伝文句が掲げられていた。/20日、ニュース1

 韓国の大学修学能力試験(日本の大学入学共通テストに相当)の出題を担当した人物がその経歴をアピールし、模擬試験問題を作成し、全国の予備校に販売していることが20日までに明らかになった。問題の人物は数年前に放送にも出演し、大学修学能力試験の出題に参加した経験を詳細に語っていた。出題を担当する韓国教育課程評価院は、そうした事実を知りながらも何ら対応を取っていなかった。韓国政府は大学修学能力試験の元出題委員が進学塾と模擬試験問題を取引する「進学塾利権」の解明は避けられないとみている。

 本紙の取材を総合すると、「A研究所」の代表は8回にわたり大学修学能力試験の出題委員を務めた経歴をアピールして「模擬試験問題」を作成し、ソウル・江南の大手進学塾などに供給している。この人物はウェブサイトで「8回にわたり出題委員として加わった国内最高の大学修学能力試験専門家」を自称し、「国語領域の出題の過程全体と枝問構成の適切性、作品および素材の選択、問題難易度などについて、誰よりも正確かつ詳細に把握している」と主張している。A研究所は「試験を主管する韓国教育課程評価院の出題システムを完璧に再現」し、「最も本番に近い模擬試験」を開発して受験生に提供すると広告。ソウル大、延世大、高麗大出身の博士をはじめ、EBS(韓国教育放送公社)の教材や教科書の執筆陣、修学能力試験の出題委員ら60人の出題委員団が模擬試験を開発するとうたっている。問題の模擬試験はソウル・江南、釜山、大邱など全国の進学塾で実施されている。出題委員出身の教授が模擬試験業者を立ち上げ、他の出題委員出身の教授・教師が大挙参加していることを宣伝文句にしている。

 大学修学能力試験の出題を担当する韓国教育課程評価院は、毎年外部の出題委員、検討委員と交渉し、出題者グループを構成する。教授や現役教師などが加わる。委員らは約40日間合宿し、問題を出題する。しかし、一般に公表されるのは出題委員長と検討委員長だけだ。残る出題委員は出題に参加した事実を出題後に公表しないことを誓約する。それに違反すれば法的処罰を受けることもある点を告知されている。

 評価院関係者は「A研究所代表が出題委員の経歴を明らかにするのは誓約書違反だが、処罰規定を強化した2016年以前に出題に参加したため措置を取るのは困難だ」と説明した。

 出題委員が進学塾に転職することもある。現役教師が大学修学能力試験の出題委員や検討委員として参加した後、江南地区の進学塾の講師に転職しているのだ。一部の人物は出題に携わった事実を略歴に公然と書いており、過去にも問題になった。「出題経歴を明らかにしない」と誓約していながら、それに違反したのだ。職業選択の自由はあるが、教育界からは「出題経歴を商業的に利用している」という批判がこれまでも存在した。

 2016年には大学修学能力試験の模擬試験(本試験に先立つ難易度調整試験)の検討委員として加わった現役の高校教師が有名進学塾国語講師から金銭を受け取り、模擬試験問題を漏えいした事実が明らかになり、懲役刑を受けた。試験出題陣と有名塾講師の「問題取引」が明るみに出た事件だ。

 ソウル地域の私大教育学科教授は「進学塾業界が出題委員になった人物に目を付け、常にスカウトしようとしている。進学塾は元出題委員の教授を顧問として招き、その教授の教え子を進学塾に迎えるネットワークもある」と話した。

 塾が高校の教育課程だけでは解けないような「キラー問題(超難問)」による模擬試験を作成して商売していることも問題視されている。例えば、成績最上位の学生たちが集まる江南の進学塾は講師や大学院生などから「キラー問題」を数学1問当り75万-200万ウォン(約8万2000-22万円)で買い取っている。そうした模擬試験教材を受講生限定で受講料とは別に月最大100万ウォンで販売する。

 業界では大手進学塾が大学修学能力試験の出題陣を迎え、問題を開発させているとうわさされている。これに対し、ある大手進学塾は「事実無根だ」とし、「(模擬試験を開発する)研究所にも講師にも出題委員は使わない。研究所の人材は全員が塾講師であり、問題の大半は大学生が作成する」と話した。 別の進学塾も「一部講師には(他の進学塾のように)出題委員の経歴があるが、出題陣だから採用したのではなく、講義がうまいからだ」と説明した。

 専門家はこうした問題を解決するため、評価院がキラー問題を排除すると同時に、問題に関するさまざまな分析資料を公開すべきだと主張している。例えば、評価院は大学修学能力試験問題の「正答率」を公表していない。

崔銀京(チェ・ウンギョン)記者、ユン・サンジン記者

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