▲写真=UTOIMAGE

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がエンデミック(感染症の流行が地域で普段から繰り返される状況)に移りつつある中、英国に生息するコウモリからヒトに感染する可能性のある新たなコロナウイルスが発見された。直ちにパンデミック(世界的大流行)に広がる可能性は低いが、「『コロナの脅威』は依然として残っている」と懸念の声が上がっている。

 英国の名門大学インペリアル・カレッジ・ロンドン生命科学科のビンセント・サボライネン教授が率いる研究陣は28日、「英国に生息するコウモリからヒトに感染する可能性のあるコロナウイルスを新たに発見した」と発表した。今すぐヒトに感染する可能性は低いが、変異を経て感染症を起こしかねないだけに、引き続き観察が必要な状況だ。

 人類の歴史上、多くの人命被害が発生した感染症を調べると、ほとんどが動物から始まってヒトに感染した人獣共通感染症が多い。特に、農業を行い、食肉を得るために家畜を育てる中で麻疹(ましん)・結核・天然痘など命にかかわる感染症が流行した歴史があるほか、「人類史上最悪の感染症」と呼ばれるペストも都市部で生息していたネズミが原因とされている。これまでに発見された人獣共通感染症は250種に達する。

 人獣共通感染症は今後も増え続けるものとみられる。環境汚染で野生動物とヒトとの接触が増えることが最大の原因として指摘されている。特にCOVID-19の原因として指摘されているコウモリは、さまざまな種類のウイルスを持ったまま都会の建物に生息することもあるため、「感染症の貯水池」と呼ばれることもある。

 研究陣は英国に生息しているコウモリ17種のうち、16種から今後ヒトに感染する可能性が高いウイルスを発見した。コウモリのふんの標本48件を収集し、ウイルスの種類や遺伝的な特徴を調査した結果、9種のコロナウイルスが存在することが分かった。

 英国のコウモリが持つコロナウイルスの系統を調査した結果、2種はこれまで発見されていない新種であることが分かった。このうち1種は2015年に全世界で流行した中東呼吸器症候群(MERS)と関連しており、もう1種はCOVID-19を誘発したサルベコウイルスに属することが分かった。人類に致命的な感染症を起こしたウイルスの新たな「親せき」が発見されたのだ。

 研究陣は、これらのウイルスがヒトに感染する可能性があるかどうかを確認するため実験を行った。コロナウイルスがほかの動物の細胞に侵入する際に使うスパイクタンパク質を作って、ヒトの細胞に結合するのかを確認した。

 そうした実験の結果、サルベコウイルスのスパイクタンパク質は、ヒトの細胞の表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質に結合可能なことが分かった。これはヒトに感染する可能性があるという意味だ。ただし、研究陣は「結合の効率は低く、直ちに感染症を引き起こす確率はほとんどない」と分析している。

 サボライネン教授は「ACE2タンパク質が非常に多い状況でのみ結合するため、新たに発見されたウイルスがヒトに直ちに感染して病気を引き起こす可能性は高くない」「COVID-19のようにほかの動物を中間宿主とするならば、感染症流行が懸念される状況だ」と述べた。

 研究陣は「未知の感染症を予防するには、自然生態系の保存が重要だ」と主張する。野生動物の生息地を保存し、ウイルスを定期的に検査して、ヒトとの接触を最小限にとどめる必要があるということだ。

 英国のコウモリ保存慈善団体「Bat Conservation Trust(バット・コンサーベイション・トラスト)」のリサ・ウォーリッジ保存責任者は「野生動物保護は感染症予防だけでなく生態系の多様性を維持する上でも重要な役割を果たす」「今回の研究結果は自然保護活動家と科学者の協力が公衆保健に対してどんな寄与ができるかを示す良い例だ」と語った。

 研究結果は28日、国際学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で紹介された。

イ・ビョンチョル記者

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