▲今月20日に韓国で公開された動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」オリジナルシリーズ『THE DAYS(ザ・デイズ)』。原子力発電所の所長・吉田=役所広司、写真中央=を中心に、福島原発事故時、現場の職員らが事態の拡大を防ぐために繰り広げた死闘を描いている。写真=ネットフリックスより

 「『我々はこんなに頑張ったのだから、汚染水の海洋放出で文句を言うのはもうやめろ』という(日本の)グローバル・マーケティングに見える」「日本の『被害者コスプレ』だ」

 動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」オリジナルシリーズ『THE DAYS(ザ・デイズ)』が今月20日に韓国で公開されて以降、韓国では「美化論争」が巻き起こっている。全世界76カ国では先月1日にネットフリックスを通じて公開されているが、韓国での公開が遅れたことから、「金建希(キム・ゴンヒ)夫人(=尹錫悦〈ユン・ソンニョル〉大統領夫人)が汚染水の恐怖拡大を懸念してドラマ公開を阻んだ」というフェイクニュースが量産されたが、それとは正反対の現象だ。20日の公開直後、韓国国内の映画・ドラマレビュー関連サイトには「汚染水海洋放出に対する正当化を訴える新派(人情劇)」「放射能流出を防ぐために最善を尽くしたという具合に装っている」など、『THE DAYS』の美化を指摘する内容が多数寄せられている。「ドラマが公開されれば、福島の汚染水に対する恐怖が広がるので、(韓国)政府が阻んだ」というフェイクニュースが広まったが、現実には汚染水の恐怖が拡大するのではなく、逆に東京電力(劇中では東央電力)職員の英雄談ばかりがクローズアップされており、違和感があるという反応が出ている。

 このドラマは先月、韓国でレーティングを行う「韓国映像物等級委員会」が日本の映像物だけに厳しい「審議」手続きを要求し、公開が遅れていたのにもかかわらず、野党・共に民主党の徐瑛教(ソ・ヨンギョ)議員らが「政府外圧説」を取りざたしていた。先月9日の共に民主党拡大幹部会議で、徐瑛教議員は「76カ国のネットフリックスでトップ10に入った『THE DAYS』が何のことなのか、韓国のネットフリックスでは検索できない」「金建希夫人がネットフリックス関係者たちに会った日のことを思い出す。なぜ(韓国の)ネットフリックスでこのドラマが公開されないのかについて、我々はあらためて探ってみなければならない。権力はこのようにむやみに使うためにあるものではない」と言った。同党のアン・グィリョン常勤副報道官も「ネットフリックスの『THE DAYS』韓国非公開は非常に怪しい」と言った。

 外圧説そのものもフェイクニュースだったが、公開されたドラマの内容を見ても、共に民主党が主張する理由で韓国政府がこのドラマに圧力を加える理由はなさそうだ。ドラマを見た一部の人々が「美化」と感じるほど、当時現場で命がけで事態の収拾に当たった東電職員や自衛隊員たちの話がストーリーの中心だからだ。

 ドラマは2011年3月11日、最大震度7の地震が発生した直後、高さ最大15メートルの津波が福島原子力発電所を一瞬にしてのみ込んだその瞬間から始まる。『白い巨塔』『はだしのゲン』など重厚な社会的メッセージが込められたドラマを手がけてきた増本淳らが制作に参加し、今年のカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した日本の国民的俳優・役所広司が主演を務めた。制作陣は「当時の吉田昌郎・福島第一原発所長の証言記録『吉田調書』や、東京電力がまとめた『福島原子力事故調査報告書』、ジャーナリストの門田隆将が書いた『死の淵を見た男 -吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日-』を基に作った」と明らかにしている。

 ドラマは、原発が爆発する可能性のある最悪の状況で、事態拡大を防ぐため、まさに死闘を繰り広げた福島第一原子力発電所職員たちを淡々としながらもリアルに描いている。当時、停電や余震、津波の恐怖があった中、東京電力と協力企業の職員800人余りは「メルトダウン」を防ぐために原発内部のバルブを手動で開くなど、全力を尽くして事態を収拾した。そうした職員のほとんどが撤収した後も、「50人の決死隊(フクシマ50)」と呼ばれ、最後まで発電所内にいた作業員らは命がけで、さらに大きな爆発を防ぐために原発に残る。「うちの家族も福島に住んでいるから」と、退職を控えている原発技術者が再び現場に志願するなど、大筋は実際の事故時に米紙ニューヨーク・タイムズが「日本を大惨事から守っている英雄」と紹介した通りだ。

 だからといって、原発事故を全面的にかばっているわけではない。事実、事故初期に原発関連機関のトップに対して菅直人首相=当時=が「あなたは原子力の専門家なのか」と叫ぶと、そのトップが「いえ、私は東大の経済学部を出た」と答える場面や、民間企業である東京電力だけに事故原因の把握と収拾を任せたこと、五日たってやっと統合対策本部を発足させたこと、爆発映像がテレビで流れているのにもかかわらず「原子力は問題ない」と言った東京電力の「まずは隠ぺい」という姿勢や報告の遅さなど、原発事故の事態収拾における総体的な問題として提起された部分はありのままに描かれている。

ナム・ジョンミ記者

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