▲「第25回世界スカウトジャンボリー」のベルギー代表団が「インスタグラム」公式アカウントに投稿した写真。水たまりの上にプラスチック製パレットを敷いてテントを張っている。写真=ベルギー代表団のインスタグラムより

 猛暑・豪雨に備えた基本的な施設さえ不十分だったことが表面化したボーイスカウト・ガールスカウトの祭典「第25回世界スカウトジャンボリー」(全羅北道扶安郡セマングム)について、「主催者側は1000億ウォン(約108億円)を上回る予算を湯水のごとく使ったのではないか」という指摘の声が上がっている。韓国女性家族部や全羅北道など主催者側の世界スカウトジャンボリー総事業費は1171億ウォン余り(約127億円)だ。このうち、組織委員会の人件費といった運営費だけで740億ウォン(約80億円)を超える資金が投入されていたことが分かった。その一方で、トイレ・シャワーなどキャンプ場施設造成に投入したのは129億ウォン(約14億円)だった。与党・国民の力は6日、「ジャンボリー予算1000億ウォンの使途が疑われる」として、調査の必要性を提起した。

 韓国政府によると、2018年から2023年までのジャンボリー準備期間における予算は1171億1500万ウォン(約127億円)だという。国費302億ウォン(約33億円)、全羅北道などの地方費418億ウォン(約45億円)など、税金720億ウォン(約78億円)が投入された。残りはジャンボリーの収入400億ウォン(約3億円)や屋外広告収入49億ウォン(約5億円)などで充当した。さらに、追加で韓国政府・地方自治体の予備費と特別交付税231億ウォン(約25億円)も投じられた。これらを合わせると、総事業費は1402億1500万ウォン(約152億円)に達する。

 最も多く費用がかかったのは組織委運営費だった。740億ウォン(約80億円)が人件費などの運営費として支出された。ジャンボリー事務局組織委は、各種実務チームだけで30チームあり、総人員数は117人だ。さらに政府支援委員会(30人)、実務委員会(19人)、組織委員会(152人)、執行委員会(21人)などの上位機関と全羅北道などの地方政府組職まで合わせれば、肥大化した行政組職運営だけでも相当な額が投入されている。

 その一方で、ジャンボリーのイベントに欠かせない基盤施設造成235億ウォン(約26億円)、キャンプ場造成129億(約14億円)、直沼川活動場造成36億(約4億円)、大集会場造成30億ウォン(約3億円)など、現場インフラ構築に必要な施設費には組織委運営費740億ウォン(約80億円)をはるかに下回る金額しか投入されていない。

 2017年に世界スカウトジャンボリーの招致が確定した当初、総事業費は491億ウォン(約53億円)だったが、2020年12月時点の事業費は846億ウォン(約92億円)と2倍近くに増えた。全羅北道は当時、ジャンボリー用地の上下水道施設や日陰になる場所といった基盤施設の拡充と、本イベントの予行演習となる「プレ・ジャンボリー」事業費の増額を理由に、予算がさらに必要だと主張した。

 しかし、予算増額理由だったプレ・ジャンボリー事業は2022年7月に中止された。新型コロナウイルス感染症の流行拡大を問題視したためだったが、実際には大雨によってジャンボリー用地が泥だらけになったことや、上下水道施設が整備されておらず、猛暑対策施設に不備がありキャンプが不可能だった点が同年の国政監査で指摘されていた。

 それから1年たった今年5月と7月にも、プレ・ジャンボリー中止の一因だった豪雨によるジャンボリー用地浸水が再度発生した。浸水問題などを解決するために予算を2倍近く増やしたが、同じ問題が2年連続で発生したのだ。それでも共同組織委員長である野党・共に民主党のキム・ユンドク議員は今年5月の国会本会議で、「浸水対策のために国費を投入しなければならない」と予算をさらに増やすべきだと主張した。

 主催者側が6年にわたり組織と予算の拡大ばかりを主張していた間、干拓地であるセマングムに設けられたキャンプ場の上下水道など基盤施設工事は後回しにされた。全羅北道は2021年にキャンプ場基盤施設工事業者を選定するとして緊急入札公告を出した。工事予想期間だけで2年なのに、ジャンボリー開催まであと1年9カ月という時点でも、基盤施設工事の70%を担当する業者が選定されていなかったのだ。

 女性家族部・全羅北道などの公務員たちがジャンボリー準備活動を理由に、まるで観光旅行のような出張をし、予算を無駄遣いしたとの批判もある。全羅北道庁関係者5人は2018年5月、「世界スカウトジャンボリー成功開催事例調査」を名目にスイスとイタリアに6泊8日間出張した。スイスのインターラーケンとルツェルン、イタリアのミラノとベネチアといった観光名所がコースに含まれていた。だが、スイスとイタリアは世界スカウトジャンボリーを開催した経験がない。同年12月には全羅北道の職員らが「オーストラリア・スカウト連盟を訪問する」と言ってオーストラリアに出張、2019年には女性家族部と全羅北道の職員らが「第24回世界スカウトジャンボリーを視察する」という名目で米国に行ってきた。

 それにもかかわらず、韓国国内の参加者数が予想より低調だったため、全羅北道議会は昨年道内の生徒や教職員に対し、1人当り参加費153万ウォン(約17万円)のうち103万ウォン(約11万円)を支援する条例を可決した。

 2015年に日本の山口県で開催された第23回世界スカウトジャンボリーの予算は380億ウォン(約41億円)という規模だった。韓国のように特別法制定や特別予算編成はなく、行事も中央政府ではなく山口県が実施した。成功のうちに終わったと評価されている1991年の第17回世界スカウトジャンボリー(韓国江原道高城郡)の予算も98億ウォン(約10億円)だった。

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