「公正性をじゅうりんするMBC放送の過度の党派性を見続けるのがつらかった。同じ側だからといって、何をしでかしてもそれを支持したり、知らぬふりをして目をつむってやったりすべきなのか」

 康俊晩(カン・ジュンマン)全北大学名誉教授は、7月18日に出版した著書『MBCの黒歴史』(人物と思想社刊)で「MBCはまるで自分たちが善と正義を独占しているかのように、民主党の味方をすることが放送民主化であるかのように行動している」と強く批判した。同書で康教授は、チョ・グク元法相問題でのいわゆる「ぱっと見100万」から、現政権発足後の昨年9月に起きた「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領ニューヨーク暴言問題」に至るまで、過度に偏向的なMBCの報道と動きを事細かに批判している。

■公正性をじゅうりんする公営放送

 康教授は、朴晟済(パク・サンジェ)前MBC社長が報道局長時代に「金於俊(キム・オジュン)のニュース工場」(2019年9月30日)に出演し、いわゆる「100万人という感じがする。ぱっと見たところこれはその程度」と言っていたことについて「かつて、どのテレビ局の報道局長が、他の放送会社の番組に出てあんな政治的発言をしたただろうか」とし「MBCが文在寅(ムン・ジェイン)政権を代弁する放送局の総本山であることをはっきりと示してくれたようなものだ」と記した。

 康教授は、前政権のチョ・グク元法相問題の際にMBCの立場が変わったと語った。ろうそくデモの群衆について「いわゆる『テッケムン(頭を割られても文在寅)』精神に忠実でない報道をするときは決まって『不買運動』の報復措置を加えた」とし「これは言論であることを自ら放棄し、文在寅のための御用宣伝道具としての役目にのみ忠実であれというのが要求だった」と指摘した康教授は、さらに「チョ・グク問題以後に上昇したMBCの信頼度は、盲目的好感度と見るべき」「そのメディアの報道が虚偽・歪曲(わいきょく)・捏造(ねつぞう)であることが明らかになっても絶対に落ちないだろう」と続けた。その結果、「検察・メディア癒着のスクープについても、チャンネルAのイ・ドンジェ記者が無罪判決を受けたにもかかわらず謝罪もせず、証拠もきちんと提示しなかった」と断じた。先の韓国大統領選挙を前に、MBCの報道番組「ストレート」を通して、オンラインメディア「ソウルの声」の記者が録音したいわゆる「金建希(キム・ゴンヒ)録取録」を公開したことについては「MBCがユーチューブのチャンネルの『下請け』に転落した」と評した。

■善悪二分法の中毒になったMBC

 康教授は今回の著書で、容認できない一線を越えたMBCの動きを批判し、また記録しようと、本を出したと明かした。MBCについては、ドイツの哲学者ニーチェの言葉を引用して「怪物と戦って怪物になってしまった」とも記した。

 前政権の後にMBCが見せた動きは、容認できない水準を超えた-というのが康教授の評価だ。康教授は「MBCは民主党政権を保護し、死守し、美化することで、民主党の政権再創出のため渾身(こんしん)の努力を尽くしているように見える」とし「既得権を守ろうとする『食い扶持の戦い』であることは明らかなのに、それでも彼らは自分たちが善と正義を独占しているかのように振る舞う」と記した。

 康教授は、言論労組などが政治的にデリケートな事案について「機械的中立」を拒否することも批判した。康教授は「MBCと言論労組は、自分たちの偏向性を『善と正義』だと駄々をこねている」とし「いくら党派性が強い人物であっても、単に特定政党の支持者であるという理由だけで、例えば大学入試で特別扱いされることを是認はしないだろう。放送の公正性も、そういう観点から見るべき」と指摘した。

 康教授は「進歩陣営が善悪二分法の中毒になり、反対派を悪だとして追い立てている」「これは麻薬中毒やアルコール中毒とも違いがないもの」だとした。さらに、エリック・ホッファーの言葉を引用し「抑圧されている人々がほとんど例外なく、自分たちの憎悪する抑圧者とどんなに似てきているかを見れば、驚愕(きょうがく)するほど」と記した。

 康教授は、今後「MBCが保守政権に対する反感と嫌悪に便乗して『政権と一騎打ちする公営放送』の道を歩むのであれば、それはまさにMBC自ら墓穴を掘る道」だとし「MBCに対する問題提起はMBC内部から出るべきであって、誰がMBCを愛している人間か、自問自答するべき」と記して文章を締めくくった。

シン・ドンフン記者

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