▲8月2日に全羅北道扶安郡の干拓地・セマングムで開幕したボーイスカウト・ガールスカウトの祭典「第25回世界スカウトジャンボリー」のスカウト隊員たち。相次ぐ猛暑で体調を崩して倒れ、横になって休んでいた。写真=キム・ヨングン記者

 ボーイスカウト・ガールスカウトの祭典「第25回世界スカウトジャンボリー」に参加したスカウト隊員たちが全羅北道扶安郡の干拓地・セマングムで汚いトイレの便器のふたを開けた瞬間、私たちが隠していた「パンドラの箱」が開いたかのように、ちぐはぐ・無能・無責任が津波のように押し寄せた。成功にも失敗にもハッキリとした理由がある。その理由を正確に診断してこそ改善の余地もあるというものだろう。一次的責任は組織委員会にある。組織委は限られた時間内で官民や有形・無形の資源を総動員し、成果を出すことになっている。だから、成功するかどうかは組織委員長のリーダーシップにかかっている。

 32年前の1991年に江原道高城郡で開催された「第17回世界スカウトジャンボリー(以下、高城ジャンボリー)」は30代後半で過去最年少の韓国ボーイスカウト連盟総裁になった金錫元(キム・ソクウォン)双竜グループ元会長が1985年に招致した。金錫元氏は江原道高城郡・雪岳山のキャンプ地を数え切れないほど回りながら準備状況を点検した。そして、運営スタッフたちにはジャンボリーの精神を教えた。共同組織委員長は江原道知事だった。地方自治制施行前なので、準備の6年間で官選の道知事が3人携わった。最高の専門家が主導し、政府は一貫して支援を続けた。高城ジャンボリーは物事の本質に忠実だったおかげで成功した。

 セマングム・ジャンボリーは目的も主体も違っていた。主導したのは全羅北道の政治家たちだ。このころ、民選自治体首長の間で、国際イベントを招致することにより韓国中央政府からインフラ予算を獲得する開発モデルが流行した。全羅南道は2012年の麗水国際博覧会(エキスポ)、江原道は3度目にして2018年の平昌冬季五輪を招致した。一足遅れでこの流行に乗ろうとした全羅北道は、1982年にアジア太平洋地域ジャンボリーの開催経験がある全羅北道茂朱郡を押しのけ、セマングム開発のため干潟に世界スカウトジャンボリーを招致した。時間が差し迫っていたため、韓国政府は土地の用途まで変更し、干拓資金を提供した。しかし、全羅北道の実行力は不十分だった。1年前にプレ・ジャンボリーも開催されなかった。ジャンボリーが終わって簡易施設が撤去されたが、広い用地は特に使い道もない。不動産開発詐欺、分譲詐欺も同然だ。

 セマングム・ジャンボリーのずさんな運営が明らかになると、李洛淵(イ・ナギョン)元首相は平昌冬季五輪の成功を文在寅(ムン・ジェイン)政権の成果であるかのように自慢した。だが、成功の理由は全く違う。政権交代から五輪まで時間があまりなく、前政権で任命した組織委員長を交代させられなかったおかげで成功したのだ。平昌冬季五輪は官民共に経験豊富で有能な官僚出身の李熙範(イ・ヒボム)元産業資源部長官が2016年から単独で組織委員長を務め、責任を持って準備した。一方、2020年に発足したセマングム・ジャンボリー組織委員会は、約1年単位で替わった女性家族部長官と、仕事をせずに空世辞ばかりの国会議員という2人が共同組織委員長だった。カカシ同然だ。その下に女性家族部局長出身の事務総長と地域利己主義から抜け出せない民選自治体首長(全羅北道知事)が執行委員長として準備に携わった。故・李健熙(イ・ゴンヒ)サムスングループ会長の言葉を借りれば、三流公務員と四流政治家の集合体だ。現政権は遅まきながら組織委員長を3人追加したが、問題が解決できるはずがない。当初の用地選定からもめていたセマングム・ジャンボリーは、組織委に「李熙範のリーダーシップ」も、恥ずかしい実態を弥縫(びほう)策で覆い隠す助っ人もなく、破たんに追い込まれた。

 大韓民国の基準や国際基準で見れば、よりハッキリする。最も多い4500人が参加した英国が最も早く撤収したのは、スカウト精神が足りなくて猛暑を避けようとしたためではない。 ジャンボリーの本場・英国は責任者たちが早々に到着して準備状況を徹底的に点検する。非衛生的なトイレやシャワー室不足などが再三指摘されたのにもかかわらず、組織委は改善意志も改善実行力も示さなかった。英国の撤収決定はセマングム組織委に下した破たん宣告だった。

 セマングム・ジャンボリーの給食を担当した大企業が見た状況も同様だった。高城ジャンボリーをはじめ国際イベントの経験も多く、一日200万食を供給できるような韓国を代表する企業だ。平昌冬季五輪はこれより規模が小さい企業でもうまく行った。スカウト隊員3万4000人に食材を、運営スタッフ9000人に食事を提供するには周到に準備しなければならないが、担当企業が直面したのは国際イベントとは名ばかりで、猛暑の湿地、それも虫がうごめく環境の下、組織委は村祭りの準備程度という無能さかつ安易さだった。隊員たち3万4000人がキャンプをしながら自ら調理して食事を作るための食材を会場全域の18基の冷蔵コンテナに早朝に配送しなければならないが、開幕直前まで電気がつかなかったため、キャンプ地の冷蔵コンテナは使用できなかった。このため、冷蔵トラックから直接配らなければならなかったが、組織委はフォークリフトなど最小限の重機も準備しておらず、配送員や社員たちは荷物を下ろすのに余計に苦労した。組織委は権限地域の業者から薫製の卵を供給してもらったが、「カビの生えた卵」が見つかり非難を浴びた。しかし、よく考えてみると、そうした劣悪かつデタラメな現場で集団食中毒のようなさらに深刻な事態が発生しなかったのは、衛生管理が徹底した大企業や協力業者の社員たちが苦労し、踏ん張ってくれたおかげだったのだろう。

 知らないわけではなかった。収拾のつかないことをやらかす無責任な政治家や、民間よりも無能でありながらパワハラを日常的に行い、上の人間の目を欺く公務員など、税金の寄生虫たちが奇怪なほど大きくなっていくのを防げなかった結果だ。今や世界中の知るところとなったのだから、どうか今回ばかりは与野党の間で「お前のせいだ」と言い合う政治攻防で問題の本質をごまかすことなく、皆が共に恥じ入りつつ、徹底して責任を糾明しなければならないだろう。「パンドラの箱」の中に最後の希望を見つけたいと思うならば。

姜京希(カン・ギョンヒ)論説委員

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