▲尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領、バイデン大統領、岸田文雄首相 /聯合ニュース

 米大統領の別荘キャンプ・デービッドでの首脳会議を通じて新たなステージが開かれた韓国、米国、日本の協力関係はそのメインの舞台がインド・太平洋地域だ。全世界の人口の65%がこの地域に住み、世界のGDP(国内総生産)の62%もこの地域が占める。今やインド太平洋地域は地球上で最も早く成長する地域となっている。世界貿易全体の30%が通過する南シナ海は韓国にとっても原油や天然ガス輸送の半分を占める重要な海上交通路でもある。韓国政府は「インド太平洋地域の安定と繁栄は開放型通商国家である大韓民国の国益にも直結する」と考えている。

 韓国政府は昨年12月にインド太平洋戦略を発表し、その中で「大韓民国が成就した民主主義と経済成長をさらに整え、より大きく飛躍するにはインド太平洋地域の平和と安定がその支えにならねばならない」とのビジョンを示した。韓国は2021年時点でGDPに占める海外貿易の割合は85%に達していた。韓国は経済成長における輸出貢献度が絶対的に重要な開放型通商国家のため、この地域で法治や航行の自由など普遍的価値に基づく国際秩序が引き続き維持されることが非常に重要となる。世界の15大経済大国のうち7カ国がインド太平洋地域にあり、さまざまな懸案に関与する主要国との協力を拡大すれば、韓国外交の空間を広げる効果も間違いなく期待できる。

 韓国経済におけるインド太平洋地域の重要性は数値が証明している。まず輸出額全体の約78%、輸入額全体の約67%をこの地域が占めている。韓国の20大貿易相手国のうち半分以上の14カ国がインド太平洋地域にあり、海外直接投資の66%もこの地域に集中している。とりわけ韓国は貿易のほとんどを海上交通路に依存しているが、その多くが「ホルムズ海峡→インド洋→マラッカ海峡→南シナ海」を経て韓半島にやって来る。南シナ海は韓国が輸入する原油の約64%、天然ガスの約46%が通過するまさに重要なルートだ。

 ところが最近の中国の覇権主義、米中対立などの影響でインド太平洋地域で緊張が高まる事態が相次いでいる。中国が南シナ海でフィリピンやベトナムなどと海上の領有権争いを続けていることがその典型的な事例だ。今年2月には南シナ海上空で米海軍哨戒機と中国軍戦闘機がわずか150メートルの距離で対峙(たいじ)する一触即発の事態も起こった。ある外交関係者は「この地域である特定の国(中国)がルールと秩序を守らず、自分勝手に行動した場合は不確実性が増大し、韓国の経済と安全保障に深刻な影響が及ぶだろう」と指摘する。

 隣国の日本は2007年に故・安倍晋三首相が「インド洋と太平洋の結合」という概念を提示するなど、この地域の戦略的重要性を早くから認識し、英国、フランス、ドイツなど欧州諸国も最近はそれぞれの戦略を発表しながら関与を拡大している。米国は「他のいかなる地域よりもインド太平洋地域で起こる出来事は今後の21世紀の世界の進む道を決めるだろう」(ブリンケン国務長官)と語るなど、この地域で考え方を同じくする国々と連携し、ルールと秩序を守ることに力を入れている。最近形となった韓米日協力もその過程において重要な役割を果たすと予想されている。英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は2021年9月に日本の横須賀米軍基地に寄港したが、これも当時は大きなニュースになった。

 韓国はインド太平洋地域の中心的国家でありながら、これまで中国との関係を考慮し台湾や南シナ海、東シナ海問題への言及は避けてきた。しかし最近中国海警がフィリピン海洋警察の艦艇に放水を行った際には現地の韓国大使館が異例にも懸念を表明するなど、積極的に自らの立場を伝え始めた。価値観に基づく外交とグローバル中枢国家を目指す尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足により「韓国の国力に見合った形で、重要な事案に対して言うべきことは言う」という外交方針が明確になりつつあるのだ。ある韓国政府高官は「最近は一部で民主主義が後退し、自由や人権などの普遍的価値が挑戦を受けている」「韓国はルールに基づく国際秩序を強化すると同時に、さまざまな国が協力し共存する地域の秩序を築き上げていきたい」と述べた。

 インド太平洋地域への進出は、これまで米国、中国、日本、ロシアのいわゆる4強に限られるとしてきた韓国外交の地平が大きく拡大するという意味合いも持つ。尹大統領が昨年5月にフィジーなど太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟18カ国をソウルに招き、これらの国々と初めて首脳会議を行ったことがその代表的な事例だ。太平洋の島国は全世界の面積の14%近くを管轄する広大な排他的経済水域(EEZ)を持ち、マグロ漁獲量の70%をこの地域が占めるなど漁業資源も豊富なことから、協力拡大による実益は決して小さくないと考えられる。韓国政府はオーストラリア、カナダ、インド、モンゴルなど他のインド太平洋諸国とも協力も拡大している。

金隠仲(キム・ウンジュン)記者

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