大庄洞開発の中心業者、金万培(キム・マンベ)氏がつくり上げた「尹錫悦(ユン・ソンニョル)コーヒー」のフェイクニュースに登場する当事者チョ・ウヒョン氏は「尹錫悦検事の取り調べを受けたこともなく、誰なのかも知らなかったと数回話したにもかかわらず、JTBCや京郷新聞は私の話を無視し、真逆に報道した」と検察に証言した。JTBCと京郷新聞の当時の報道内容は、釜山貯蓄銀行に対する捜査に関連し、被疑者のチョ・ウヒョン氏が「尹錫悦検事が私にコーヒーをいれてくれて、とてもよくしてくれた」と語ったとする内容だ。しかも別の大庄洞関連業者である南旭(ナム・ウク)氏がチョ氏の発言を伝聞した形での報道だった。南氏は「尹錫悦コーヒー」の話を2021年9月、金万培氏から聞いたと話した。金万培氏はフェイクニュースをつくり出すため、申鶴林(シン・ハクリム)元全国言論労働組合(言論労組)委員長に1億6500万ウォン(約1830万円)を渡し、申氏による虚偽インタビューを受け、南氏にも同じ話をしておいたことになる。南旭氏は同年12月、チョ・ウヒョン氏との対質尋問で金万培氏がうそをついた事実を知り、証言を覆した。ところが2カ月後にJTBCと京郷新聞は、当事者であるチョ・ウヒョン氏の言葉は無視し、既に撤回された南旭氏の証言を引用して報道したのだ。それを受け、民主党は「大庄洞は尹錫悦ゲート」だという荒唐無稽な主張を始めた。

 JTBCと京郷新聞は報道に先立ち、当事者であるチョ・ウヒョン氏をインタビューした。 チョ氏は「JTBC記者に30分以上尹錫悦検事の取り調べを受けたことはなく、尹検事が誰かも知らないと言った」とし、「当時大庄洞開発への融資は釜山貯蓄銀行に対する捜査対象でもなかったと話し、JTBC記者も分かったと言った」と証言した。その上で、チョ氏は「私が話した内容は全く報道されなかった」と主張した。問題の記者は「疑惑の当事者であるチョ氏よりは第三者である南旭氏の証言の方が信ぴょう性が高いと判断した」と釈明した。どうして直接発言した当事者よりもその話を伝え聞いたという人物に信ぴょう性があるのか。たとえそのような疑いがあったとしても、少なくとも当事者の言葉をありのまま報じなければならない。メディアにとって基本中の基本だ。JTBC記者の報道はメディア報道ではなく、当初から政治的意図を持って事実を歪曲(わいきょく)する意図があったと考えるしかない。実際にその記者は大統領選後、金万培氏がつくったフェイクニュースを最初に報じたニュース打破に転職したという。

 マスコミは真実だと信じるに足りる相当な理由があれば疑惑を提起することができる。しかし、それに先立ち最大限ファクトを収集し、確認する過程を経なければならない。報道には当事者の反論が欠かせない。しかし、事件の当事者が違うと言っているのに、完全に無視して報道するということはあり得ない。韓国社会にはこうした常識外れの行動が大統領選になると「マスコミ」という仮面を被って登場する。金大業(キム・デオプ)氏の大統領選挙詐欺事件の際のKBS、MBCがそうだった。KBS、MBCは今回の「金万培フェイクニュース」にも必ず登場し、それを広めるのに一役買った。

 当時の李在明(イ・ジェミョン)候補は金万培氏が申鶴林氏による虚偽インタビューに応じた直後の2021年10月から「尹錫悦コーヒー」を既成事実かのように主張した。大統領選の3日前、ニュース打破が録音ファイルを報道すると、わずか1時間で自分のフェイスブックにフェイクニュースを掲載した。インターネット上にも大量に拡散された。「いいね!」の数の操作まで行われた。大統領選をフェイクニュースで覆す勢力が成功する国には希望がない。問題のマスコミが謝罪したからといって終わることではない。尹錫悦候補が落選していたら、この大統領選詐欺の全貌は明らかにされなかっただろうし、マスコミ各社は謝罪もしなかっただろう。

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