▲写真=UTOIMAGE

 高速バスの座席の背もたれを最大限後ろに倒した若い女性客が、バス運転手はもちろん、年配の他のバス乗客とも、ぞんざいな言葉遣いやののしり言葉で言い争いをする動画がインターネット上で注目を浴びている。高速バスの関係者は「乗客が座席の背もたれをどこまで倒すことができるかを強制する規定は設けられていない」「お互いに配慮する乗客たちの大人な態度と、バス運転手の仲裁に頼らざるを得ないのが現状だ」と話す。

 動画共有サイト「ユーチューブ」のあるチャンネルに15日、「高速バス迷惑女」というタイトルで約3分間の動画が掲載された。この動画には、一般高速バスよりもゆったりとした座席で料金の高い「優等高速バス」と見られるバスの中が写っている。一番前の座席に座った女性客は、背もたれを最大限後ろに倒し、バスの天井が見られるほどほぼ横になって座っている。その真後ろの座席の男性客は、前席の椅子のせいでスペースが狭いためか、片脚を通路側に出して座っている。

 バス運転手は女性客に向かって、「後ろのお客さんが窮屈そうになさっている。横になれるリムジンバスではないので、少しだけ椅子を上げてほしい」と丁寧に話しかけた。しかし、女性客は「後ろの人が窮屈だからといって、私が窮屈な思いをするわけにはいかない」「これだけ下げられるということで(椅子が)作られているのに、何が問題なのか」とバス運転手の頼みを断った。

 バス運転手は「ですから、ご理解を求めている」「他の人に被害がかからない範囲で自由を享受するのが正しいのではないか」と説得を続けたが、女性客は「断るのも私の意思」「私はその言葉を絶対に聞き入れなければならないのか」と反論した。

 バスの運転手はあらためて、「『(後部座席の)お年寄りが窮屈そうになさっているから、完全に椅子を元に戻してほしい』と言っているのではなく、『少しだけ上げてほしい』ということ」「世の中、お互いさまではないか」と諭すように話しかけた。すると、女性客はようやく背もたれを少しだけ上げた。

 しかし、言い争いはここで終わりではなかった。隣の席でこの様子を見ていた高齢の女性客との言い争いが始まった。高齢の女性客が「ここはベッドなの? リビングルームなの?」と言うと、女性客は「そんなに窮屈なら、(自分の)車を運転して行けよ」「お前こそちゃんとしろよ」とぞんざいな言葉遣いで反発した。

 バスの運転手が間に入り、「お年寄りにそのような言葉を言ってはいけない」と言ったが、女性客は「先にぞんざいな言葉遣いで大声を出すから、私もぞんざいな言葉遣いで話している」と言い、ののしり言葉を発し続けた。とうとう、バス運転手は後ろに座っていた男性客を別の席に案内して、動画は終わった。

 座席バスの背もたれをめぐる論争は続いている。「背もたれを倒すのは乗客に与えられた一種の権利だ」と考える人もいるが、「後ろの人の窮屈さを考え、自制すべきだ」という人もいる。

 このような論争が続いているのは、バスの座席の背もたれに関する明確な規定がないためだ。「高速バス運送約款」では、車内禁煙など乗客がしてはならない行為は定められているが、バスの背もたれに関する規定は見当たらない。

 全国高速バス運送事業組合の関係者は16日、本紙の取材に「背もたれの調節角度はバス製造会社が決める」「高速バス会社はこれよりさらに行き過ぎた角度で椅子が倒れないよう、随時点検する役割だけを担っている」と説明、「そのため、乗客の間で背もたれによってもめたとしても、運転手が法的に制裁することはできない」「できるだけ仲裁(して、妥協点)を引き出すしかない」と言った。

 では、バス製造会社は座席間の距離と背もたれの角度をどのように決めているのだろうか。これは、自動車および自動車部品の性能と基準に関する規則に基づいている。ミニバン・貨物自動車・特殊自動車の場合、前席の背もたれの裏面と後部座席の背もたれの前面との距離が65センチメートル以上でなければならない。だが、このほかの背もたれの角度に関しては特に決められていない。

 つまり、背もたれの製作・使用に関する明確な規定が設けられていない現況において、もめ事を避ける最も賢明な方法は、お互いに窮屈な思いをさせないよう、相手を思いやる態度ということになりそうだ。動画を見た人々からは「今回の出来事がきっかけとなって、バス運転手が制裁を加えられる手段を作ってほしい」という意見も出ている。このユーチューブ動画には「バスの正常な運行を脅かす乗客に対しては、バス運転手の判断の下で強制的にバスから降ろすことができるようになってほしい」というコメントが多数寄せられている。

イ・ガヨン記者

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