「帝国の慰安婦」という著書が日本軍による慰安婦被害者の名誉を毀損したとして起訴された世宗大の朴裕河(パク・ユハ)名誉教授の事件で韓国大法院の判決が26日に言い渡される。2015年の起訴から8年越しの決着となる。大法院への上告から判決まで実に6年を要した。法曹界からは「学問の自由侵害が争点になる事件」「大法院が反日感情などを意識し、結果的に職務を遺棄した」との指摘が出ていた。

 今年1~6月、大法院は刑事裁判の判決を平均76.2日で下した。朴教授の判決の理由が遅れたことについて、大法院関係者は「特に見解はない」とした。

 事件は2014年6月、日本軍慰安婦被害者9人が朴教授を名誉毀損の疑いで検察に告訴したのが発端だった。慰安婦被害者らは告訴状で「朴教授は『帝国の慰安婦』で自分たちを売春婦や日本軍への協力者として描いた」と主張した。

 これに先立ち、朴教授は2013年8月、「帝国の慰安婦」の初版を出した。本書には「朝鮮人慰安婦と日本軍の関係は基本的に同志的関係だった」「日本軍による性暴力は1回限りの強姦、拉致性がある性的暴行、管理売春の3種類が存在した。 朝鮮人慰安婦の大部分は3番目のケースが中心だ」などという記述が登場する。ソウル東部地検は15年11月19日、朴教授を名誉毀損の罪で在宅起訴した。

 一審判決は1年2カ月後に下された。ソウル東部地裁は17年1月15日、朴教授に無罪を言い渡した。裁判所は「朴教授が本で開陳した見解に対しては、批判と反論が提起される可能性があり、慰安婦強制動員否定論者に悪用される恐れもあるが、これはあくまで価値判断の問題だ」とした。同地裁はまた「朴教授の見解に対する判断は、学問の場や社会の場で専門家と市民が(意見を)交換し相互検証する過程でなされるべきだ」とした。

 二審判決はそれから9カ月後に出たが、一転有罪となった。ソウル高裁は17年10月27日、朴教授に罰金1000万ウォン(約111万円)を言い渡した。ソウル高裁は「朴教授は慰安婦問題を長期間研究し、朝鮮人慰安婦の強制動員および日本軍による関与の事実を知りながら、虚偽事実を断定的に表現した」と判断した。朝鮮人慰安婦の強制動員と日本軍の関与を認めた国連や国際法律家協会など国際機関の研究報告書と「河野談話」を根拠に挙げた。

 一方でソウル高裁は「学問の自由は保護されなければならず、誤った考えや意見が裁判官の刑事処罰によって隠されることは望ましくない」としたが、それは量刑を罰金刑とした要素としてのみ判断した。当時朴教授は「慰安婦問題は20年以上続いた問題であり、依然として学界が研究中のテーマだ」とし、「一審とは異なり、二審は(私が)提出した膨大な資料に対する十分な検討がなかった」として、大法院に上告した。

 今回の事件は17年11月15日に大法院に上告され、同年12月14日に高永ハン(コ・ヨンハン)大法官(当時)に割り当てられた。18年8月、高氏が退任し、事件は盧貞姫(ノ・ジョンヒ)大法官に引き継がれた。6年にわたる係争中、裁判所の事件検索サイトでこの事件を検索すると、「法理・争点に関する総合的検討中」となっていたが、21年5月からは「争点に関する裁判所議論中」という表示に変わった。

 法曹界からは「この事件は大法院が相当期間悩むほどの事案かもしれないが、6年間も判決を言い渡さなかったことは前例のない裁判遅滞だ」とし、「大法院自らが判決の権威を貶めている事例」だとの声が上がった。

 朴教授は本紙の電話取材に対し、「私の本は韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などの団体が主張して固まった国民的常識に異議を提起した本であり、慰安婦問題を否定する本ではない」とし、「それがあたかも反逆罪でも犯したかのように名誉毀損の方向に流れたことを非常に遺憾を感じる」と述べた。

イ・スルビ記者

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