▲イラスト=パク・サンフン

 中国は今年、史上初めて自動車輸出世界首位に浮上するとと予想される。韓国自動車モビリティー産業協会(KAMA)の集計によると、1~8月の中国自動車輸出は約321万台で、前年1、3位だった日本(277万台)、ドイツ(207万台)を圧倒的に上回っている。2021年に韓国を抜き初めて3位となり、昨年ドイツを抜いて2位に浮上した中国は、今年不動の首位日本まで追い抜くことになる。

 うち108万台は中国で「新エネルギー車(NEV)」と呼ばれる電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車だ。中国が輸出するEVの約25%は米テスラの中国工場などの出荷分だが、残りは上海汽車や比亜迪(BYD)など中国企業が占める。主要国のEV市場では今年、内燃機関車より割高な価格、補助金削減、不便な充電インフラなどが障害となり、EV販売の伸びが鈍化している。一方、中国は国内でNEVの割合が約30%まで増え、急成長を示している。EVの中核部品である電池も今年の世界シェア1、2位が寧徳時代新能源科技(CATL)、BYDという中国企業だ。

 このように、中国のEVが内需市場だけでなく、破竹の勢いで世界市場に食い込むと、各国は対応に追われた。昨年8月の米インフレ抑制法(IRA)を皮切りに、自国のEV産業を保護するために補助金・関税などの貿易障壁を高める動きが見られる。EV市場に出現した自国優先主義傾向の核心には「反中」がある。

■フランス・イタリア・日本にも拡散

 欧米による中国製EVけん制は価格競争力を低下させることが中心だ。EVは通常、同じクラスの内燃機関車より20~40%割高だが、中国のEVは自国企業から安価で電池を調達し、内燃機関車並みの水準にまで価格を下げ、それを武器に世界市場を攻略している。

 このため、昨年8月に米国が導入したIRAのようなEV保護主義が世界に広がっている。IRAは政府補助金を受けるためにはEVを北米で生産しなければならず、電池など主要部品の現地生産比率も一定水準をクリアしなければならないことが骨子だ。フランスがそれに倣い、来年1月からEVの生産・流通時に発生する炭素排出量に応じて補助金に差を付けることにした。中国はもちろん、韓日など欧州以外の地域から輸入されるEVは、車体を輸送する際に炭素を多く排出するため、ほとんど補助金を受けられない見通しだ。イタリアもEVの生産・流通過程の炭素排出量に沿ったインセンティブを検討している。業界は中国のEVを狙い撃ちにした政策だと分析している。

 日本は国内での電池生産量に比例して、税額控除を受けられるようにする「戦略物資生産基盤税制」の導入を検討中だ。これは米国のIRAと類似した制度で、中国への依存度が過度に高い電池のサプライチェーンを再編する狙いがあるとされる。

 欧州連合(EU)は今年9月、中国から輸入するEVについて、中国政府が支給した補助金に違法性がないかどうか調査に着手した。調査結果に基づき、高い関税を課すことを検討している。ブラジルも関税カードを切る。現在EVの輸入関税を免除しているが、今後3年間で税率を最高35%まで引き上げる方針だ。

■電池用鉱物では「資源民族主義」

 自動車生産インフラはないが、EVの重要部品である電池に使用される鉱物を産出する国では、EV産業に便乗した「資源民族主義」が強まっている。リチウム埋蔵量世界10位のメキシコは9月末、中国企業に与えた採掘権を回収した。メキシコは昨年、リチウムの採掘や商業化を政府が独占できるようにする法律も制定した。リチウム埋蔵量世界1位のチリも4月にリチウム産業の国有化を発表。インドネシアは2019年からニッケルの輸出を全面中断している。マレーシアも9月、首相がレアアースの原料輸出を制限する政策を導入すると発表した。

■韓国は政策手段不足

 各国でEVに対する障壁が高まっているが、専門家は韓国にはこれといった政策手段がないと懸念している。韓国の自動車産業の規模は年間約730万台だが、約600万台が輸出や現地生産を通じて海外で販売される。欧米のように補助金や関税などで障壁を高めれば、海外市場で中国以外からも制裁や報復を受ける恐れがある。

 自動車業界関係者は「既に韓国のEV補助金制度が自動車技術力を評価に反映し、韓国車だけに有利だという中国・欧州の抗議がある」とし、「韓国車が海外で消費者に選ばれるほどの商品性を備えられるように企業の競争力を育てるしかない」と述べた。

鄭漢国(チョン・ハングク)記者

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