▲写真=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

 10月31日午後7時、東京・渋谷駅にある「忠犬ハチ公」像は高さ3メートルほどの白いテントで囲まれていた。普段は200-300人が友人や恋人を待つ待ち合わせ場所だ。しかし、ハロウィーン・デーだったこの日、ハチ公の銅像があるハチ公広場全体が白いテントで覆われ、中をのぞくこともできなかった。テントには「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」という横断幕が掲げられていた。現場に立っていた東京都渋谷区の職員は「ハロウィーンなので人々が最も多く集まるハチ公広場全体を閉鎖した」「安全のために今日は見ることができないが、明日来ればハチ公像の前で記念写真を撮ることができる」と言った。

 ここから30-40メートル歩く間に制服を着た日本の警察官10人余りに会った。4-5メートル間隔で配置された警察官は拡声器で「止まらずに歩き続けてください」と言った。少しでも止まって写真を撮ろうものなら、警察官がすぐに近づいてきて「ここで止まってはいけません」と注意した。

 渋谷は韓国の梨泰院のように、ハロウィーンの時期に国内外の人々が集まる有名スポットだ。渋谷区役所はかつて、「ハロウィーンを渋谷の誇りに」という看板や横断幕を駅周辺に掲げ、先頭に立ってハロウィーンのムードを盛り上げた。一日平均乗降客数が300万人に達する渋谷駅を中心に、若者たちが映画や漫画のキャラクターに扮(ふん)してスクランブル交差点で写真を撮った。だが、昨年の梨泰院雑踏事故を受けて、渋谷区役所は「ハロウィーン」よりも「安全」を選んだ。梨泰院のような事故が渋谷でも起こりかねないという危機感があったからだ。

 渋谷区の長谷部健区長は今年9月と10月に2回、記者会見を開き、「ハロウィーンの時に渋谷に来ないでほしい」と呼びかけた。同区長は「ハロウィーンが多くの人に愛される日であることをよく知っているので、区長として非常につらいが、安全を第一に考えた」「(渋谷に人々が集まれば)韓国・梨泰院と同様の雑踏事故が起きてもおかしくない」と言った。

 今回のハロウィーンの時期に渋谷駅周辺には警察官約300人と渋谷区職員約150人が配置された。これは昨年より約2倍の多さだ。渋谷区役所はさらに、ハロウィーン当日に電車を渋谷駅に止めないようにする案や携帯電話の通信遮断案まで検討したが、これらは過度な制限だとの懸念から撤回した。渋谷の商店主らはハロウィーンに営業時間を短縮し、「ハロウィーンに渋谷は無法地帯」という認識を払しょくしようと力を合わせた。渋谷スクランブル交差点に近いデパート「西武渋谷店」は同日、いつもより1時間繰り上げて午後7時に閉店した。同店の入口には「ハロウィーンの衣装を着て中に入らないでください」と掲示されていた。また、地上20階建ての複合商業ビル「渋谷パルコ」は「ハロウィーンの仮装をされている方の入店はお断りいたします」という案内文を貼り出した。

 この日、「バーガーキング渋谷店」は終日、臨時休業した。渋谷駅近くのコンビニエンスストア約40店は同日午後4時ごろ、陳列台からビールなどを撤去して酒類の販売を中止した。 渋谷区がハロウィーン期間に路上飲酒を禁止したことに積極的に協力したのだ。高さ230メートルと渋谷区で最も高いビル「渋谷スクランブルスクエア」は同日午後7時、普段よりも閑散としていた。同ビル13階の有名うどん店「つるとんたん」は2-3人しか並んでいなかった。店員のサトウさんは「いつもは20-40人並んでいるが、今日はお客さんがいない」と言った。同じ階にある台湾料理の人気店「鼎泰豊(ディンタイフォン)」は半分ほどが空席で、有名お好み焼き店「お好みたまちゃん」も客が6-7人に過ぎなかった。

 このように同日、渋谷を訪れる人々は目に見えて少なかった。渋谷駅に近いあるビルで警備員をしているムラノさんは「今年のハロウィーンに渋谷に来る人は新型コロナウイルス流行前の2019年や昨年のハロウィーン時の半分に過ぎないとみられる」と語った。渋谷の商店主たちは今回の措置で金銭的損害が出るものの、不満の声はほとんど聞こえてこないという。日本のニュース・メディア「フジニュースネットワーク(FNN)」はこの日、「今年のハロウィーンに渋谷を訪れた人は予想(6万人)よりはるかに少なく、目立った事故も発生しなかった」と伝えた。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長、キム・ドンヒョン記者

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