▲昨年開催された「K-POPカバーダンス・フェスティバル」で、グループでダンスを踊る参加者たち。韓国では10代の人口が減少し、40-60代よりもファンダムの勢いが弱まる一方、海外では10代のファンの割合が高まっている。/NEWS1

 「韓国の音楽配信サイトでは、人気のあるアイドルもイム・ヨンウンにはかなわない」。10月9日、イム・ヨンウンの新曲『Do or Die』がリリース直後に音楽配信サービス「MelOn(メロン)」のトップ100チャートで1位に輝くと、こうした声が聞かれた。米国ビルボードのチャート上位を席巻していたBTS(防弾少年団)のJUNG KOOK(ジョングク)を抑えての首位だった。イム・ヨンウンはトロット(韓国演歌)やバラード、ポップスなど多彩なジャンルの曲を歌う人気男性歌手だ。イム・ヨンウンは昨年、MelOnの「最愛(推し)の収録曲大典」投票でもBTSを41万票差で破って1位になった。

 その理由としては、音楽配信プラットフォームを利用する世代の「逆転現象」が挙げられる。今年6月に韓国文化観光研究院が分析した「モバイル音楽コンテンツ利用時間の変化」によると、50-59歳がモバイル機器で音楽配信サービスを利用する時間は月平均19億8000万分だった。これは、アイドルの主な消費層と考えられてきた13-18歳の利用時間10億5000万分の2倍に達する。2013年には13-18歳の利用時間は14億3000万分、50-59歳は3億3000万分だったが、ここ10年で逆転したのだ。MelOnによると、50代はイム・ヨンウンの音楽を最もよく聴く年齢層(38%)だ。

 また、60-69歳の月平均利用時間は9億8516万分、40-49歳は同27億6627万分だった。19-29歳(55億9363万分)と30-39歳(43億4700万分)の青年層に比べると利用時間は少ないが、動画で音楽を楽しむ10代の利用者のほとんどがYouTubeミュージックに流れる中、MelOnやGENIE MUSICなど韓国の音楽配信プラットフォームでは中高年や高齢者層の影響力が年々高まっている。

 このような逆転現象は、韓国の「少子高齢化」と大いに関係がある。ファンたちは音楽配信サイトでの順位を上げるために集中的に投票するが、その投票数にも各世代の人口数がダイレクトに影響を及ぼすからだ。ナム・ジン、ナ・フナ、チョー・ヨンピルの全盛時代に10代だった「OPAL世代(Old People with Active Lifeの略語で、消費力の高い50-60代)と、ソ・テジやH.O.Tを経てファンダム(熱狂的なファンの集団)文化を成熟させた「Xティーン(10代のときにX世代と呼ばれた1970年代生まれ)」世代の出生数は、現在のアイドルのファンダムを形成する10代の出生数に比べ、2倍近く多かった。

 CDの実物購入という点でも、中高年や高齢者層のファンは10代のファンに比べて購買力がはるかに高い。韓国コンテンツ振興院の「2022年音楽利用者の実態調査」によると、2019-21年の間にCDの実物を購入した人は、10代と60代が他の年齢層に比べて多かった。韓国の大手電子書店「YES24」がCD(フルアルバム)の購入年齢層の統計を取ったところ、40-50代の購入率(56%)が20-30代(約26%)を上回った。

 1970年代生まれのファンたち(Xティーン)は特に、歌謡界の「代理消費者」とされる。子どもがまだ学生で、OPAL世代よりも最新のファンダム文化になじんでいるXティーン世代は、子どもにはアイドルの公演チケットを、親にはイム・ヨンウンの公演チケットを代わりに購入してやるという役割を果たしているからだ。10代の小学生ファンが多いことで有名なガールズグループIVE(アイヴ)の最新1stミニアルバムのCD(実物)は、韓国の通販サイト「アラジン」で、40代女性(39.3%)に次いで40代男性(12.8%)が多く購入した。

 少子化現象は、韓国の音楽関連企業の海外進出をも後押ししている。韓国の10代ファンは減少の一途をたどっているため、その空白を海外のファンで埋めるというわけだ。韓国の童謡で初めて米ビルボードのHOT100チャート(32位)に入った『サメのかぞく』を手がけたPINK FONGも、たびたび「韓国の出生率(合計特殊出生率=1人の女性が生涯に産む子どもの推定数)が低下しているため、海外に進出するほかなかった」と話していた。

 一部の新人アイドルは、デビュー直後から海外ファンの人数と活動が韓国のファンを上回っている。今年7月に音楽専門チャンネル「Mnet」のオーディション番組『BOYS PLANET』を経てデビューしたボーイズグループZEROBASEONE(ゼロベースワン)は、ファン投票で海外ファンの投票率が韓国ファンの投票率よりも高かった。ある公演企画会社の関係者は「各種の規制や政治的な変化などの不安要素があるにもかかわらず、中国や中東地域が未来の有望市場として注目されているのは、若くて消費力のある世代の人口が多いからだ」と話した。

 歌謡界の練習生の人数や国籍にも影響は及んでいる。韓国の芸能プロダクション大手「SMエンターテインメント」が運営するK-POP専門養成学院は今年6月、第1期の練習生120人を選抜したが、韓国人が36人、外国人は84人だった。韓国の音楽チャート「サークルチャート」のキム・ジンウ首席研究委員は「韓国の高齢者層と青年層の人口グラフが逆転の曲線を描き、韓国で若い練習生を探すのが困難になっている。多国籍グループを売り出す企業が増え続けているのも、この状況と無関係ではない」と話した。

ユン・スジョン記者

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