▲プロ野球ロッテの諮問委員を務めるソウル大学のチャン・ウォンチョル教授。/キム・ヨンジュン記者

 韓国野球界にこれほどまでの「ブレーン」が果たして存在しただろうか。ソウル大学統計学科のチャン・ウォンチョル教授(54)が9月、プロ野球ロッテR&D(研究開発)諮問委員に委嘱された。今後1年間、ロッテの各種データの収集や活用について助言する役割を担う。チャン教授は、ソウル大学計算統計学科(現統計学科)を卒業し、米国で博士号を取得した後、ジョージア大学、デューク大学で教授生活を送り、2017年にソウル大学に赴任した。ビッグデータの統計分野で功績のある学者だ。そんなチャン教授がプロ野球球団の諮問委員になるとはまさに寝耳に水だった。

 10月12日、ソウル大学で出会ったチャン教授は「統計学が野球に定着したおかげで野球が多彩に変化し、選手たちも新しい機会をつかむことができるようになった」と強調する。チャン教授は自他共に認める「野球オタク」だ。釜山出身のチャン教授は「学生時代、野球雑誌『週刊野球』の熱狂的な愛読者だった。高校(東亜高)の近くに九徳球場(ロッテ旧球場)があって歓声を聞きながら下校した」とし「故郷のチーム(ロッテ)が私を訪ねてくれるなんて『成功したオタク』という言葉がぴったりだ」と笑みを浮かべる。2011年、同教授はKAIST(韓国科学技術院)のチョン・ジェスン教授の主導で始めた「ペク・インチョン・プロジェクト」に参加した。学界と野球界が集まってプロ野球元年のペク・インチョン以後、4割打者が出てこなくなってしまった理由について、ビッグデータを解析してみようという試みだった。同プロジェクトが2013年「韓国野球学会」につながり、創立メンバーであるチャン教授は2代目会長を務めた。当時、縁を得たパク・ヒョンウ現ロッテ副団長の提案で諮問委員に招かれた。チャン教授は「野球は数字の競技なので(統計学者としては)大歓迎以外の何物でもない」と話す。

 同教授は「現代野球は統計が支配していると思う。米国では、選手の選抜、スカウト、評価、起用など、全ての側面で「セイバー・マトリクス」と呼ばれる統計学的アプローチが主な手段として位置付けられている。米国の水準までとは言わないが、韓国野球も投球追跡システム「トラックマン」などを導入したことで、「データ野球」が根を下ろし始めている。

 チャン教授は「これまで1番にはとにかく足の速いバッター、4番はホームランバッターを置いたものだが、今ではチームごとにさまざまな打順の組み方が試されている。左打者には左投手、右打者には右投手が起用されていたのも、もはや正解とは言えない」と指摘する。米大リーグの強打者ジャスティン・ターナー(ボストン・レッドソックス)やJ・D・マルティネス(LAドジャース)のケースに触れ「どの角度でボールを打てば打球を遠くまで飛ばすことができるかをデータ解析した後、ミートの際の打球角度を一定に保つ練習を集中的に行い、『キャリア・ジャンプ』を成し遂げた選手たちだ」と笑ってみせた。

 ロッテには、選手別にパーソナライズされた評価指標を作りたいと提案した。例えば、先発投手の球数が100球を超えたからといって変えるのではなく、ある投手はボールの回転数が低下した時、ある投手は腕の角度が一定数値以下に落ちた時など、選手ごとに異なる基準を統計的に分析し、適用していかなければならないということだ。選手別のデータを活用し、「期待失点」を算出すれば可能だという説明だ。その一方で「現場との疎通がデータ分析に勝るとも劣らないくらい重要だ」と付け加えた。いくら立派な分析技法を開発し、データを提示したとしても、これを現場の言語に置き換えて伝達し、説得できなければ、何の役にも立たないということだ。チャン教授は「現場の指導者たちに難しい統計学用語を使わずに『こういうときはこうしろ』と直観的に説明できなければならない」とし「その助言に従うかどうかは、あくまで現場の判断に任せなければならない」と言う。

 同教授は有名な二つの野球映画『マネーボール(Moneyball)』と『人生の特等席(Trouble with Curve)』に触れ、次のように語った。「『マネーボール』は『データ野球』を代表する映画であり、『人生の特等席』は野球が数字だけで行うスポーツではないということを示す映画です。二つの映画が物語っている教訓の間で適切なバランスを見いだすことが、成功する野球チームをつくる道です」

キム・ヨンジュン記者

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