▲中国・杭州湾工場で電動スポーツタイプ多目的車(SUV)「ポールスター4」が生産されている。2025年下半期からはルノーコリア釜山工場でも生産が始まる。国内外で販売予定だ/ポールスター

 スウェーデンの電気自動車(EV)メーカー、ポールスターは2025年下半期から韓国・ルノーコリアの釜山工場で電動SUV「ポールスター4」を生産すると発表した。韓国国内向けに販売するほか、北米にも輸出する計画だ。ポールスターはボルボが49.5%を出資する筆頭株主だが、ボルボを中国・吉利汽車が2010年に買収したため、業界では韓国に中国車の生産拠点ができることになると指摘されている。

 中国車が韓国市場に急速に浸透している。過去には上海汽車が双竜自動車を買収したほか、一部の中国ブランドが直接韓国市場で中国車を発売したケースがあったが、それとは異なる方式だ。米中対立と世界的なサプライチェーン再編の中で北米への輸出の道が閉ざされた中国企業が「メイドインコリア」の看板を付けるため、委託生産方式で間接進出を目指すケースが出始めている。また、中国EV業界首位の比亜迪(BYD)のように、韓国国内の反中感情を考慮し、ブランドは隠したまま、重要技術だけを移転・販売する一種の「デブランディング(ブランド分離)戦略」で韓国市場を攻略する例もある。

■「メイドインコリア」の看板狙う

 ルノーコリアは国内販売不振で年産約30万台の釜山工場の稼働率が50%程度にとどまっている。このため、ポールスターが同工場に生産を委託するEVは、ルノーコリアにとって「恵みの雨」と言える。下請け業界や地域経済にもプラスになりそうだ。委託生産が実現できたのは、吉利汽車がルノーコリアの株式34%を保有する2位株主だったためだ。仕事が欲しいルノーコリアと中国以外に生産拠点が必要なポールスターの利害関係が一致した。

 ポールスターは「メイドインコリア」のEVで韓国市場だけでなく、対米輸出で価格競争力を高める一石二鳥の効果を見込む。中国車には対米輸出時に27.5%という高率の関税がかかるが、韓国製ならば米国との自由貿易協定(FTA)で関税を回避できるからだ。

 ルノーコリアはフランスのルノーグループ、吉利汽車と共に次世代ハイブリッド車も開発している。釜山工場で生産し、韓国国内でルノーコリアブランドで販売する一方、「韓国製」として輸出される予定だ。同モデルには吉利・ボルボがプラットフォームなど重要技術を提供した。

 EVの重要部品である電池分野も例外ではない。世界最大のコバルト採掘会社である中国の華友コバルトなど電池素材企業もポスコフューチャーエム、LG化学など韓国企業と組み、韓国国内に工場を建設している。同様に「韓国製」という看板が狙いではないかと分析されている。

■ブランドを隠すBYD

 中国EV業界首位のBYDは今月2日、KGモビリティー(旧双竜自動車)の次世代ハイブリッド車を共同開発し、慶尚南道昌原市にバッテリーパック工場を建設すると発表した。業界はBYDによる韓国EV市場進出ののろしとして受け止めた。このハイブリッド車はKGブランドで発売されるが、BYDの電池とハイブリッドシステムは重要部品であり、車体価格に占める割合も半分を超える。自動車業界ではEVを開発した経験がないKGモビリティが事実上BYDから重要部品を調達するとの見方が有力だ。

 BYDがKGと提携したのも中国ブランドを隠すのが得策だと判断したためとみられている。韓国の消費者の反中感情を考え、BYDが韓国に間接進出した方がよいと考えたとする見方だ。BYDは今年、韓国よりEVの人気が低いものの、反中感情がそれほど強くない日本に代理店を相次いで設け、EVを投入した。韓国では大企業のGSグローバルと提携し、バス・トラックなど消費者の感情をさほど考慮しなくて済む商用車市場に絞ったマーケティングに積極的に乗り出している。

 専門家は韓国企業が単に中国自動車産業の踏み台として利用されないためには、独自技術の確保が欠かせないと指摘する。韓国国内の自動車学科教授は「現代・起亜を除けば、EV時代に中国企業との競争するのは容易ではないという現実を認識すべきだ。中国車の生産基地にとどまらないためには、目先の販売だけを考えず、10年後のEVの先行技術開発に取り組まなければならない」と述べた。

鄭漢国(チョン・ハングク)記者

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