▲イラスト=UTOIMAGE

 パレスチナ武装勢力ハマスの奇襲攻撃で始まったイスラエル戦争が、1カ月以上も続いている。戦場は全世界に拡大した。各国でイスラエル支持、パレスチナ支持のデモが続き、世論は分裂した。とりわけドイツは、今回の戦争に対して一層敏感だ。ユダヤ人を虐殺したホロコーストという過去史があるからだ。いわゆる「政治エリート」らは、戦争の初期段階から、過去史を理由にイスラエルに対する絶対的支持を表明した。オラフ・ショルツ首相は開戦後、西側指導者としては真っ先にイスラエルを訪れた。「この地で二度と、反ユダヤ主義は駄目だ」(ロベルト・ハーベック副首相)という発言も続いた。より厳格な態度を取る地方政府もある。ハンブルクはパレスチナ支持のデモに持ち出せる国旗の数に制限を設けた。ベルリンは、学生たちが登校する際にアラブ伝統の頭巾「カフィーヤ」を着用したり、パレスチナ国旗を持ちあるいは国旗の色が入った服を着用したりすることを禁止できる権限を学校側に与えた。

 パレスチナ支持のデモで会った人々は、ドイツ政府の態度に対して不満と共に裏切られたとの思いを打ち明けた。10月、アラブ人が多数居住している「ノイケルン」地区で会ったドイツ人のジャメさん(38)は、パレスチナ国旗のステッカーを張った携帯電話ケースとバッグを持って広場を歩き回った。ジャメさんは「警察の監視がひどいので、大きな国旗を持ち出す代わりにこういう形であってでも意志を表現したかった」とし「私はハマスによるイスラエルの民間人攻撃は誤っていると思う。だからといって、ガザ地区で起きている民間人虐殺を正当化はできない」と語った。別のパレスチナ出身の男性は「私もドイツ市民だが、自分の怒りは理解されていない」と語った。

 過去史の反省についての、ドイツの態度は尊重に値する。しかし一方では、移民者が増え、同じ過去を共有しないドイツ人も多くなった。現在、ドイツの人口の28%ほどが移民出身だ。ドイツの日刊紙「ターゲスシュピーゲル」は「パレスチナ人、ベトナム人、トルコ人などドイツ移民者らがドイツの歴史に同じ態度を持つことを期待するのは非現実的」だとし「移民者らがなぜ、ドイツが600万人のユダヤ人を虐殺したことを反省せねばならないのか」と指摘した。

 今回の戦争に対してドイツがどのような立場を取るべきかは、次第に一層複雑な議論になりつつある。こうした悩みはドイツだけの問題ではないだろう。10月に韓国の行政安全部(省に相当)が発表したところによれば、韓国は来年初頭に外国人の割合が5%を超え、アジアでは初めて、経済協力開発機構(OECD)基準での「多人種・多文化国家」になる可能性が高い。移民や難民の時代において、国家のアイデンティティーはいつも正答を見いだし難い問題だ。私たちは今、加害者であると同時に被害者になるジレンマの時代を生きている。

チェ・アリ記者

ホーム TOP