台湾との協力を強化した欧州国リトアニアに対して全方位的に加えられていた中国の経済制裁が、2年ぶりに解かれた。人口280万人の小国が14億の大国との神経戦で全く押されない様子を見せつけ、中国のプライドに少なからぬ傷を負わせたという評価がなされている。

 ベルギーのブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)外相会議に出席したリトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相は11月27日(現地時間)の記者会見で、中国がリトアニアに加えていた貿易制裁を解除したと明かした。ランズベルギス外相は「中国とリトアニアは交流再開のための話し合いを進めている」とし「貿易が完全に回復してはいないが、世界貿易機関(WTO)などによる外交的手続きに基づき、リトアニアに対する経済的圧迫措置の大部分は解除された」と述べた。中国税関の統計によると、今年10月までにリトアニアの対中輸出は前年同期比53%増の1億1000万ドル(現在のレートで約162億円)を記録し、回復傾向にある。中国国営の環球時報が「ハエを捕まえるように罰しなければならない」(2021年11月)とののしるほどリトアニアを目の敵にしていたが、2年を経て気勢は完全にそがれた格好だ。

 両国の対立は2年前に湧き起った。中国と国交を結んでいるほとんどの国は、台湾との非公式交流のために大使館の役割を果たす代表部を置き、通常は「台湾(Taiwan)」ではなく、首都の「台北(Taipei)」の名を付けている。台湾は自国の一部であるという中国の主張に考慮して、国名は使わないのだ。ところが2021年11月、リトアニアが首都ビリニュスに「駐リトアニア台湾代表部」を設立し、中国は激しく反発した。欧州の国々の中で「台北」ではなく「台湾」という名で代表部設立を承認したのはリトアニアが初めてだからだ。

 中国は「『一つの中国』原則を無視する、とんでもない行為で、この先起こるあらゆる結果についての責任はリトアニアにある」として報復を開始した。駐リトアニア大使を本国に召還し、リトアニアの駐中公館を代表処へ格下げした。中国税関はリトアニアを税関の電算システムの輸入対象国リストから削除した。両国間の技術交流・協力も中断した。

 こうした中国の全方位的圧迫に、リトアニアは全く動じなかった。2021年12月に駐中大使館の職員全員を本国へ撤収させ、中国の制裁を「WTOの規則に違反する不当な脅迫」だとして欧州連合(EU)の共同対応を求めた。台湾との関係は、これ見よがしにむしろ強化した。1年後には、台湾に自国代表部を開いた。今年1月にはリトアニア議員代表団が台湾を訪問して蔡英文総統と会うなど、高官級交流を続けた。今年9月には台南に台湾・リトアニア超高速レーザー開発センターをオープンし、10月にはリトアニア立法部トップのビクトリア・チュミリーテニールセン議長が台湾立法院(国会に相当)で演説した。

 リトアニアに、中国発の打撃がないわけではなかった。ギターナス・ナウセーダ大統領は今年6月、本紙のインタビューで「対中輸出は実に80%も減少して大きな苦痛に直面したが、危機から脱した。特定国に過度に依存しないサプライチェーンの多角化は極めて重要だ」と語った。しかし中国は、米中競争の中で欧州との関係改善が急務となり、リトアニアと台湾の関係が深まるや、経済報復を撤回したものと分析されている。

 第2次世界大戦以来ソ連に併合されるなど、長年にわたって外部勢力の侵奪を経験してきたリトアニアは、ソ連時代の1990年3月に独立を宣言した。これは、ソ連崩壊の始まりを告げるバルト3国(ラトビア・エストニア・リトアニア)の対ソ抗争につながった。ソ連崩壊で主権を回復した後、NATOとEUに加盟した。ロシアのウクライナ侵攻後は積極的にロシア制裁とウクライナ支援に乗り出した。今年7月には韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も出席するNATO首脳会議がリトアニアで開かれた。

 ランズベルギス外相は、両国関係の雪解けのため中国に屈従はしなかった、と強調した。ランズベルギス外相は、リトアニアに設立された台湾代表部の名称は変わらないだろうと強調し「台湾代表部問題は中国と議論すべき部分ではない」とした。リトアニアは台湾との経済協力強化に伴う利益も享受している。ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」によると、最近2年間で台湾とリトアニアの貿易規模は50%増え、リトアニアのIT企業テルトニカ(Teltonika)は2027年までに台湾の技術を利用して半導体を生産する協約を台湾の研究所と結んだ。

北京=イ・ボルチャン特派員、キム・ナヨン記者

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