▲道端に座り込む酔客。/キム・ジホ記者

 12月15日午後11時30分、約1年前に「ハロウィーン雑踏事故」が起きたソウル・梨泰院の路地。「10・29記憶と安全の道」として整備されたこの路地の入り口に、長髪の20代男性が友人と肩を組み、ウイスキーの瓶を片手に持って飲んでいた。男性らは20分以上、梨泰院の街をぶらぶらし、大声で歌ったり行き交う人々に向かって叫んだりしていた。警察が出動してウイスキーの瓶を取り上げると、酔った男性らの迷惑行為は収まった。

 ハミルトンホテル裏の「世界グルメ文化通り」を含む梨泰院の路地はこの日、泥酔した酒飲みたちで「カオス」だった。どの路地でも、酒の瓶を手にした酔っぱらいたちが歩きながら酒を飲んでいた。道端には割れた酒の瓶が転がり、酔って寝転がっている人も多かった。梨泰院の派出所の関係者は「金曜日基準で比較すると、コロナ禍のときは50件未満だった夜間の通報が、今は100件を超えており、ほぼ2倍超に増えた」「酔っぱらい関連の通報がほとんど」と話した。

 ハロウィーン雑踏事故の原因の一つに挙げられたナイトクラブや飲み屋の騒音問題も相変わらずだった。「世界グルメ文化通り」は飲み屋とクラブが流す音楽が鳴り響き、そばを歩いている隣のグループの話し声すら聞こえないほどだった。準住居地域である梨泰院一帯は騒音規制区域だが、守られていなかった。昨年の事故ではこの騒々しい音楽のせいで、事故現場近くにいた人たちも状況の深刻さに気づくことができなかった。

 梨泰院の賑わいは雑踏事故前の80%ほどまで回復したといわれている。そんな中、梨泰院の路地自体が「酒盛りの場」に変貌し、その様子は以前よりひどくなった。グルメやショッピングなどで多様性を楽しめた梨泰院の路地が、クラブと飲み屋でほぼ埋め尽くされてしまったからだという。梨泰院の商売関係者は「この状態では『梨泰院の復活』はとても期待できない」として「大通り沿いの商業ビルはいまだに空き店舗が多い」と話した。

 15日の夜には梨泰院にも雨が降った。しかし、どの路地にも飲み過ぎて吐いている20-30代が大勢いた。まともに歩けないほど泥酔した20代の男性は、友人2人に脇を抱えられ、引きずられて移動していた。酔いつぶれた友人をおぶって飲み屋から出てくる男性もいた。酔って転倒し、膝を擦りむいて血を流している女性もいた。

 ある20代の男性は、飲み屋の前の道端で意識をなくしたまま10分以上寝転がっていた。降りしきる雨の中、全身ずぶ濡れになったこの男性は、出動した警察が体をゆすって起こしても、しばらくぼうっとしたままだった。梨泰院で13年以上、店を営んでいるカンさん(68)は「もともと梨泰院の世界グルメ文化通りはさまざまな異国の料理を楽しめる場所だったのに、コロナ後は飲み屋とクラブが立ち並ぶようになり、通りの名前が色あせてしまった」「店から流れてくる音楽で耳がつぶれそうだし、騒々しい雰囲気の中で人々が酒を持ってそこらじゅう歩き回り、人目も気にせずたばこを吸っている」と話した。

 あるコンビニの前には、ビールと焼酒(ソジュ、韓国式焼酎)の瓶を持って友人らと酒盛りをする外国人の姿があった。梨泰院駅1番出口の前では、8人の外国人がギターの路上ライブに合わせて体を揺らして踊っていた。グループのうち2人はビールと焼酒を飲んでいたが、飲み終えた瓶をそのまま路上に捨てて去っていった。梨泰院の飲み屋で働くイさん(28)は「路上で酒を飲んで、瓶をポイ捨てする人がものすごく多い」として「割れた瓶でお客さんがけがをしないよう、一日に何回も店の前を掃除している」と話した。

 この日の夜、雑踏事故が起きた路地には、クラブの入店を待つ長い行列ができていた。50人以上並んでいるクラブもあった。路地を通る人たちは、行列を避けながら歩いていた。

 地下鉄の終電時間が過ぎると、梨泰院周辺はタクシーを探す人々で大混乱となった。タクシーがつかまらないため、通りのど真ん中に出てタクシーの前に立ちふさがる人もいた。反対車線に停車しているタクシーに乗ろうとして、横断歩道のない4車線道路を無理やり横断する人たちもいた。アプリで呼んだタクシーで酔った友人を帰宅させようとした男性は、タクシーの運転手と5分以上口論していた。運転手は「酔客を単独で乗せるのは困難」と言ったが、酔った相手には話が通じなかった。

 深夜の梨泰院は、酒の瓶やチラシ、たばこの吸い殻、吐しゃ物などが路上を覆い尽くしていた。ほとんどの人は帰ってしまったが、飲み屋のスピーカーからは大音響の音楽が流れ続けていた。梨泰院に住むソさん(28)は「出勤するとき、朝遅い時間でも音楽を流している店がある」「いったい公務員たちは何をしているんだろうか」と話した。雑踏事故が起きた梨泰院の路地は準住居地域で、日中は50デシベル以上、夜間は40デシベル以上の騒音を出してはならない。大通りの方でも日中は65デシベル、夜間は55デシベルを超えてはならないとされている。

 竜山区の関係者は「通りに集まる人々が出す音と、あちこちの店から出る騒音がこのように複合的に合わさった場合、騒音規制法で取り締まるのは事実上不可能」だとして「外部への拡声器設置を禁じるなどの法制度の裏付けがない状況では、パトロールをして事業者に対する啓発を行う程度にとどまっている」と話した。雑踏事故以降、騒音を理由に過料処分を受けた飲み屋は1軒もないと竜山区側は明らかにした。しかし事故の後も騒音を取り締まる公務員は以前と変わらず2人だ。週末だけ1人増員して3人で騒音を取り締まっているという。

コ・ユチャン記者

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