▲北京市内の新発地農産物卸売市場で売られているイチゴ。19日撮影。/イ・ユンジョン記者

 今月19日午前、中国・北京の豊台区にある新発地農産物卸売市場。果物エリアに入ると、北京最大の卸売市場らしく赤いビニール屋根のテントが何百軒も立ち並んでいた。商人たちはテントの中で果物を山のように積み上げて客を待っていたが、ぱっと見て量が最も多そうなのは、冬が旬のイチゴだった。価格はだいたい、手頃な品種が1斤(500グラム)10元(約202円)前後だったが、5斤入り1箱を30元(約607円)で販売しているテントもあった。つまり、2000ウォン(約220円)あれば1キロのイチゴが買えることになる。大粒かつ色も鮮やかでこの値段というのは、ただ同然のように感じられた。

 なぜイチゴがこんなに安いのかと尋ねると、商人たちは、今年は値段が大幅に下がったと口をそろえた。ある商人は「最高級の品種の一つ『丹東紅顔』は、昨年は1斤50元でも売れていた。今は通常は30元で販売しており、時折20元のものも出回る」と話した。また、別の商人は「最近になって入荷するイチゴは価格がやや上がったが、それでも昨年に比べれば依然として半値程度」だとして「価格が下がったので、たくさん売れるだろうと期待して大量に仕入れたが、売れなかったら大変だ」と話した。

 世界最大のイチゴ生産国で消費量も世界一の中国で、イチゴの価格が暴落している。イチゴが高値で売られ、イチゴを使った食品の価格まで高止まりしている韓国とは正反対だ。中国は消費の流れに合わせて毎年イチゴの生産量を増やしてきたが、今年は消費の鈍化にイチゴの豊作が重なり、供給過剰となっている。中国国内ではイチゴ産業の成長が頭打ちになったとの声まで出ており、イチゴ農家の懸念が深まっている。

 新発地農産物卸売市場における毎日の価格動向データによると、19日現在で「丹東紅顔」は1斤当たり最低7元、最高で13元、平均10元で販売されていた。これは昨年の同じ日に比べて平均価格基準で60%の値下がりだ。「寧玉」(11.5元)、「甜宝」(18.5元)もそれぞれ平均販売価格が前年比で20%、30%下がった。イチゴの価格下落は始まったばかりとの見方が支配的だ。湖北省武漢のイチゴ農場主は「大量に出荷する来年2-3月ごろに最安値を付けるのではないか」と話した。

 中国でイチゴの価格が急落した原因は、供給過剰だ。「中国のイチゴ産業の発展動向分析および投資展望」と題する報告書によると、中国のイチゴ生産量は2011年の201万トンから21年には368万トンへと10年で83%増加した。全世界の総生産量のうち3分の1以上に当たる規模だ。中国は国内でイチゴの消費量が増えると、これに合わせて栽培面積を拡大したが、今年は気候条件がイチゴの栽培に最適だったため、供給があふれた。業界では、今年の生産量は600万トンに達するとの見通しが出ている。今年の栽培面積が前年比で12%増加したことまで考慮した数値だ。

 この状況は韓国と正反対だ。韓国では最近、イチゴの価格が急騰し、イチゴを使ったドリンクやパン、ケーキなども一斉に値上がりしている。天候不順などの影響で作柄が芳しくなかった上、栽培農家の高齢化による労働力不足で出荷面積も減少し、供給量自体が減ったのが原因だ。韓国農水産食品流通公社(aT)によると、今月初めにソウル市内の可楽市場で行われたせりで、イチゴ2キロ(特級)は5万1612ウォンを記録した。前年同期(4万1934ウォン)に比べて23%上がったのだ。

 中国ではイチゴの価格下落によって農業関係者も経済的に大きな打撃を受けている。業界関係者は「多くのイチゴ農家で所得が減少し、中には損失が出ているケースもある」と話した。中国現地メディアが紹介したイチゴ農家は、昨年6666平方メートル規模でイチゴを栽培し、666平方メートル当たり1万元を稼いだ。そのため今年は栽培面積を1万3332平方メートルに拡大したところ、666平方メートル当たりの収入は逆に昨年の5分の1(2000元)まで少なくなったという。

 中国ではイチゴ産業の成長が頭打ちになったとの声も出ている。業界関係者は「技術革新と品種改善によってイチゴの大規模生産が促進されてきたが、収穫量を増やしすぎて需要と供給のアンバランスが発生した」として「巨大な生産能力を、市場が効果的に吸収できずにいる」と指摘した。

北京=イ・ユンジョン特派員

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