▲3日午後、一面焼け野原になった石川県輪島市「朝市通り」の様子。1日に発生したマグニチュード(M)7.6の能登半島地震とそれに伴う火災で、朝市通りの建物のほとんどが焼失した。写真=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

 3日午後2時、石川県輪島市河井町のビル倒壊現場。二日前に能登半島地震が発生した時、7階建てビルが基礎ごと横倒しになっていた。ビルが地盤から引き抜かれ、側面を下にして地面に倒れたような形だった。誰かが風に当たりながらコーヒーを飲んだり、眺めを楽しんだりしていたと思われるバルコニー部分の手すりが地面に迫り、目の前にあった。マグニチュード(M)7.6の大地震が作り出した現実とは思えない光景の中で、命を救うため必死の救助作戦が進められていた。

 消防隊員3人が横倒しになったビルの下に入り、ドリルでがれきを切断する一方、その周囲では約40人が二次災害など万一の事態に備えていた。現場を見守っていた70代の住民が「ビルが倒れる時、『バタン』ではなく、横にゆっくり倒れた。居酒屋をしているお母さんと息子が下敷きになっている。昨日、娘は幸いにも救出されたが…」と教えてくれた。現場を行き来する消防士たちはマイクを突きつける報道陣の質問に一様に沈黙し、自動車の鋭いクラクション音が静寂を破るのみだった。

 静かで平和だった河井町の中心街は、今回の地震により、まるで空襲を受けた戦場のようになってしまった。家屋の半分は倒壊して形を把握するのさえ難しく、がれきが重なり合い、路地のあちこちに山のようになっていた。現在まで確認されている死亡者数は73人。このうち半数以上の39人が河井町のある輪島市の死亡者だ。倒壊した建物の中に人が閉じ込められているという通報が相次ぎ、あちこちで救助作業が進められているが、生存者が救出されたという朗報はあまりない。

 救助作業が行われている間、ビルの向こう側から「ビー」という自動車のクラクション音が絶えず鳴り続けていた。地震で倒壊したビルが駐車中の自動車に覆いかぶさり、ハンドルが押されてクラクションが鳴っているようだ。近くを通りかかった住民は「まるで地震警報のようでゾッとする」と語った。その瞬間、周辺一帯が揺れた。余震が来たのだ。

 倒壊した7階建てビルから徒歩で約20分離れた「朝市通り」は爆撃を受けたかのような廃虚と化した。この場所が魚・乾物・農産品・服などを売って、早朝からにぎわっていた1000年の歴史を持つ市場であり、観光名所だったということを察するのは難しかった。1日の地震発生後に火事となり、住宅・商店など200棟が灰になった。木造家屋は完全に消え、コンクリートの建物は骨組みだけが残り、平地の上には炭の塊ばかりとなった焼け野原のようだった。フレームしか残っていないジープからは焼け焦げたにおいがした。火が消えて二日たったが、あちこちから白煙が上がっていた。2人の子どもを連れて通りかかったゴンイチさん(43)は「火災時、消防車の数はおろか、火を消す水も不足していた上、風も強くて、どうしようもなかったと聞いた。政府はまだ火災による死亡者数を発表していないが、ここの住民の相当数が死亡したと町の人々が話している」と言った。

 輪島市内の宿泊施設はすべて閉まっていた。客室数が220室と同市で最も大きなホテル「ホテルルートイン輪島」は入口の自動ドアに「手動開閉」と書いてあった。海岸に隣接した7階建てのホテルは地震のあった日の津波警報時に臨時避難施設になった場所だ。近隣住民がすぐに避難できる最も高い建物だったからだ。ホテルのスタッフは「市内で宿泊施設を見つけることはできないだろう。当ホテルも地震で建物が傾いたため営業を中止した。いつ再開できるかは未定だ」と言って、代わりに48カ所ある避難所のリストを渡してくれた。このスタッフは「定員がいっぱいで、受け入れてくれる所があるかどうかは分からない」と語った。

 災害のたびに冷静沈着な対応をすることで有名な日本だが、全世界で横行している交流サイト(SNS)を通じたフェイクニュースを避けることはできなかった。NHKは3日、地震発生後、「人工地震」に関するSNS投稿が計25万件(否定する内容を含む)あり、多いものは850万回閲覧されたと報道した。今回の地震が自然災害と関係のない人工地震だという陰謀論がSNSを中心に広がっている状況が確認されたものだ。

輪島市(石川県)=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

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