▲「台湾半導体の父」と呼ばれる聯華電子(UMC)の曹興誠元会長は11日午前、本紙のインタビューに応じた。/台北=李伐飡特派員

 世界の安全保障にとって大きな不確定要素となる台湾総統選が13日に行われる。米中による覇権争いの象徴となった台湾で、親米傾向の与党・民主進歩党(民進党)、親中傾向の最大野党・中国国民党(国民党)のどちらの候補が勝利するかにより、台湾海峡を挟んだ両岸情勢と世界のテクノロジー・貿易・軍事環境が変わるほか、韓半島周辺の安全保障環境も相当な影響を受けることになる。韓日など東アジア諸国だけでなく、世界が今回の選挙に注目している。

 今月2日までに公表された世論調査によると、政権維持を目指す台湾独立派の頼清徳候補(民進党・現副総統)は、中国の支持に受けて8年ぶりの政権交代を狙う侯友宜候補(国民党・台湾現新北市長)を誤差範囲内の3~5ポイント差でリードしている。世論調査の公表が禁止された選挙戦終盤に入り、民進党と国民党は互いに自分たちが「台湾の守護者」であると主張し、支持を呼び掛けている。大勢を固めたい民進党と終盤の逆転劇を狙う国民党、両陣営の代表的な人物に会い、主張を聞いた。この記事は「台湾半導体の父」と呼ばれる聯華電子(UMC)創業者で民進党を支持する曹興誠元会長(76)のインタビューだ。

 曹興誠元会長は11日、台北市内の台湾大校友会館で本紙のインタビューに応じ、「今回の選挙は民進党と共産党の対決だ」と述べた。UMCは台湾で台湾積体電路製造(TSMC)と並ぶ2大ファウンドリー(半導体受託生産業者)で、世界シェア3位だ。北京で生まれ、1歳の時に台湾に渡ってきた曹元会長は、一時「統一主義者」と呼ばれる親中人物だったが、会長退任(2006年)後の19年に起きた香港民主化運動をきっかけに「反中烈士」に転向した。22年5月には台湾の国防強化のために30億台湾元(約140億円)を寄付すると発表し、同年11月にはシンガポール国籍を放棄して台湾人に戻った。

 以下は一問一答。

-今回の台湾総統選の対決構図は?

 「政権与党の民進党と(国民党ではなく)中国共産党の対決だ。『戦争と平和』の構図ではなく、民主体制と中国の競争だ。中国はまだ台湾攻撃能力を備えていない。中国の習近平国家主席も(昨年11月に)サンフランシスコでバイデン米大統領に会い、「(外部が予想する)2027、35年の台湾侵攻計画はない」と述べた

-国民党の侯友宜候補が当選した場合、どんなことが起きるか。

 「台湾の武装を弱体化させようとするだろう。将来の台湾侵攻を容易にするための段階だ。今回の総統選は台湾の未来と西太平洋の安全・安定にも非常に大きな影響がある。中国は米国と西太平洋を巡り競争しており、台湾海峡を掌握し、第1列島線(沖縄~台湾~フィリピン~マラッカ海峡を結ぶ線で、米国のインド太平洋防衛ラインと一致)を崩そうとしている」

-台湾の半導体サプライチェーン(供給網)も中国が掌握することになるのか。

 「まだ先の話だ。 ただ、国民党が勝てば、漸進的に台湾の安全保障を侵食し、『香港化』を成し遂げるだろう。(半導体企業を含む)台湾のグローバル企業は通常、政府の干渉から自由で、米国に上場しているケースが多く、直接的な内部コントロールを受けない。しかし、台湾で中国発の安全保障リスクが高まれば、米国は結局、台湾の技術の中国への流出を懸念し、制裁を加えざるを得ない」

-選挙後、中国が軍事的圧力を加えてきた場合、どうすべきか。

 「経済面で中国とのデカップリング(分断)を揺るぎなく進めなければならない。中国は商(経済)の首根っこを締め、政(政治)を動かすからだ。我々はうまくやっている。米国・東南アジアとの貿易額は中国本土と香港を合わせた額を超えた。脱中国のペースが速いため、中国が焦りを募らせている。今回の総統選で民進党が政権を維持すれば、中国の陰険な戦略は大きな打撃を受ける」

-バイデン米大統領は台湾の選挙が終われば、直ちに非公式の代表団を送るというが。

 「米国は公言しないが、台湾を中国の領土とは見なしていないという意味だ」

-韓米日の協力がかなり強化されたが、台湾はそれに歩調を合わせようとしているのか。

 「韓国は一時、中国に最も投資する国の一つだったが、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)問題以後、大打撃を受けて変わり、日本も同様の経験をした。台湾は民間部門で日本と緊密な協力を成し遂げたが、韓国とも非常に近い関係を築いてほしい」

 曹元会長は巨額を寄付し、21年に台北大犯罪学研究所の沈伯洋教授らと民間軍事訓練機関「黒熊学院」を設立、後援している。中国の侵攻に備え、民間予備軍300万人の養成プロジェクトを推進している。

-曹元会長は黒熊学院以外にもさまざまな市民団体に巨額を支援しているが、他の企業経営者にもそれに参加してほしいか。

 「台湾の多くの実業家は市民運動を支援しているが、ロープロファイル(low-profile)戦略(注目されないようにする態度)を。中国に憎まれて被害を受けたくないからだ」

-馬英九前総統など国民党の政治家による台湾独立反対の立場をどう思うか。

 「国民党の熱狂的支持者の偽善を代弁していると思う。彼らは過去に台湾に来て反共を叫び、国民皆兵化と戒厳統治を続けた。ところが、中国共産党が大金を儲けると、反共を放棄し、大陸と友人になろうとしている。「独立反対」は手段であり、「反共」が目標でなければならないが、国民党は逆に中国に接近しながら、台湾独立に反対する立場を取っている」

-今回の選挙は4年前とは異なり、市民生活が悪化し、野党に投票するという人が多いが。

 「台湾人は物忘れが激しいからだ。(19年の民主化デモを経験した)香港の悲惨な状況を忘れ、中国もメディアを大挙動員して台湾の青年が香港問題に関心を持たないように認知戦を繰り広げている」

 今回のインタビュー中、国民党支持者とみられる中年女性が曹元会長の台湾独立主張に抗議する場面もあった。その女性は「あなたのような人間が独立を主張するから、戦争リスクが高まるのではないか。私は自分の子供が戦場に行く姿を見ていられない」と叫んだ。

台北=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員

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