▲北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は15日、「1月14日午後に朝鮮民主主義人民共和国ミサイル総局は、極超音速機動型操縦戦闘部を搭載した準中距離固体燃料弾道ミサイルの試射を行った」と報じた。/労働新聞・ニュース1

 北朝鮮は14日に、新型固体燃料ロケットを用いた極超音速準中距離弾道ミサイル(IRBM)の試射に成功したという。北朝鮮側が15日に主張した。音速の5倍以上のスピードで変則機動まで可能な極超音速ミサイルは、北朝鮮の主張が正しければ、北東アジアの安全保障を揺るがす「ゲームチェンジャー」になりかねない。北朝鮮はこの日、南北関係を「最も敵対的な2国家」とし「ちっぽけな火花一つでも巨大な物理的衝突の起爆剤として作用し得る」と主張した。相次ぐ軍事挑発と対南関係断絶で脅威の水位を高めるとともに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)が言及した「大事変」は虚勢ではないというメッセージを相次いで投げかけているのだ。

 二つの戦争(ウクライナ、パレスチナ)に足を取られている米国、反中陣営が勝利した台湾総統選挙後に緊張が高まった両岸関係、中東初のグローバル・サプライ・チェーンの混乱など、揺れ動く国際情勢の中に新たなチャンスを見つけ出そうとする金正恩の「ばくち」が本格化しつつあるとの分析だ。とりわけ、米国でドナルド・トランプ前大統領が選挙に勝利した場合に備え、南との断絶を通した米朝直接取引を狙っているものとみられる。

 北朝鮮によるIRBM挑発は、台湾総統選挙(13日)の直後に行われた。IRBMの射程は3000キロから5500キロで、平壌からおよそ1400キロ離れた沖縄、およそ3500キロ離れたグアムなどが攻撃圏に入る。現在の迎撃網では撃墜が難しく、米国の空母機動部隊も脅かされかねない。両岸の緊張の中で、米国としては神経を使うほかない。北朝鮮は、これを通して中国のさらなる支援を引き出すこともできる。北朝鮮の朝鮮中央通信は、これに関連して「(極超音速ミサイルの)試射は地域の情勢とは全く無関係に行われた」と伝えたが、これは逆に、最初から地域情勢を見据えていたことの傍証だ。

 崔善姫(チェ・ソンヒ)外相を団長とする北朝鮮政府代表団が14日にロシアを訪問したのも、同じ流れで解釈される。ロシアは、北朝鮮から武器を輸入する代価として最新の兵器技術などを伝授してやっており、北朝鮮がタイミングよく兵器開発の力量を誇示し続けているのだ。ロシアのクレムリンは、崔善姫外相がモスクワを訪問した15日、「ウラジーミル・プーチン大統領の訪朝が間もなく実現するだろう」と発表した。金正恩総書記は昨年9月にロシアを訪問し、プーチン大統領と首脳会談を行った。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は「北朝鮮とあらゆる次元の対話を続ける」と述べた。今月17日まで予定されている崔善姫外相のロシア訪問で、北朝鮮は労働者の海外送り出しを含む新たな支援パッケージを得る可能性が高い。中国に続きロシアが北朝鮮制裁の「抜け穴」役となり、北朝鮮制裁の無力化を加速しているのだ。

 金正恩は、南に向けては「敵対的交戦国関係」だとして「対南政策の根本的転換」を強調している。北朝鮮は韓国を明示的に「核攻撃」の対象に挙げ、戦争の脅しは虚勢ではないということを示そうとしている。トランプ前大統領が米国大統領選レースで先行しており、北朝鮮としては再度、シンガポール・ハノイで存在した談判を通して事実上の核保有国として認められ、北朝鮮制裁の解除を勝ち取ろうとする可能性が高い。トランプ前大統領は否定したが、米国の政治専門メディア「ポリティコ」は「北朝鮮の核廃棄ではなく核凍結の代価として北朝鮮制裁の緩和などを提供する対北アプローチ法を推進する」とも報じた。米国ミドルベリー国際研究所のロバート・カーリン研究員とジークフリート・ヘッカー教授は今月11日(現地時間)、北朝鮮専門メディア「38ノース」に寄稿した記事で「韓半島の状況は1950年6月前半以来、いつになく危険」だとし「金正恩が、1950年に祖父がそうしたように、戦争をしようという戦略的決定をしたと思う」と記した。戦争の脅しを通して核保有国認定などを狙う北朝鮮の戦術が、米国にもある程度食い込んでいるのだ。

 金甲植(キム・ガプシク)統一研究院先任研究委員は、報告書で「韓米日対朝中ロの構図の中で、北朝鮮制裁が無力化され、米国の影響力が衰退していると判断しているらしい」とし「今年4月の韓国総選挙、11月の米国大統領選挙など、大きな政治イベントを控えて韓半島問題の主導権を先占しようとしている」との見方を示した。

キム・ミンソ記者、趙儀俊(チョ・ウィジュン)記者

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