▲北朝鮮の金正恩総書記が、李炳哲(リ・ビョンチョル)党中央軍事委副委員長と共に「セッピョル9型」無人機を視察しているところ。/朝鮮中央テレビ・聯合ニュース

 北朝鮮は昨年から、ミサイル・魚雷・潜水艦など種類別に新兵器を相次いで登場させている。これらの兵器が、北朝鮮の主張する通り軍事的に完成段階にあるものなのかどうかは未知数だ。だが安全保障の専門家らは「体制維持のため金正恩(キム・ジョンウン)政権は総力を挙げて新兵器を開発しているだけに、『北朝鮮のブラフ』が混じっているとしても安心してはならない」と語る。

 朝鮮中央通信は15日、「北朝鮮ミサイル総局が進めていた極超音速機動型操縦戦闘部を搭載した準中距離固体燃料弾道ミサイルの試射は成功裏に行われた」と発表した。こうした北朝鮮の主張が事実であれば、韓米日のミサイル防衛(MD)システムは大きな挑戦に直面しかねない、という懸念が出ている。

 北朝鮮の主張通りであれば、極超音速弾道ミサイルは、先の3回の試射と比べて「より遠く、より速く、より隠密裏に」目標を打撃できる。固体燃料エンジンを導入すれば、液体燃料エンジンを搭載した従来のロケット1段目より射程が少なくとも数百キロ以上伸びるからだ。また、固体燃料を使用することで、発射前の燃料注入の手順を省略して奇襲攻撃が可能になる。北朝鮮は、このミサイルの最高速度を公式に明かすことはなかったが、マッハ10(音速の10倍)以上に到達したという観測も出ている。この場合、ソウルに対しては1分以内に打撃可能で、在日米軍基地はもちろん米国のグアム島の基地も平壌から攻撃できる。

 米国やロシアなど一部の軍事大国でのみ実戦配備に成功している極超音速ミサイルの発射を北朝鮮が試みる理由は、現行のMDでは極超音速ミサイルに対する完全な防御は難しいからだ。韓国軍関係者は「現在のTHAAD(高高度防衛ミサイル)は最高速度がマッハ8程度なので、回避機動をする極超音速ミサイルがマッハ10で飛ぶのであれば迎撃は容易でない」と語った。

 北朝鮮は昨年、核弾頭を10基まで搭載できる戦術核攻撃潜水艦「金君玉英雄」(9月)、水中戦略核兵器「海溢1号機」「海溢2号機」(3-4月)、戦術核弾頭「火山31」(3月)など、新兵器を相次いで公開した。朴元坤(パク・ウォンゴン)梨花女子大学北朝鮮学科教授は「北朝鮮が米国を相手に核の均衡を実現するのは難しい状況において、韓日などを攻撃できる兵器を開発し、『恐怖の均衡』を実現しようとしている」とし「韓日を人質にして米国と新たな形の均衡を整えたいというのが、北朝鮮の新型兵器体系の示す特徴」と指摘した。

 ただし、兵器の専門家らは、こうした新兵器が北朝鮮の宣伝ほどには効果的でない可能性の方に重きを置いている。ミサイルの専門家である張泳根(チャン・ヨングン)韓国航空大学教授は「極超音速ミサイルは、超高速も重要だが、標的に到達するまでずっとマッハ5以上を維持しなければならず、まだその水準には至っていないようだ」と語った。原子力潜水艦ではなくディーゼル潜水艦を改良した「金君玉英雄」について、ヤン・ウク峨山政策研究院研究委員は「原子力推進ではないから、水中で長期間待機して報復する『第2撃』任務を遂行するのは難しい」とした。最大で71時間潜航して釜山など後方基地を攻撃し、核爆発で「放射能の海溢(津波)」を起こすという海溢1号機・2号機もまた「北朝鮮が開発した核弾頭「火山31」の破壊力だけでは、港湾に甚大な打撃を与えるだけの爆発力は出ない」という分析もあった。

 だが、北朝鮮の兵器開発能力を軽視してはならないという声もある。先に北朝鮮は、核弾頭の小型化や大陸間弾道ミサイル技術の高度化を急速に達成した。イ・ジュング国防研究院先任研究委員は「ウクライナ戦争で北朝鮮とロシアが経済協力を強化し、北朝鮮の輸出額が1年で数十倍に増えたという研究もある」とし「北朝鮮の経済状況が好転すればするほど、交渉よりも新兵器開発を通した挑発の持続につながりかねない」と語った。ビクター・チャ戦略国際問題研究所(CSIS)韓国フェローも今月12日(現地時間)、ある討論会で「北朝鮮の備蓄弾薬が払底したら、北朝鮮とロシアが弾薬の共同生産に入ることもあり得る」と語った。北朝鮮・ロシアの密着が、北朝鮮の兵器開発の動力になりかねないのだ。

ヤン・ジホ記者

ホーム TOP