経済総合
韓国の共通テストから除外される「工学の言語」微積分Ⅱ…先端技術に不可欠(上)
韓国与党・国民の力の河泰慶(ハ・テギョン)議員は、2028学年度の修学能力試験(修能=大学入学共通テストに相当)より、「微積分Ⅱ」が選択科目から省かれることを巡り「先端科学技術の時代に数学の実力を引き下げかねない試験案」とする立場を表明した。河議員はソウル大学物理学科を卒業している。
河議員は12月29日、フェイスブックに「(修能)試験が容易になれば、それだけ勉強をしなくなり、実力は低下するほかない」と書き込んだ。大韓数学会も同日、「修能の改編案は明白な数学教育の弱体化案」とし「先進国の中で理工系大学の入試で微積分Ⅱと幾何を試験に盛り込まない国はほとんどない」と主張した。「微積分Ⅱの除外」は、実際は国家教育委員会(国教委)が決めたことだが、国教委で世論をくみ上げる国民参与委員会は「深化数学を盛り込もう」とする意見の方が多かったという。同委員会は、保護者や学生など500人で構成されている。理系の微積分Ⅱが修能試験から除外されるのは34年目にして初めてのことだ。
一方、市民団体「学校外教育に対する心配のいらない世の中」は「修能試験に深化数学が盛り込まれれば、小学校の時から微積分を学ぶようになるなど、学校外教育費が急増する恐れがある」と主張する。教育部(日本の省庁に当たる)のイ・ジュホ長官も12月28日、「微積分の除外論議」について「韓国の学校での修能試験のための数学は、創意的な授業からはほど遠い」とし「(微積分の除外は)むしろ数学を強化する案」と述べた。一体微積分とは何なのか、なぜこうした議論が巻き起こるのか。
微積分は全ての動きを分析する上で必要不可欠だ。人類は世の中の全ての動きを数学で表現しようとしたが、微積分の概念が完成されることで限界を突破した。それまでは、停止している物体の分析にとどまっていたのだ。韓瑞大学数学科のイ・グァンヨン教授は「微積分が発達する前の数学を『スチール写真』とすれば、発達した後の数学は『動画』」と説明する。微積分を利用しながら登場した代表的な事例がカーナビゲーションだ。時間による移動を分析するため、車の到着時間を予想することができる。KAIST(韓国科学技術院)数理科学科のキム・ジェギョン教授は「微積分は時間によって変化する全ての分野に適用できる」とし「リアルタイムに変動する株式の値段や、薬物がわれわれの体内に入って作用する現象などを、全て計算して予測できる」と話した。
微分は、時間とともに変化する動きを無限に細かく切断する方法だ。積分は逆に無限に切られたものを重ね合わせて積み上げることだ。例えば、速度を微分すれば時間に伴う変化である加速度となり、加速度を積分すれば速度になるというわけだ。コインの両面のような概念だ。
■微積分で動く全ての物体を分析
微積分は17世紀に入って、英国の物理学者アイザック・ニュートンとドイツの科学者ゴットフリート・ライプニッツにより体系化された。二人の科学者は各自別々に研究していたが、同時期に微積分の概念を導き出すこととなる。KAISTのキム・ジェギョン教授は「ニュートンは惑星が動く速度を観察したが、再び元の位置に戻るにはどれくらいの時間がかかるのかを予測するために微積分を考案した」という。ニュートン以前にも距離や時間、速度を計算する簡単な公式は存在していたものの、速度が変わらないときにだけ適用可能といった限界があった。
微積分の整理と発展により、現代科学と工学は急速な成長を遂げることになった。第2次世界大戦などで微積分は大砲の弾道を正確に予測するのに使われた。1960年代、人類を月に送ったアポロ宇宙船の軌跡も、微積分のおかげで正確に計算することができた。亜州大学数学科のチェ・スヨン教授は「マクロ的に変化する全ての物を式で表現するようになったことで、計算が精密化した」と評価する。
現在微積分は、機械、電気、化学工学など工学全般で基本的に適用されている。微積分が分からないと理工学部の授業には付いていけないという。特に工学部の多くの専攻科目は微積分と直結している。ソウル大学コンピューター工学部のチャン・ビョンタク教授は「工学部の科目では、微積分などの数学は言語と同じ」と言い切る。嘉泉大学電子工学部のチョ・ソンボ教授も「講義している電磁気学の3科目のうち2科目で使われている数式が全て微分方程式」と話す。