▲国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長が1月10日、同党が釜山で開いた「未来雇用現場懇談会」で青年政策を約束している/聯合ニュース

 韓国の386世代(1990年代に30代で、80年代の民主化運動に関わった60年代生まれの人たち)は20歳の時から誇大妄想で生きてきた。自ら身を投じれば「アメリカ帝国主義植民国家」を転覆できると信じていた。そんな歳月を経て就職してみると、世の中は広く、自分は愚かだった。

 得たものもあった。運動勢力の「学習」というのは、どんな形であれ体制を権力構造、国家を経済構造で分析することだった。90年代に水道水の代わりにミネラルウォーターを買い、ヨガをする「奇妙な人々」を見ながら、ウエルビーイング、個人主義、生態主義左派といったキーワードを引き出す「技術」が生まれるのだ。学生運動家出身が社会に出て金もうけや権力で成功する理由の一つだろう。

 数カ月前に若い政治家志望者らと会い、「386は死なない」というタイトルで講義した際の要旨だ。運動勢力にいたという経歴だけで数十年を搾取する人々を韓国社会は嫌悪する。その一方で社会は386世代を絶えず再雇用する。50~60代は若者より酒をさほど飲まず、朝も早起きだ。年を取れば食事もたくさん食べられない。コストパフォーマンスが良い。何より形勢を読み、突進して戦うことを知っている。高齢化時代なので、386世代は長生きするだろう。誰が386運動勢力清算論を提唱したのかと言えば、それも386世代だ。清算の機会は逃した。彼らと戦え、ぶつかれ。今がその時期だ。

 そう促しながらも申し訳ない気持ちになった。彼らはスペックを積むために社会科学のようなものを勉強する時間がなかった。気に入られないとスターになれない今の政界で青年が生き残るためには「素直なチアリーダー」になるしかない。

 今年4月に行われる韓国の総選挙に向けた候補公認を控え、国民の力と民主党はいずれも公認で青年を優遇するルールを適用する方針を表明しているか、近く明らかにする見通しだ。韓国は青年を法的に優遇する国だ。「児童基本法」「老人基本法」はないが「青年基本法」はある。19~34歳を対象にする法律で2020年初めに成立した。保守政党が提案後、後悔してぐずぐずしていたところを当時の与党が押し通した。青年に現金をばらまく根拠となった法律だ。乱暴に言えば、「青年を世話する年寄り」に票を入れてもらうためにつくった法律だ。

 ただ、青年にカネを与えても、権力は分け与えないのが韓国の政界だ。実際に青年政治が花開くことはあまり期待できない。青年政治も怪しいことでは一緒だからだ。李俊錫(イ・ジュンソク)元国民の力代表に政治の未来が見えるという人がいるが、記者の目にはそうは思えない。民主党の朴チヒョン(パク・チヒョン)氏の能力にも首をかしげたくなる。党の論評を出す青年政治家たちは、張りのある肌で古い話を並べ立てている。

 それでも青年が機会を得なければならない。若者の「出産ストライキ」に歯止めをかけ、人口減少を防ぐためにも、彼らを自立させなければならない。自立は「権限」から生まれる。

 「386既得権」清算を旗印に掲げた韓東勲非常対策委員長は人気が高い。まずは党内の青年から見極めてもらいたい。「良い政策を立てれば明るい未来がある」と信じる国民の力の補佐官や秘書官は少ない。保守政党は「人材スカウト」を通じ、法曹界、専門職、名門ファミリーの子弟を迎えてきた。国政監査の資料を作成し、議員の手足となって働き国会議員になった国民の力の青年議員を何人見てきたことか。国民の力の議員を補佐する数百人の青年たちの話をまず聞こう。

 民主党は「運動勢力の後輩」を優遇することが問題だが、国民の力は党内の青年を召使いのように働かせる一方、見栄えが良いだけの若い男女を担ぎ出してきた。韓東勲氏率いる非常対策委員会が誠実な党役員や補佐官2、3人でも抜てきしてさえくれれば、ムードは逆転するだろう。人生経験が短くても、 彼らの人生の努力と献身に割いた時間をきちんと評価することこそ「公正」だ。

パク・ウンジュ記者

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